健康ニュース
2025.02.20
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若いうちから始める骨粗しょう症予防~ティーペック健康ニュース
骨粗しょう症は、国内で推計1,590万人(男性410万人、女性1,180万人)の患者がいる身近な病気です。40歳以降の女性に限っては4人に1人が骨粗しょう症といわれています。骨粗しょう症の予防は、高齢になってからではなく若いうちから始めることが必要です。本記事では、骨粗しょう症の仕組みや骨を守る年代別の注意ポイントなどを解説します。
知っておきたい!年齢とともに変わる骨の仕組み
私たちの骨は、古い骨を壊して新しい骨をつくる「骨代謝」を繰り返すことで、丈夫な状態を保っています。この骨代謝は、「破骨(はこつ)細胞」が古い骨を壊し、「骨芽(こつが)細胞」が新しい骨をつくるという絶妙なバランスの上に成り立っています。骨粗しょう症は、骨の形成と分解のバランスが崩れ、骨密度が著しく低下し、骨量が減少した状態です。骨がスカスカになることでもろくなり、体中の骨が折れやすくなります。
骨粗しょう症で骨が弱くなると、「転倒しかけたので手をついた」「尻もちをついた」「段差でつまずいた」程度のちょっとした衝撃で骨折するため、骨折を繰り返すことになります。さらに骨折するたびに安静を強いられることで運動不足になり、ますます骨が弱くなります。また、背骨も弱くなるため、背骨が押しつぶされるように折れたり、骨が変形したりすることで背中が曲がり、身長が縮むことがあります。その結果、体形に変化が生じて内臓が圧迫され、内臓機能の低下を起こします。
通常、10代後半から20代にかけては骨の形成が活発で、骨量は年々増加していきます。骨量は20歳前後でピークを迎え、この時期の骨量を「最大骨量」と呼びます。最大骨量は40代ごろまでは維持されますが、その後は加齢とともにゆっくりと減少していきます。ただし、女性では閉経後に急激に骨量が減少することがあるため注意が必要です。これは、女性ホルモンのエストロゲンには破骨細胞の働きを抑える作用があり、閉経でエストロゲンが減少すると骨の分解が促進されてしまうためです。閉経の影響で40歳以降の女性では4人に1人が骨粗しょう症といわれています。一度失われた骨量を取り戻すことは難しく、若いうちから維持することが極めて重要です。
今日から実践!骨を強くする食事と運動
骨を丈夫に保つためには、栄養バランスの良い食事と適度な運動が欠かせません。
まず食事面では、骨の材料となるカルシウムを十分に摂取することが重要です。「日本人の食事摂取基準(2020年版)」では、成人1人1日当たりの推奨摂取量を年代に応じて男性で700mgから800mg、女性で600mgから650mgと設定しています。令和5年「国民健康・栄養調査」によれば、カルシウムの成人1人1日当たりの平均摂取量は482mgにとどまっているため、摂取不足が指摘されています。カルシウムが豊富に含まれる食材には牛乳・乳製品、小魚、ひじきやわかめなどの海藻、大豆製品、小松菜、ほうれん草などがありますので、積極的にメニューに取り入れましょう。
加えて、カルシウムの吸収を助けるビタミンDやビタミンKを摂取すると、より効果的に骨を強くすることができます。ビタミンDは魚類(サケ、サンマ、イワシなど)、干ししいたけなどに多く含まれ、ビタミンKは納豆やわかめ、小松菜、ほうれん草、ブロッコリー、キャベツなどに豊富です。食事以外では、ビタミンDは日光(紫外線)を浴びることで皮膚の中で生成されますので、季節によりますが日焼けをしない程度の時間で日光浴をすることもお勧めです。窓ガラスは紫外線をあまり通さないため、外に出て日光を浴びましょう。
運動面では、骨に長軸方向の刺激がかかる運動が効果的とされています。具体的には着地や接地の衝撃を受けるウォーキング、ジョギング、エアロビクス、縄跳びなどです。ウェイトマシンなどを使用した筋トレも高い効果があります。しかし、激しい運動は効果が高くても転倒などでけがをするリスクも高いので、例えば次のようなものから始めてみてはいかがでしょうか。
- ウォーキング:1日30分以上、週3回を目標に
