T-PEC

健康ニュース

  • Facebook
  • X
  • LINE

女性に多い繰り返す膀胱炎の原因と予防法~ティーペック健康ニュース

 膀胱炎は、女性の2人に1人が生涯で経験するといわれる身近な病気です。再発を繰り返すことも多く、症状によっては日常生活に支障を来すこともあります。本記事では、膀胱炎が発症する仕組みや、その背景にある生活習慣を解説します。また、予防法や症状が出たときの対処法についてもご紹介します。

膀胱炎はこうして起こる!発症の仕組みと女性がかかりやすい理由

 膀胱炎とは、尿をためておく袋状の臓器である膀胱の粘膜に炎症が起きる病気です。膀胱炎のほとんどは膀胱に大腸菌などの細菌が感染し、増殖することで起こります(急性単純性膀胱炎)。健康な状態では、たとえ膀胱に細菌が入ったとしても免疫機能によって細菌の増殖が抑えられ、排尿の際に外へ洗い流されるため、膀胱炎を発症しません。しかし、睡眠不足や過剰なストレスなどから免疫機能が低下しているときや排尿を我慢することが続くと、体の抵抗力が低下し膀胱の中で細菌が増殖しやすくなり、膀胱炎を発症します。これらの膀胱炎のリスクを高める生活習慣があると、膀胱炎の再発を繰り返してしまうことがあります。

 膀胱炎は女性の方が男性よりかかりやすいことで知られています。女性が膀胱炎にかかりやすいのは体の構造が影響しており、細菌が膀胱に入りやすいからです。女性は多くの細菌が常に存在する膣や肛門と尿道口が近いため、排便や性行為などの際に細菌が尿道に侵入しやすくなっています。さらに、女性は男性よりも尿道が短いため、尿道に侵入した細菌が膀胱にまで入り込みやすいです。尿道の長さは男性で約17~20cmなのに対し、女性は約3~4cmしかありません。

 前述したように膀胱炎の多くは細菌感染によるものですが、糖尿病などの基礎疾患があることで起こる複雑性膀胱炎、細菌が原因ではない間質性膀胱炎、放射線治療の副作用として生じる放射線性膀胱炎などもあります。

膀胱炎の症状と危険なサイン

 膀胱炎にかかると、排尿に関するさまざまな不快な症状が表れます。最も特徴的なのは、頻繁にトイレに行きたくなる頻尿です。膀胱に炎症が起きることで、少量の尿でも強い尿意を感じるようになり、日中はもちろん、夜間に何度もトイレに行く必要に迫られます。

 排尿時に生じる痛みも典型的な症状の一つです。排尿を始めるときや排尿中に尿道に痛みや焼けるような刺激を感じ、時には下腹部に鈍い痛みを伴うこともあります。さらに、排尿後もすっきりしない残尿感が残り、「まだ尿が出るのでは」という不快な感覚に悩まされます。

 尿の状態にも変化が表れます。健康なときの尿は透明に近い黄色ですが、膀胱炎になると細菌と戦った白血球が尿に混じることで白く濁ることがあります。尿の臭いが強くなったり、炎症によって尿に血が混じって赤やピンク色になったりすることもあります。

 症状のうち、特に注意が必要なのは38℃以上の発熱です。膀胱炎のみでは通常は発熱しません。発熱がある場合には、膀胱だけでなくその先の腎臓にまで細菌の感染が広がった「腎盂腎炎(じんうじんえん)」(腎盂は腎臓内の尿のたまる部分)にかかっている可能性があります。腎盂腎炎を放置すると血液中に細菌が入り込んで細菌感染が全身の臓器に広がる敗血症となり、命に関わります。腎盂腎炎では発熱以外にも背中や腰の痛み、吐き気、悪寒などの症状が表われますから、このような症状が出現した場合は、すぐに医療機関を受診し、適切な治療を受けてください。

