T-PEC

人事・労務

運動と禁煙を軸にした健康施策と「職場ドック」による職場環境改善などでグループ社員の心身の健康増進を図る

人事・労務

NISSHA株式会社

企業名

NISSHA株式会社

URL

https://www.nissha.com/company/outline.html

業種

人事・労務

職場ドック・人事部の取り組み

人事部の職場ドックではまず、管理職ではない社員4名が推進役として任命され、管理職はサポートと判断に回るという役割分担を明確にした。そのうえで2つのチームに分かれ自分たちの職場の「良い点」と「改善すべき点」を話し合った。その結果、良い点として「ライフスタイルに合わせた勤務調整ができる」「職場の雰囲気が良く、話しかけやすい」といったことが挙げられた一方、「書類の整理」や、出力の待ち時間が長いといった「プリンターの使い勝手の悪さ」などが改善点として挙げられた。書類の整理については、課全員でゴミ捨てをする「ステステ日」を、2015年度に6回設定。個人の書類だけでなく、共有スペースにある書類も整理した。廃棄した書類等は合計3.3トンにも上り、キャビネット数も減らすことができた。その分、空いたスペースにプリンターを1台増設し、使い勝手の悪さも解消された。当時の担当者は、「良い点」を積極的に指摘することで前向きな姿勢をつくることができたという。また全員参加のメリットとして、各自が普段考えていることが共有化され、取り組みが「自分事」になるという点を挙げている。たとえば「プリンター出力の待ち時間が長いことは誰もがストレスに感じていたにもかかわらず、職場ドックに取り組むまではそれを伝える場がなかった」という。最後に担当者が示す、取り組む際に心がけたことを示すので、参考にしていただきたい。

髙村さん、植野さん、土谷さん
髙村さん、植野さん、土谷さん
髙村さん、植野さん、土谷さん
髙村さん、植野さん、土谷さん
定期健診受診率は実質
まず、社員数とその健康管理体制から教えてください。

髙村:

本社と、国内外の連結子会社の合計で約5、800人。そのうち国内は、本社の約800人を含めて2、400人ほどになります。保健センターが関係部署と連携をとって、この国内グループ会社社員の健康管理を担っています。保健スタッフは国内グループ全体で8人おり、うち3人が本社保健センターに、5人は京都府内の他の拠点と、4カ所の工場(兵庫県姫路市、滋賀県甲賀市、三重県津市、石川県加賀市)、東京支社に各1名ずつ常駐しています。産業医は、これらの拠点で計9人の医師に嘱託しています。

定期健診の受診率や有所見者率はどのくらいでしょうか。

植野:

産休中などどうしても受診できない社員を除けば、ほぼ全員が受けており、実質100%です。受診勧奨には苦労しますが、もともと「健診は必ず受けるもの」という組織風土があるため、受診する習慣が定着しています。
有所見者率は70%前後で推移しています。グループ会社社員全体の平均年齢は41歳で、徐々に上昇していることもあり、有所見者率を下げるのは、なかなか難しいのが現状です。
ちなみに精密検査対象者は全体の35%程度です。保険診療となる精密検査の受診は強制できませんが、対象者には委託医療機関とは別に、保健センターからも勧奨をしており、対象者全体の45%程度の方から「受診した」との報告を受けています。

特定保健指導の対象者数や実施率はいかがですか。

植野:

現在、特定保健指導の対象者は特定健診受診者の2割程度です。対象者には、保健指導を委託している医療機関からの勧奨に加え、私ども保健センターでも、指導を受けるよう促したり、保健指導利用期間中には、きちんと指導を受けているか、指導を受けて生活習慣改善ができているかなど様子を尋ねたりすることもあります。  実施率は初回面談で85%と、かなり高いですね。指導の結果、実際に体重や腹囲が減ったという社員は少ないかもしれませんが、多くの場合、行動変容につながり、保健指導のレベル改善は45%となっています。

運動と禁煙を軸に健康施策を推進
次に、各種健康施策について、教えてください。

植野:

健康施策については、以前はハイリスクアプローチがメインでしたが、ここ数年はポピュレーションアプローチに力を入れています。2017年度は「運動習慣の推進」をテーマとして、産業医による衛生講習会と健康運動指導士による健康講座を実施、2018年度は「骨密度測定・推定血管年齢測定・禁煙啓発イベント」を開催しています。
2019年度には、RIZAPによる運動セミナーと、京都メディカルクラブによるヨガティスプログラムを実施しました。それまでのイベントは保健スタッフを中心に企画運営してきましたが、健康経営を推進するという全社的な方針の中で予算がつき、外部に委託することができました。

RIZAPセミナーは、本社と加賀、甲賀の3拠点で実施し、参加者は計165人でした。ヨガティスプログラムは本社のみの開催でしたが、2日間にわたる体験型レッスンで44人が参加しました。さらにその後も有志が集まり、就業時間終了後に会社の講堂を借りて自主的に活動しています。そのほかの拠点でも、外部の運動療法士の方に講師を依頼し、チェアヨガ(椅子に座ったままできるヨガ)の講座を開催しました。

京都メディカルクラブによるヨガティスプログラム
京都メディカルクラブによるヨガティスプログラム

RIZAPによる運動セミナー
RIZAPによる運動セミナー
運動に力を入れているのですね。

植野:

