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2024.11.20
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脳梗塞の原因に!? 放置すると危険な心房細動~ティーペック健康ニュース
心臓は規則的なリズムで収縮を繰り返すことで全身に血液を送り出しています。そのリズムが乱れると不整脈となり、深刻な健康問題につながります。その不整脈の一つが「心房細動」です。心房細動を放置すると脳梗塞などの重大な合併症を引き起こす可能性があります。本記事では、心房細動のメカニズムから症状、治療法まで、見過ごせない心臓の異変について解説します。
心臓の構造と心房細動の仕組み
心房細動を理解するには、まず心臓の基本的な構造を知ることが必要です。心臓は4つの部屋からなり、上部の2つを心房、下部の2つを心室と呼びます。左右に分かれていますので、左心房、左心室、右心房、右心室と4つの名前があります。心房は全身を巡って戻ってきた血液を受け取り、心室に送る役割があります。心室は受け取った血液を全身に送り出す、いわば心臓のポンプの役割を果たします。
心臓は心筋と呼ばれる筋肉でできています。健康な心臓では、洞房結節という部分から電気刺激が起こり、その電気刺激によって心筋が収縮することで血液を全身に送り出します。正常な心臓では1分間に約60~80回程度の規則的なリズムで収縮していますが、その電気刺激が何らかの理由で正しく心筋に伝わらないと、収縮のリズムが崩れた不整脈になってしまいます。
不整脈の一つであり今回のテーマである心房細動は、心房の部分でバラバラに電気刺激が起こり、心房が小刻みに震えている状態です。この状態では心房が効率よく血液を心室に送ることができません。その結果、心臓の中で血液がうまく流れなくなり、血液の流れが滞ることで血栓(血の塊)ができやすくなります。また、心臓が全身に血液を送り出す能力が低下し、心臓の機能が低下した心不全になりやすくなります。
心房細動は脳梗塞を引き起こす
心房細動の代表的な自覚症状としては、動悸(心臓がドキドキする感覚)、息切れや呼吸困難、疲労感や倦怠感、目まいや立ちくらみ、胸の不快感や痛みなどがあります。しかし、約半数の人は心房細動が起きても自覚症状がないといわれています。ただし、自覚症状がないからといって安心はできません。なぜなら心房細動は重大な合併症のリスクを伴うからです。
最も懸念される合併症が脳梗塞です。心房細動によってできた血栓は血液の流れに乗って全身に運ばれます。血栓が脳に運ばれて脳の血管を詰まらせると、脳梗塞を引き起こしてしまいます。心房細動がある人は、ない人と比べて脳梗塞のリスクが約5倍も高くなります。
また、心房細動を放置して心不全になると、心臓が正常に機能しないことで体全体に十分な血液を送り出せなくなり、全身の臓器の機能が低下します。その結果、体のむくみ、息切れ、だるさ、食欲不振、尿の量の減少などさまざまな症状が表れます。
心房細動の予防のために生活習慣の改善を
心房細動にはさまざまな要因が関係しており、複数の要因が組み合わさって発症することが多いといわれています。主な危険因子には以下のようなものがあります。
心房細動の主な危険因子 | |
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加齢 | 年齢が上がるほどリスクが高まり、特に60代以降は発症しやすくなります。 |
生活習慣病 | 特に高血圧は心臓に負担がかかり、心房細動のリスクを高めます。糖尿病も重大な危険因子の一つです。 |
心臓病 | 心臓の病気や心臓の手術を受けたことがある場合はリスクが高まります。 |
過度の飲酒 | お酒の飲み過ぎは肝臓だけでなく心臓にも負担をかけ、不整脈を誘発します。 |
肥満 | 肥満は心房細動の発症を1.5~2.0倍増加させるとされています。 |
そのほか | 過度のストレス、喫煙、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、睡眠時無呼吸症候群(SAS)、甲状腺疾患、腎不全による透析なども危険因子となります。 |
予防に関しては以下の対策を心掛けましょう。これらの予防策は心房細動だけでなく、心臓の健康と生活習慣病の予防にも良い影響を与えます。一つ一つの小さな行動変容が長期的には大きな効果をもたらし健康維持につながりますので、できることから少しずつ実践していくことが大切です。
心房細動の予防のための対策 | |