膀胱炎予防の3つのポイント

 膀胱炎の予防には3つのポイントがあります。「清潔を保つこと」「尿をため過ぎないこと」「体調管理に気を配ること」です。

 まず、清潔面での注意点として、トイレの後は必ず前から後ろに拭くようにします。これは、肛門付近の細菌が尿道に入るのを防ぐためです。下着は通気性の良い綿素材の物を選び、小まめに取り換えることで局部を清潔に保てます。性行為も膀胱炎の原因となりやすいため、行為の前後は陰部を清潔に保ち、行為後は必ず排尿することをお勧めします。

 次のポイントは、尿をため過ぎないことです。膀胱内に尿が長時間たまっていると、そこで細菌が増殖しやすくなってしまいます。日中は我慢せずに小まめに排尿する習慣を付けましょう。また、水分を十分に摂取することも大切です。1日に1.5Lを目安に水分を取ると尿の量が増え、排尿の際に細菌を排出する効果が期待できます。

 3つ目は体調管理です。睡眠不足やストレスは免疫力を低下させ、膀胱炎にかかりやすくなります。十分な睡眠をとり、ストレスをためない生活を心掛けましょう。下半身の冷えも膀胱炎の原因となりやすいため、冷え過ぎには注意が必要です。規則正しい生活を送り、体調を整えることは膀胱炎に限らず、多くの病気を防ぐことにつながります。

 ただし、膀胱炎の予防のために清潔にすることは大切ですが、やり過ぎは逆効果となる場合があります。清潔にしようとして温水洗浄便座のビデを使い過ぎると、水流が細菌を洗い流すどころか、かえって細菌を尿道に押し込むことになりかねません。また、陰部を過剰に洗い過ぎると、尿道や膣の善玉菌まで減らしてしまい、膀胱炎を引き起こす細菌を増殖しやすくさせてしまう可能性があります。清潔に保つことは必要ですが、やり過ぎないようにしましょう。

抗菌薬を正しく使って再発を防ぐ

 膀胱炎の治療には細菌を殺す抗菌薬が使用されます。膀胱炎を発症してしまったら、早めに医療機関を受診し、医師から抗菌薬の処方を受けてきちんと治療することが大事です。抗菌薬を飲み始めるとすぐに症状が改善するケースが多いですが、症状がなくなったからといって抗菌薬を飲むのを途中でやめないようにしてください。薬を指示通りに飲み切らないと、細菌が死滅せずに再発したり、薬が効きづらい耐性菌が生じたりする原因となります。治療中は十分に水分を摂取することを心掛けると、尿が増えて排尿の際に細菌を体外に排出しやすくなるため、治療効果が高まり、悪化するのを防げます。

 膀胱炎には、医師の処方箋がなくてもドラッグストアで購入できる市販薬もあります。しかし、膀胱炎の原因である細菌を殺す抗菌薬は、市販薬としては販売されていません。市販薬には尿を増やしたり、炎症を抑えたりする作用はありますが、殺菌する効果は基本的にありません。ごく軽い膀胱炎であれば治る場合もありますが、市販薬を使用しても改善しない場合は早めに医療機関を受診し、抗菌薬を処方してもらいましょう。

 膀胱炎を繰り返す場合は、膀胱炎になりやすい生活習慣になっていないかを注意する必要があります。ただし、特に原因に覚えがない場合には、他の病気などが隠れているのかもしれません。膀胱や尿道の形の異常、膀胱結石、何らかの腫瘍、糖尿病などの基礎疾患が膀胱炎の原因となっていることもありますから、再発が続く場合は泌尿器科で精密検査を受けてください。

最後に

 膀胱炎は女性がかかりやすく、人知れず悩まされている人が多い病気です。忙しい職場でトイレを我慢しがちだったり、小さい子供の育児をしていて自分のタイミングでトイレに行けなかったりする女性には、再発を繰り返している人がいらっしゃるかもしれません。予防のポイントを心掛けると同時に、早めに医療機関を受診して抗菌薬で治療を受けることが再発予防につながります。

 職場や家族などの周囲の人は、トイレを我慢すると女性は膀胱炎を発症しやすいという事実を知り、安心してトイレに行けるように配慮し合える環境をつくりたいものです。

原稿・社会保険研究所ⓒ

つながるティーペックつながるティーペック

弊社サービスにご関心のある方は、
お気軽にご相談ください

お問い合わせフォームへ