- 筋力トレーニング:自分の体重で負荷をかけるものを週2~3回
- 階段の利用:エレベーターやエスカレーターに乗らずに階段を使う習慣をつける
すでに検査で骨密度の低下を指摘されている、あるいは腰痛や膝の関節痛などがあるという場合には、必ず医師と相談してから運動に取り組むようにしてください。
若い世代に多い「やせ」の危険性 |
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骨の健康に大きな影響を与える要因の一つが体重です。若い女性に多い過度な低体重は、骨密度低下の大きなリスク要因となっています。厚生労働省の調査によると、20代女性の約2割がBMI(体格指数)18.5未満の「やせ」に該当し、この割合は他の先進国と比べても突出して高くなっています。やせが骨に悪影響を与える理由は主に2つあります。1つは、体重が軽過ぎることで運動による骨への負荷が少なくなり、骨の形成が促進されにくくなること。もう1つは、過度な低体重による栄養不足から女性ホルモンの分泌が低下し、骨密度が維持できなくなってしまうことです。 特に問題なのは、若い世代に多い極端な食事制限による無理なダイエットです。無理なダイエットで骨をつくるための栄養素が不足すると、最大骨量を十分に獲得できず、将来の骨粗しょう症リスクを高めてしまうのです。 健康的にダイエットするには、極端な食事制限を避け、バランスの良い食事と適度な運動を続けながらゆっくりと体重をコントロールすることです。BMIが18.5未満の方は、医師などの専門家と相談しながら適正体重を目指しましょう。 |
あなたの年代で始める!骨を守る生活習慣
骨粗しょう症予防は、年代によって注意すべきポイントが異なります。それぞれの年代ごとの注意点を確認してみましょう。
●10代:思春期は骨をつくる大切な時期
思春期は、成長に伴って骨が大きく成長する重要な時期です。この時期の生活習慣が将来の骨の健康を大きく左右します。学生の間は体育の授業や部活動などで運動をする機会が多い時期ですので、1日3食の規則正しい食事とカルシウムを含む食品の積極的な摂取で、骨の発達を促すことが重要となります。この時期にダイエットで極端な食事制限を行うと、十分な骨量を得ることができなくなってしまいます。
●20代~30代:最大骨量を維持する時期
20歳前後で骨量は最大となります。この最大骨量が多ければ多いほど、その後の人生における骨粗しょう症のリスクを下げることができます。運動不足にならないように適度な運動を続け、栄養バランスの良い食事を取りましょう。無理なダイエットは引き続き避けてください。過度の飲酒や喫煙は骨を弱くする原因となりますから、飲酒は適量にとどめ、喫煙者は一刻も早く禁煙が必要です。
●40代~50代:骨量減少が始まる転換期
40代から骨密度は低下傾向に入り、女性では閉経後に女性ホルモンの減少で骨密度の低下が加速します。意識的に運動する時間を確保し、カルシウムを中心とした栄養バランスの良い食事を心掛けることが大事です。また、多くの自治体で40歳以上の女性を対象に骨粗しょう症検診が行われていますので、対象になったら必ず受診しましょう。
●60代以降:骨折予防がより重要に
この年代以降になると、加齢による筋力低下や平衡感覚の衰えにより転倒のリスクが高まるため、骨粗しょう症予防に加えて転倒予防も重要になってきます。転倒による骨折に注意しながらウォーキングや体操など、無理のない運動を続けましょう。室内の段差解消など、転倒を予防するための環境整備も大事になってきます。
骨粗しょう症は気が付かないうちに進行しますので、気になる症状がなくても検診で骨の状態を確認する必要があります。腰や背中の痛み、体形の変化がある場合には、必ず医師の診断を受けてください。
最後に
骨粗しょう症は骨がもろくなって骨折が起きやすくなる病気ですが、骨が折れるまでは症状がないことが多いため、気が付かないうちに進行してしまいます。ひどい場合にはくしゃみなどのわずかな衝撃で骨折するほど骨が弱くなることもあります。若いうちからの予防を意識すれば、骨粗しょう症のリスクを大きく減らせますので、極端なダイエットは避け、バランスの取れた食生活と適度な運動を続けて年齢に関係なく予防に取り組みましょう。