白内障を高齢者の目の病気と勘違いしていませんか。実は早い人では40代のうちから白内障の症状が表れ始めるとされています。加齢とともに誰にでも起こる白内障ですが、若いうちの白内障は症状が軽微なため見逃されやすくなっています。見えづらさなどの症状に早期に気付いて適切な治療を受けることが大事ですので、白内障に関する知識を身に付けましょう。

眼球の水晶体が白く濁る白内障

　白内障は、目の水晶体という部分が白く濁ることで起こる病気です。水晶体は厚さを調節することでカメラのレンズのように光を適切に屈折させて、目の奥にある網膜にピントを合わせる役割を担っています。健康な水晶体は透明で光をクリアに通すので、物を鮮明に見ることができます。しかし、加齢などさまざまな要因で水晶体のたんぱく質が変質して異常に集まり、本来透明なはずの水晶体が濁ってしまうことがあります。これが白内障の原因です。水晶体が濁ってしまうとレンズが曇っているのと同じですから、水晶体を通過する光が乱反射し、見え方に影響が出始めます。

　白内障が軽いうちは症状を自覚することが少なく、生活にほとんど影響はありません。しかし、ゆっくりと少しずつ進行します。白内障による見え方の変化は、曇りガラスを通して外を見る感覚に似ています。曇りガラスを通すと外の景色がはっきりと見えないように、白内障が進行すると視界全体がぼやけたり、かすんだりするなど見え方にさまざまな異常が表れます。

　一度濁った水晶体は元に戻すことはできません。治療としては薬を使って進行を遅らせるほか、進行して日常生活に支障を来たす症状がある場合には、濁った水晶体を取り除いて眼内レンズを挿入する手術が行われます。白内障の手術は全国で1年間に約150万件以上も行われており、手術自体は早ければ10～20分程度の短時間で終了することから、日帰り手術も多く行われています。

白内障の代表的な症状

　白内障は緩やかに進行するため、初期は症状に気付きにくいことがほとんどです。40代など若いうちは老眼と勘違いされる場合もあります。

　白内障の代表的な症状には以下のようなものがあります。

●かすみ目

目の前に薄い膜がかかったような感覚がしたり、全体に霧がかかってぼやけて見えたりするようになります。

●視力低下

徐々に視力が低下し、眼鏡やコンタクトレンズの度数を上げてもはっきり見えなくなります。

●まぶしさの増加

晴れた日の外出時や、夜間の信号・街灯・対向車のヘッドライトなどの光をまぶしく感じるようになります。

●色の変化

色があせて見えたり、黄色みがかかって見えたりすることがあります。

●物が重なって見える

片目で見たときに物が二重三重に見えることがあります。

●明暗の差が分かりにくくなる

明暗の差が分かりにくくなり、特に薄暗い環境でよく見えなくなります。

●近視が強くなる

近視が強くなることで遠くが見えにくくなる一方、近くが見えやすくなり、老眼が一時的に改善したように感じることがあります。

　40代で自覚できる症状としては、仕事でのパソコン作業や細かい作業がつらくなる、夜間の自動車の運転時に見えにくさを感じるなどが挙げられます。視力の低下や目の疲れやすさ、日中と夜間の見え方の違いなどの症状に気付いたら、早めに眼科を受診することをお勧めします。

白内障の原因と予防法

　白内障は加齢に伴う老化の影響が大きく、年齢を重ねるにつれて多くの人に白内障の症状が表れます。水晶体に初期の濁りがある人の割合は50代で4～5割、60代で6割以上、70代で8割以上、80歳を過ぎるとほぼ全員とされ、高齢になるとほとんどの人が白内障になるといっても過言ではありません。

　白内障は糖尿病との関係も深く、糖尿病の合併症の一つとして挙げられています。糖尿病の人は健康な人に比べて白内障を約5倍も発症しやすく、より若い年代で発症してしまいます。このため、白内障予防のためには糖尿病の予防と血糖値のコントロールが重要です。
　加齢、糖尿病以外ではステロイド薬の長期・大量の服用、アトピー性皮膚炎などアレルギー、放射線治療、目のけがが原因となる場合があります。

　白内障を完全に予防することは難しいですが、少しでもなりにくくするためには、日頃から目を大切にすることに加えて健康的な生活を続けて体全体の老化を防ぐことが重要です。以下のポイントを守り、白内障の発症予防につなげましょう。

●目の休息

パソコンやスマートフォンなどのデジタル機器を使用する際は小まめに休憩をとり、目を休ませましょう。

●紫外線対策

外出時はサングラスや帽子を着用し、紫外線から目を守りましょう。

●バランスの取れた食事

抗酸化作用のある食品（緑黄色野菜、果物など）を積極的に摂取しましょう。

●適度な運動

適度な運動は全身の血流を改善し、目の健康にも良い影響を与えます。

●禁煙

喫煙は白内障のリスクを高めます。喫煙者は他の生活習慣病の予防のためにも禁煙してください。

●生活習慣病の予防

定期的に健康診断を受け、糖尿病などの生活習慣病の発症を予防し、重症化を防ぎましょう。

最後に

　40代から始まる可能性のある白内障ですが、早期発見と適切な対策により、進行を遅らせることができます。目の健康は私たちの生活の質に大きく関わります。日々の生活習慣を見直し、目の健康を守ることにつなげていきましょう。白内障は治療法が確立されていますので、気になる症状に気付いたらすぐに眼科を受診し、医師の診察と必要な治療を受けることが大切です。40代からの目のケアで、いつまでも明るくクリアな視界を保ちましょう。

原稿・社会保険研究所ⓒ