人事・労務
「社員が豊かになること・会社が成長し、成果を出し続けること」この最終目標を忘れず健康経営に取り組みたい
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企業名
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株式会社ジャックス
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URL
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https://www.jaccs.co.jp/
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業種
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人事・労務
人事部長 中川 学 さん インタビュー
この2月、ホワイト500(健康経営優良法人認定制度・大規模法人部門)に認定された株式会社ジャックス。同社では、「社員の健康保持・増進のための取り組みは、将来に向けた投資である」という健康経営そのものの考え方が、経営陣に綿々と継承され、それがごく自然な形でホワイト500認定へ結びついたという。そんな同社の中川人事部長に、近年の健康経営の取り組みを聞いた。
ASEAN諸国をメインに海外事業にも注力していく
まず、御社のこれまでの歩みなどについてお聞かせください。
クレジット事業、カード事業、ファイナンス事業、ペイメント事業を柱とする弊社ですが、発祥は1954年、函館で設立された「デパート信用販売株式会社」に遡ります。
その後、「信為萬事本(信を万事の本と為す)」という創業の精神の下、業容を拡大していき、76年には全国展開を完了、東証第二部に上場し、商号も現在の株式会社ジャックスとしました。78年には東証一部上場を果たしています。2000年代に入ると、08年、株式会社三菱東京UFJ銀行(現・三菱UFJ銀行)の持分法適用関連会社となり、三菱ニコスUFJ株式会社の個品割賦事業を承継しました。
近年は、ベトナム、インドネシア、フィリピン、カンボジアなどASEAN諸国をメインとした海外事業に注力しており、本年は、RAISE2020と銘打った中期3カ年経営計画をスタート。日本とASEANをメインフィールドとして、お客様に選ばれる先進的なコンシューマーファイナンスカンパニーをめざしているところです。
CSR活動はいかがですか。
「夢のある未来」「豊かな社会の実現に貢献する」という経営理念にも深くかかわることなので、特に力を入れています。
ESG※への取り組みとして、社会貢献活動、お客様と従業員に対する取り組み、環境保全活動を幅広く展開しているところです。
ジャックスでは、「当社が存続し活動していくために必要な社会とのかかわりにおいて、ステークホルダーの信頼に応え、満足度を向上させていく」という考えの下、多彩なCSR活動に取り組んでいます。
その主なものを紹介します。
お客様に対するCSRについて
個人情報保護のプライバシーマークや、システムセキュリティの国際規格を取得。社員に対する個人情報保護教育も実施しています。
環境保全について
改正省エネ法の特定事業者として、年1%以上を目標にエネルギー使用量の削減に取り組んでいます。
社会貢献について
社員利用のクレジットカードに付与されたポイントの一部と、その同額を会社が拠出し、寄付活動を行っています。2017年度は社員の投票や推薦等によって選出した12団体に総額570万円の寄付を行いました。
また、利用ポイントが日本盲導犬協会に寄付される「日本盲導犬協会カード」も発行し、寄付金はジャックスが負担し、カード利用者の金銭負担はないが、社会貢献意識が高まるカードとなっています。
そのほか、保育園、幼稚園に対する間伐材を利用した積木の寄贈なども行っています。
小児がんの子どもを応援するイベント「ゴールドリボンウォーキング2018」に参加した役職員とその家族。主催は寄付先の一つである認定NPO法人ゴールドリボン・ネットワーク社会貢献活動として、障がい福祉作業所の社内販売会も開催している。売上に貢献するとともに、障がいのある方たちの社会参加の場としても活用してもらう。
従業員に対するCSRについて
女性活躍推進法、次世代育成支援対策推進法の行動計画の策定・実行に取り組む。この1月には、厚生労働省(東京労働局)から、3度目となる「基準適合一般事業主認定(くるみん認定)」を取得しました。
ワーク・ライフ・バランスを達成するための複合プロモーション