肥満者率の低下が健康保持増進につながると言う考え方から、運動習慣の定着をめざしています。

ただ、2019年のグループ全体の肥満者率は、2015年から4ポイント増の24%となってしまいました。健康施策の成果が現れるのは時間がかかります。イベントアンケート結果などから、社員の健康管理意識が変わっている様子がうかがえるので、今後も粘り強く進めていきたいと考えています。

運動以外では禁煙にも力を入れています。スモーカーライザーを用いた健康イベントは2013年から開催していますし、昨年からは、通信制の禁煙プログラムも社員に案内しています。昨年は本社を含む5カ所の拠点でたばこの害を周知するセミナーも開催しました。

受動喫煙対策はいかがですか。

髙村:

本社構内には、まだ屋外喫煙所が2カ所残っていますが、屋内喫煙所は2018年に廃止しました。本社の喫煙率は、2015年に24%だったのが、2018年には21・8%に下がっています。工場でも、屋内喫煙所の閉鎖の取り組みが始まっています。

グループ内展開のため職場ドックを人事部でも実施
続いて、メンタルヘルス対策について教えてください。

土谷:

以前から臨床心理士による各種研修を実施したり、ストレスチェックも、法制化前の2012年に始めたりするなど一貫して力を入れています。
また2014年からは、「職場ドック」を実施しています。

通常の職場環境改善と職場ドックとの違いはどこにあるのでしょうか。

土谷:

職場環境改善は、主に管理職が主体となり、職場の「悪い点」に着目して一般社員に改善を促す取り組みです。
一方、職場ドックは職場の一般社員が働きやすい職場づくりめざし、まず職場の「よい点」に着目して行う参加型の取り組みです。低コストで、いますぐできる改善を優先し、それを積み重ねていくという点も特徴ですね。

実際にはどのように始められたのですか。

土谷:
まず、ラインケア研修で職場ドックの概要と必要性を管理職に紹介するとともに、一般社員に向けては職場ドックをわかりやすく解説したマンガを社内報に掲載することから始めました。
その後、本社構内の2部門と1工場でスタートさせ、同時にグループ全体への展開のため本社人事部でも実施(囲み記事参照)。それ以降も毎年度、実施部門を増やしているところです。2017年には社内事例を掲載した「メンタルヘルスハンドブック」を配付し、グループ内で好事例の水平展開を図っています。

植野:
メンタルヘルスに関しては、それまでもセルフケア、ラインケア研修を通じて、不調の早期発見・早期介入を行う二次予防、重症化を防ぐ三次予防についての知識を伝え、社員の皆さんにもだいぶ浸透したと思います。
後は、メンタルヘルス不調の発生を未然に防ぐ一次予防しかないと考え、職場ドックを導入したという経緯があります

土谷:
職場ドックによる改善事例としては、鉢植えを置き殺風景なオフィスを明るくしたなど、初期には「軽め」のものが多かったのですが、最近は仕事の本質的な部分の改善事例、言い換えれば、社員のストレス軽減に直接的に効果を及ぼす事例が増えてきた印象があり、徐々に成果が上がってきていると感じています。

<職場ドックの事例を紹介するハンドブック。グループ社員全体の啓発を狙う>

ストレスチェック集団分析結果は管理職の成績表ではない
職場環境改善には、ストレスチェックの集団分析も役立つと思うのですが、いかがでしょう。

植野:

ストレスチェックは開始以来、高ストレス者面談を中心に、セルフケア(ストレス対処)に活用してきました。

集団分析の結果を各職場に返すようになったのは2018年からです。その際は、管理職を集めた「職場フィードバック研修」を行い、結果の読み方を説明したり、管理職同士のグループワークで互いの結果について話し合ったりしてもらったうえで返却します。というのも、集団分析結果の読み方がすごく難しいからです。たとえば「上司の支援」に関する質問でも、その人が誰を上司と思っているかによって、回答はまったく変わります。

また、特定の人の回答が全体の結果に影響を及ぼすこともあります。産業医の先生からは、「集団分析で高負荷職場という結果が出ても、職場の一体感がある良い職場という場合もある」「集団分析の結果は、管理職の成績表ではない」「結果が独り歩きしないよう注意してほしい」というアドバイスをいただいています。

T-PECのサービスでは、「ハロー健康相談24」と「こころのサポートシステム」をグループ全体でご利用いただいていますが、感想をお聞かせください。

髙村:
社員からのさまざまな悩みは、人事や保健センターのスタッフも相談に乗りますが、がんに罹患したときや家族の介護問題などは、外部の窓口のほうが相談しやすいだろうという理由から、ハロー健康相談24を導入しました。

植野:
工場では夜勤者もいますから、24時間、私たちが対応できない時間でも相談を受けていただけるのは助かりますね。こころのサポートシステムで面談による相談ができる点も魅力です。

関係部署の連携強化により会社全体で取り組みを推進する
最後に、今後の抱負などをお聞かせください。

植野:
健康経営だけでなく、働き方改革、職場環境改善などの施策は、すべて社員の健康につながるものですが、当然、保健センター単体でできることではありません。関係部署が、これまで以上に緊密に連携し、健康施策立案や各種制度づくりを進めていきたいと考えています。たとえば、介護や育児に当たる社員の支援策などは、当社でも充実してきていますが、がんをはじめとする病気の治療と仕事の両立は、支援策がまったくないわけではありませんが、これからという段階です。こうした制度づくりに、保健スタッフの立場から積極的に関わっていきたいですね。

髙村:
産業保健の最終目的は、その取り組みが企業経営にいかにプラスになったかという結果を、企業価値や業績の向上など、目に見える形にしていくことが重要だと考えています。

ありがとうございました。

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