健康ニュース
2026.06.19
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氷を食べずにいられない「隠れ貧血」のサインと対策~ティーペック健康ニュース
「なんとなくだるい」「疲れがとれない」などの不調を抱えながら、ふと気付くと氷をガリガリとかじっている。そんな経験はありませんか。実はこれは「氷食症」と呼ばれる症状で、体内の鉄が不足しているサインかもしれません。氷を食べたくなる衝動と体の不調には、深いつながりがあります。本記事では、氷食症と鉄欠乏性貧血の関係や、気付かれにくい「隠れ貧血」の見つけ方、そして日常生活でできる対策をご紹介します。
「氷を食べたい」が止まらないのはなぜ?氷食症と貧血のリスク
氷食症とは、氷や凍らせた物を強迫的に食べずにいられなくなる状態で、異食症(通常は食べない物を食べたくなる症状)の一種です。氷を無性に食べたくなり、ガリガリと大量に食べずにはいられなくなります。目安の一つとして、「1日に製氷皿1皿分以上の氷を、2ヵ月以上にわたって毎日食べ続けている」という状態が氷食症の一応の基準として挙げられています。ただし量や期間だけでなく、「食べずにはいられない」「暑くもないのに氷を強く求めてしまう」などといった、自分でもコントロールしにくい衝動があるかどうかも、重要なサインです。「なんとなく好き」という感覚とは異なる、やめたくてもやめられないような切迫感があるなら、氷食症の可能性を念頭に置いてみてください。
氷食症では常に氷を大量に食べ続けるため体に負担が掛かり、思わぬ悪影響につながります。硬い氷を頻繁にかじることで歯のエナメル質(歯の表面を覆う硬い組織)が摩耗し、知覚過敏で冷たい物などで歯がしみるようになったり、歯が欠けたりします。また、大量の氷が胃腸を冷やし続けることで食べ物の消化に影響が出て、腹痛や下痢、食欲不振に悩まされることも考えられます。
氷食症と強く関係する病気に、鉄欠乏性貧血があります。鉄欠乏性貧血とは、貧血の一種で体内の鉄分が不足してヘモグロビン(赤血球の中で酸素を運ぶたんぱく質)が十分につくれなくなり、全身に酸素が行きわたりにくくなる状態です。氷食症の人は鉄欠乏性貧血が多いことが知られています。氷食症は「冷たい物が好き」という嗜好(しこう)の問題ではなく、「体が発する鉄不足のSOS」と捉えられます。
では、なぜ鉄分が不足すると氷を食べたくなるのでしょうか。そのメカニズムはまだ完全には解明されていません。有力な説の一つは、鉄分が不足すると体温を調節する働きがうまく機能しなくなり、口の中に熱っぽい感覚が生じやすくなる、というものです。その熱感を冷やそうとして、体が無意識に氷を求めてしまうのではないかと考えられています。
実は気付いていない?隠れ貧血のセルフチェック
貧血の診断基準は、血液検査でヘモグロビン値が成人女性で12g/dL未満、成人男性で13g/dL未満となっています。しかし、貧血の症状がなく、ヘモグロビンの値が基準の範囲内であっても、体内に貯蔵されている鉄(貯蔵鉄)が減少して貧血に近い症状が出ている状態があります。これを「隠れ貧血(潜在性鉄欠乏症」と呼びます。鉄不足による貧血は、通常の健康診断では見落とされやすいという問題があります。一般的な健康診断の血液検査ではヘモグロビンの値しか確認しないケースが多く、体に貯蔵された鉄分の量を示す「フェリチン値」は測定されないことが多いためです。フェリチンとは、体内に鉄分を貯蔵する働きのあるたんぱく質で、フェリチン値は体内にどれだけ鉄分が貯蔵されているかをチェックするための指標となります。一般的には、男女ともにフェリチン値が25ng/mL未満なら隠れ貧血に該当するとされています。
厚生労働省の「国民健康・栄養調査(平成21年)」によれば、20~40代の女性の3人中2人(65.5%)のフェリチン値が25ng/mL未満でした。つまり、健診でヘモグロビン値に異常なしと結果が出ていても、実は鉄が不足して貧血になっていたというケースが少なくないのです。