御社では、この2月に「ホワイト500」の認定を受けられましたが、認定に当たっては、ジャックス ワーク・ライフ・バランス プロモーション(以下、JWP)、ジャックスグループライフケアポイント(以下、JLP)という2つの取り組みが評価されたと思います。まず、JWPからご説明願えませんか。
JWPとは、従来から取り組んできた「ノー残業デーの実施」「プレミアムウィークデーの実施」「有給休暇の取得」「長時間労働の抑制」に関して、目標値を設定するとともに、その実行をサポートするための取り組みを併せて行う複合プロモーションのことです。社員のワーク・ライフ・バランスの実現を目的に、働き方改革の一環として、昨年度から実施しているところです(資料1)。
ノー残業デー実施の目標は月3回以上。達成率は、2015年度83・8%でしたが、昨年度は98・6%にまで達しました。
プレミアムウィークデーとは、金曜日に限定せず、平日のいつでも都合がつく日に15時退社とする日で、ジャックス版プレミアムフライデーといえます。金曜に限定しなかったのは、弊社の業務の特性を考慮したためです。非常に好評で、月1日の実行という目標の達成率は99・8%。ほぼ全社員が実行できています。
退社後の過ごし方は、買い物や食事、休養、趣味といったところです(資料2)。女性社員からは、「空いている平日の昼間に、美容院やネイルサロンを予約できる」といった声も聞かれます。単身赴任者ならば、早い時間に帰省することで家族との時間を増やすことができます。
有給休暇取得の目標値は、年間付与日数の60%以上です。達成率は昨年度で73%まで上昇していますが、実はこれがもっともハードルが高い。というのは弊社の場合、土日に業務が発生する部署もあり、その振替休日の取得が優先されます。そこでさらに有給休暇を取得するとなると、部署全体での調整が欠かせません。どの部署もその調整に苦労しているというのが現状です。
長時間労働の抑制の目標値は、超過勤務時間月30時間以内です。昨年度の全社員の平均は15・7時間で、前年度比で12%、3年前に比べると22%削減されています。これは、繁閑期に合わせて各現場で、単月・3カ月・6カ月ごとに目標を設定して取り組んでいる成果だと思っています。
通常の仕事の中での取り組みがポイントになるJLPにはほぼ全社員が参加
次に、JLPについて教えてください。
JLPとは、健康診断、運動、禁煙などの健康プログラムへの参加でポイントがたまり、それを商品や商品券に交換できる仕組みのことです。JWPと同時に昨年度からの実施です。1ポイント=1円で、たとえば1日8000歩以上の歩数目標を達成すると、1日1回、5ポイントが付与されます。そのほか、身体測定判定で腹囲・BMIがA判定、禁煙達成者などにポイントが付与されます(資料3)。「健康に気をつけてください」「運動してください」とアナウンスするだけでは、健康づくりに能動的に取り組んでもらうことは難しい。そこでポイントというインセンティブを付けたわけです。
JLPの参加率はどのくらいになりますか?
当社の正社員数は、2826人(18年4月現在、うち男性1374人)にも上りますが、ほぼ100%です。
これだけ多くの社員が参加できている理由の一つとして、JWPとの連動が挙げられるでしょう。ノー残業デーや有給休暇取得の目標達成でもポイントが付きます。つまり、通常の仕事の中での取り組みが「ポイント」という形になるのです。
こうしたポイントは、人事のデータから自動的に付与されるため、個人で申請する必要はありません。
ポイントは、アマゾンやnanakoにも付け替えられ、(用意された商品だけでなく)自分の好きな物を買うこともできる。こうしたインセンティブが、能動的な健康づくりのきっかけになってくれればと期待しています。
ストレスチェックは法制化以前から実施
メンタル面の対策、たとえばストレスチェック制度の運用や結果の活用について教えてください。
ストレスチェックは、法制化以前の10年ほど前から、T-PECさんのご協力をいただきながら実施しています。受検率はほぼ100%です。現在、人事部内に専任のカウンセラー(社員)1名が常駐し、産業医と連携しながら、集団分析で高ストレスと判定された部署の管理職との面談など、フォローアップを行っています。
社員個人との面談は、どのような体制で受けておられるのですか。
個人面談は、カウンセラー(社員)がストレスチェックの結果を踏まえ必要に応じて行ったり、人事部が全国の拠点を訪問し各種支援をするなかで行ったりしています。
加えて、T-PECさんの「ハロー健康相談24」「こころのサポートシステム」も利用しています。さらにこの4月からは新たに、がん治療と就労の両立に関する相談も委託しています。