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血圧管理 | 定期的に血圧を測定し、高血圧の場合は適切な治療を受けてください。できるだけ塩分摂取を控える食生活が血圧の維持につながります。 |
肥満予防 | BMIが25未満になるよう体重を管理し、内臓脂肪が減少するように努めましょう。食生活の見直しだけでなくウォーキングなどの有酸素運動も大切です。 |
節酒 | 1日の平均純アルコール摂取量を男性40g未満、女性20g未満にしてください。1回に純アルコール摂取量60gを超えるような短時間の多量飲酒は避けましょう。 |
禁煙 | 喫煙者はすぐに禁煙しましょう。非喫煙者はタバコの煙を吸ってしまう受動喫煙の機会を避けてください。 |
ストレス管理 | 規則正しい生活を心掛け、十分な睡眠時間を確保しましょう。自分なりのストレス解消法を見つけて、リラックスして休養することが大切です。 |
健康診断 | 年に1回は必ず健康診断を受けて自分の体の状態をチェックしましょう。異常を指摘された場合は精密検査をきちんと受けてください。 |
心房細動の検査と治療法
心房細動の診断には心電図検査が用いられます。心電図は心臓の電気的活動を記録するもので、心房細動などの不整脈に特有の波形を捉えることができます。しかし、心房細動は常に起こっているわけではないため、携帯用の心電計を身に付けて24時間ずっと心電図を測るホルター心電図検査で、より長時間の観察を行うこともあります。また、心臓超音波(心エコー)検査で心臓の大きさや形、動く様子などを観察して、心房細動を引き起こす心臓の病気がないか観察します。胸の表面からの超音波検査で心臓の様子を確認するのが難しい場合は、胃カメラのように口から超音波検査の機器が付いた管(プローブ)を入れ、食道側から心臓の超音波検査を行う経食道心臓超音波(経食道心エコー)検査が行われることもあります。そのほか必要に応じて胸部レントゲン検査やCT検査、血液検査などが行われます。
治療では症状の軽減、合併症(特に脳梗塞)の予防、正常な拍動リズムの回復を目指して薬物療法、カテーテル治療などが行われます。また心房細動を引き起こす原因となる心臓の病気がある場合には、その治療が行われます。
●薬物療法
血液をサラサラにする薬を服用して血栓をできにくくして脳梗塞を防ぐ方法と、不整脈が起こらないように心臓の動きを制御する薬を服用する方法の2つのアプローチがあります。これらは心房細動の発生を防ぐ薬ではないため、薬は継続して服用する必要があります。
●カテーテル治療(カテーテルアブレーション)
カテーテルと呼ばれる細い管状の器具を足の付け根の太い血管から心臓まで挿入し、心房細動を引き起こす異常な電気刺激を出している部分を焼いてしまう治療法です。異常な電気刺激が起こらなくなるため、正しいリズムで心房が収縮するようになり、根治が期待できます。薬物療法で効果が不十分な場合や、若年者の心房細動などで選択されることがあります。
心房細動と心室細動の違い |
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心房細動と似た名前の不整脈に「心室細動」があります。心房細動は心臓の上部である心房で起こる不整脈で、脳梗塞などの重篤な合併症の危険はあるものの、すぐに心臓が止まってしまうようなものではありません。一方、心室細動は心臓の下部である心室で起こる不整脈です。心室が小刻みに震えて収縮できなくなってしまうため、血液を全身に送り出すことができず、十分な血液を循環させることができません。そのため、心室細動が起こると、数分以内に適切な処置が行われないと死に至ります。心室細動は一刻を争う緊急事態であり、すぐに心肺蘇生を行うとともにAED(自動体外式除細動器)で心臓に電気ショックを与え、心臓の収縮を正常なリズムに戻す(除細動)ことが必要です。このように心房細動と心室細動ではその緊急性と対処法が大きく異なります。 いざというときにAEDを素早く使えるように、消防署などが行う応急手当ての講習を受けて、心肺蘇生とAEDの操作法を学んでおきましょう。 |
最後に
心房細動は放置すると重大な合併症につながる可能性のある不整脈です。しかし、半数の人で自覚症状がなく、たとえ自覚症状がある場合でもそのまま放置してしまう人が多いといわれています。早期に発見し適切な治療を受ければ、心房細動は良好にコントロールすることが可能です。自覚症状がなくても、定期的に健康診断を受けて心臓の不整脈がないかを確認しておきましょう。また心臓の異変を感じたら、迷わず医療機関を受診しましょう。