また、女性は月経・妊娠・出産・授乳を通じて継続的に鉄を失いやすく、特に経血量が多い「過多月経」の方は鉄欠乏のリスクがいっそう高まります。閉経前の数年間は月経が不規則になり経血量が増えることもあるため、この時期にも注意が必要です。このように女性のライフサイクル全般にわたって鉄不足のリスクがあることを、ぜひ意識しておいてください。
なお、男性が貧血にならないわけではありません。男性の貧血の場合、体内で出血している可能性が高く、重篤な病気が隠れている場合があります。胃潰瘍、十二指腸潰瘍、胃がん、大腸がん、白血病など命に関わる病気も考えられますので、注意が必要です。
次の隠れ貧血チェックリストで当てはまるものがないか確認し、隠れ貧血でないかをセルフチェックしてみましょう。複数当てはまる項目がある場合は、隠れ貧血や鉄欠乏性貧血の可能性があります。気になる方は内科や婦人科を受診して、フェリチン値を含む血液検査を受けることをお勧めします。
■隠れ貧血セルフチェックリスト
| 体の変化 | ・疲れやすく、だるさが続いている ・少し動いただけで息切れや動悸(どうき)がする ・頭痛や目まいが起きやすい ・肌荒れや口内炎を繰り返す ・爪が割れやすくなった、スプーン状に反り返っている ・冷えを強く感じる |
| 行動の変化 | ・氷をガリガリとかじらずにいられない ・集中力が続かず、ぼんやりすることが増えた ・朝、なかなか起き上がれない ・イライラする |
今日からできる鉄分を補う食事と生活習慣
鉄分不足の改善には、日々の食事の見直しが基本です。食品中の鉄分には肉や魚などに含まれる「ヘム鉄」と野菜や海藻などに含まれる「非ヘム鉄」の2種類があり、ヘム鉄は体に吸収されやすく、非ヘム鉄は吸収されにくい特性があります。ただし、非ヘム鉄は一緒に食べる物によって吸収率が変わり、ビタミンCを含む食品や動物性たんぱく質を一緒に食べると体に吸収されやすくなります。下の表を参考に、貧血の予防に効果的な栄養素を日々の食事に取り入れてみましょう。
| 栄養素 | 主な食材 | ポイント |
|---|---|---|
| ヘム鉄 | レバー、赤身の牛肉・豚肉、 かつお、まぐろ、あさり、しじみ など | 吸収率が高い(約20%) |
| 非ヘム鉄 | こまつな、ほうれんそう、大豆食品、海藻類 など | 吸収率は低め(約5%) |
| ビタミンC | 野菜類(ブロッコリー、パプリカ、ピーマン)、果物類(グレープフルーツ、キウイフルーツ) など | 非ヘム鉄と一緒に食べると、効果的な鉄の吸収を助ける |
| 動物性たんぱく質 | 肉・魚・卵・乳製品 など |
一方、鉄分の吸収を妨げる飲み物に注意が必要です。コーヒーや緑茶・紅茶に含まれるタンニンは、鉄分と結合して体への吸収を妨げます。鉄分の多い食事のときや食後すぐのタンニンの摂取は控えめにしましょう。
食事以外では、規則正しい生活習慣を整えることも大切です。睡眠不足や過剰なストレスは体全体の機能を低下させ、栄養素の吸収にも影響を与えます。また、過度なダイエットで食事量を極端に減らすと、鉄分を含む多くの栄養素が不足してしまいます。バランスの取れた食生活を継続することが、鉄分不足の予防・改善への近道です。
食事改善を続けても症状が改善しない場合や、貧血の症状が強い場合は、早めに医療機関を受診しましょう。医師の診断の下、必要であれば鉄剤などの治療を受けることが重要です。
最後に
氷を食べずにいられない習慣が続いている方の中には、鉄不足が原因であると気付かずにいる方が少なくありません。氷食症は、体からの大切なサインです。「疲れやすい」「なんとなく不調が続く」といった症状も、鉄分不足が関係している可能性があります。まずは食事内容を振り返り、鉄分を意識した食生活を心掛けてみてください。気になる症状がある方は、一度医療機関で血液検査を受けてみることをお勧めします。