上司に直接、話をしたい社員もいれば、レポートライン外の人事に相談したい社員もいます。また社外の相談窓口に話をしたい社員もいるでしょう。それは相談内容によっても異なってくると思います。このような多様なニーズに応えられるよう、相談体制を整えているところです。
相談体制を整備することで、何かしらの効果は見えてきましたか。
メンタルヘルス不調を原因とする休職者数などアウトプットの数字は横ばい、というのが現状ですが、個人でも部署単位でも、以前よりメンタルヘルス不調が滞留しにくくなった、という感じはあります。
今後は、不調者が出やすい時期、たとえば新卒者の配属後や異動後、下半期の繁忙期などに、不調が心配される社員に対し、人事から能動的に予防的なアプローチをするよう検討しているところです。
経営陣に綿々と継承される健康経営の考え方
健康経営の実現には、トップのコミットメントや組織風土の醸成が重要といわれますが、その点、御社ではどうでしょうか。
もともと弊社の経営陣の中には、「社員が心身ともに健康で働ける職場環境の整備は、将来の成長につながる投資である」という、まさに健康経営そのものの考え方が綿々と継承されてきました。したがって「ホワイト500」の認定も、あえて取得しようとしたわけではなく、これまでの健康施策が自然な形で認定につながったという感じですね。
さらには労働組合、健保組合と連携することも重要です。JWP、JLPも、経営陣と労組、健保が三位一体となって取り組んだことが成功の要因だったと思います。定期健診の結果データも健保組合と人事が共有し、特定保健指導や再検査対象者には人事部名で勧奨しています。やはり健保単一での勧奨より、格段に効果が高いですからね。
定期健診の受診率はどのくらいですか。
ほぼ100%です。ただ、30歳以上の社員(組合員)と被扶養者を対象とした生活習慣病検診については、社員に比べ被扶養者の受診率が低いため、この受診率を少しでも上げたいですね。
また、近年のがん等の発症年齢の若年化に合わせ、生活習慣病検診のメニュー追加も考えています。
就業中の喫煙禁止を就業規則に明文化し、社内の喫煙所も全廃
社内禁煙も、徹底されていると聞きました。
以前は、社内通達で禁煙を呼びかけ、禁煙成功者には図書券などを贈呈していましたが、現在はJLPにて禁煙成功者に対してポイントを付与しています。そして就業中の喫煙禁止を就業規則に明文化し、本社と各拠点の喫煙室も全廃しました。
最後に、今後取り組みたいことについて教えてください。
JWP、JLPをブラッシュアップしていきたいですね。たとえばJLPでポイントを付与するメニューを社員の要望も聞きながら増やし、健康づくりの間口をさらに広げていきたいと考えています。
また、再検査や医療機関の受診勧奨など健診後のフォローアップを、もっときめ細かく効果的に実施する必要性も感じています。社員の平均年齢が40歳、男性社員では44・1歳とやや上がってきているので、肝臓疾患や糖尿病等が増える傾向があるからです。
ただ、ここで注意したいのは、健康施策や健康経営自体を目的化しないということ。言い換えれば、「社員が豊かになること・会社が成長し、成果を出し続けること」という最終目的を忘れないことです。JWP、JLPは健康経営実現のためのプロセスであり、健康経営もまた、最終目標達成に向けたプロセスである。このことを常に念頭に置いて、今後も取り組んでいきたいと考えています。
本日は有難うございました。
ジャックス ワーク・ライフ・バランスプロモーション(JWP)の状況(2017年度)
目標 2017年度結果
- ノー残業デー月3日以上の実施 実施率98.6%
- プレミアムウィークデー月1日実施 実施率99.8%
- 有給休暇60%以上の取得 実施率73.0%
- 超過勤務時間の削減 実績 前年度比 ▲12.0%
プレミアムウィークデーの過ごし方に関するアンケート結果
ジャックスグループライフケアポイント(JLP)の内容
主な項目 | 付与ポイント |
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歩数目標達成(1日8,000歩以上) | 5ポイント(1日1回) |
身体測定結果(腹囲・BMIがA判定) | 300ポイント(年1回) |
非喫煙者 | 500ポイント(年1回) |
禁煙達成者(喫煙者が3カ月継続して禁煙) | 5,000ポイント |
ノー残業デー月5回以上実施 | 1,000ポイント(月1回) |
献血参加 | 1,000ポイント(年1回) |
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