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急な温度差に要注意!ヒートショックを防ぐ冬の過ごし方~ティーペック健康ニュース

 真冬日が続くこの季節、お風呂は心と体を癒やしてくれる大切な時間です。しかし、「入浴中の事故により全国で年間約17,000人もの方が命を落としており、その多くが冬に発生している」と推計されていることをご存じでしょうか。その原因となっているのが「ヒートショック」です。急激な温度変化が引き起こす危険なヒートショックは、適切な対策で防ぐことができます。

 本記事では、誰もが知っておきたいヒートショックが起こる仕組みと、命を守るために家庭でできる具体的な予防法についてご紹介します。

ヒートショックのメカニズムと危険性

 ヒートショックとは、急激な温度変化によって血圧が大きく変動し、心臓や血管に大きな負担がかかることで起こるさまざまな健康被害のことです。私たちの体は体温を一定に保つため、温度が急激に変化する際は血管を収縮させたり拡張させたりして調整しています。寒い場所では体温が奪われるのを防ごうと血管を収縮させて体の中心部に血液を集めようとするため、血圧が上昇します。反対に、暖かい場所では体温を下げようと血管が拡張して体の隅々まで血液を届けようとするため、血圧が低下します。このような血圧の変化が急激に起こると、体が対応しきれず、脳への血流が減ることでめまいや失神を起こしたり、心臓に大きな負担がかかったりします。最悪の場合、心筋梗塞や脳卒中などの重篤な事態を引き起こす危険性があります。

 冬は暖房の効いた部屋とそれ以外の場所で温度差が大きくなります。つまり、暖房の効いた部屋から寒い廊下に出たり、逆に寒い屋外から暖房の効いた屋内に入ったりするたびに、血圧が急変動して体には大きな負担がかかっているのです。

 特に危険なのは入浴時です。寒い脱衣所で服を脱いだり、湯船に入ったりする際に血圧が大きく変動し、ヒートショックによる症状を起こしやすくなります。例えば入浴中に失神して湯船に沈んでしまうと、そのまま溺死につながる危険性があります。あるいは浴室でめまいを起こすと転倒して、大きなけがにつながるかもしれません。

 東京消防庁によれば、高齢者が溺れて救急搬送された件数は11月から2月までの冬場に集中しており、入浴中の事故の多くにヒートショックが影響していると考えられます。

 地方独立行政法人東京都健康長寿医療センターの研究では、1年間で約17,000人(うち14,000人が高齢者)がヒートショックに関連して入浴中に急死したと推計しています。

今日からできる!家庭内の温度差対策

 ヒートショックを予防するためには、住まい全体の温度管理が重要です。部屋ごとの温度差をなくし、快適な室温を保つことを心掛けましょう。世界保健機関(WHO)では、冬場でも室温を18℃以上にすることを推奨しています。

 寒い脱衣所やトイレには小型の暖房器具を置きましょう。廊下や階段にカーペットを敷くなどの防寒対策も有効です。家全体の断熱リフォームを検討してもよいかもしれません。温度計を置いて定期的にチェックすることで、適切な温度管理が可能になります。

 前述したように入浴時は特に危険です。入浴前にシャワーで浴室を暖め、湯船に入る前にはかけ湯をして体を慣らすことが大切です。熱過ぎるお風呂は危険なので湯温は41℃以下を目安とし、湯船につかるのは10分程度までにしましょう。食後すぐの入浴も避けた方が安全です。アルコールには血管を拡張させる作用があり、飲酒後の入浴は大変危険となりますから、絶対に避けてください。

 朝は体が冷えている上、起床直後は血圧が不安定になりやすい時間帯です。起床前に暖房を入れて室温を調整し、布団の中で軽く体操をして血行を促してから、ゆっくりと動作を始めることをお勧めします。着替えは暖かい部屋で行うようにしましょう。

 日常生活では、首・手首・足首を意識して温める服装を心掛けましょう。規則正しい生活を送り、十分な睡眠をとることも大切です。適度な運動で血行を促進し、水分を十分に摂取することで、体調を整えることができます。定期的な血圧測定も有効な予防策の一つです。

大切な家族を守る!高齢者のためのヒートショック対策

 若い人でもヒートショックは油断できませんが、影響が大きいのは高齢者です。高齢者は動脈硬化の進行で血管の弾力性が低下し、血管を収縮・拡張させて体温を調節する機能が衰えていることから、気温の変化で血圧が大きく変動しやすくなっています。体温を調節する機能も低下していることから、寒さや暑さを感じにくく、知らず知らずのうちに危険な状態に陥ってしまうかもしれません。また、高齢になるほど高血圧や糖尿病、心臓病などの持病がある場合が多く、持病があるとヒートショックのリスクがさらに高まります。

 高齢者の方々が安全に冬を過ごすためには、本人の心掛けだけでなく、家族による支援が重要です。まず、住まい全体の温度管理を家族ぐるみで行いましょう。例えば、高齢者が起床する前に暖房を入れておく、入浴前に浴室を暖めておくなど、事前の温度調整が効果的です。

 入浴は家族が在宅している時間帯にしましょう。浴室には見やすい場所に温度計と時計を設置し、適温(41℃以下)と適切な入浴時間(10分以内)を意識できるようにします。様子を確認するために、入浴中は家族から声をかけるようにしてください。体調が悪い場合には、無理せずに入浴を翌日以降にすることが大事です。

 一人暮らしの高齢者の場合は、携帯電話を浴室近くに置く、防水性の緊急通報装置を設置するなど、万が一のときの連絡手段を確保することが大切です。普段から決まった時間に家族が電話をする習慣をつけておくと、体調の変化にも気付きやすくなります。

最後に

 温度差が命取りになりかねないヒートショック。家族で協力して対策を実践すれば、十分に予防することができます。高齢者のいるご家庭では、家族で住まい全体の温度管理に気を配り、協力して対策を実践してください。持病のある方は、かかりつけ医に相談して自分に合った予防法を確認しておくことをお勧めします。

 この冬は、温度計を確認する習慣を付けて、安全で快適な冬の生活を送ってみてはいかがでしょうか。

原稿・社会保険研究所ⓒ

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