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新しい『健康づくりのための睡眠ガイド』~ティーペック健康ニュース

 2024年2月に厚生労働省から「健康づくりのための睡眠ガイド2023」が公表されました。「健康づくりのための睡眠指針2014」が策定されてから約10年が経過し、睡眠に関する新たな科学的知見を踏まえた内容に更新されています。「成人」「こども」「高齢者」という年代別の睡眠・休養の推奨事項および参考情報についてまとめられていますが、その中のいくつかをベースに健康増進・維持に不可欠な睡眠の重要なポイントを確認していきましょう。

成人の適正な睡眠時間

 「健康づくりのための睡眠ガイド2023」(以下「ガイド」という)では、成人の適正な睡眠時間を約6~8時間とし、1日に少なくとも6時間以上の睡眠時間を確保できるように努めることが推奨されました。ただし、この適正な睡眠時間には個人差があるため、各個人が自分にとって実際に必要な睡眠時間がどれくらいなのかを探ることも併せて推奨されています。
 厚生労働省の調査によれば、20~59歳の各世代において、睡眠時間が6時間未満の人が約35~50%を占めており、相当数の人がガイドの推奨する適正な睡眠時間を確保できていないことが分かります。
 実際には6時間未満でも睡眠が充足する人や、8時間以上の睡眠を必要とする人もいます。約6~8時間を目安にしつつ、日中の眠気や後述の睡眠休養感を基に自分にとっての適正な睡眠時間を知ることが大切です。例えば、日中にうとうとと眠くなることが多いようであれば、毎日の睡眠時間をもう少し長く確保してみましょう。ただし、睡眠時間は長ければ長いほど良い、ということではありません。必要以上に睡眠時間を長く確保しようと寝床で過ごす時間が長くなり過ぎてしまうと、眠りの質が低下してしまうことも分かっています。

*令和元年「国民健康・栄養調査」

休日の「寝だめ」は逆効果

 平日に仕事や夜更かしで睡眠不足になり、その睡眠不足を解消しようと休日に長く寝てしまういわゆる「寝だめ」は、ガイドでも健康への悪影響が指摘されています。平日に慢性的な睡眠不足が生じていることと、平日と休日とで就寝・起床の時刻が大きく異なって体内時計にずれが生じることで、肥満や糖尿病などの生活習慣病、脳血管障害や心血管系疾患、うつ病などのさまざまな発症リスクを高めることが報告されています。休日のたびに寝だめをしてしまう場合、それは平日の睡眠が不足しているサインです。平日でも十分な睡眠が確保できるよう、睡眠習慣を見直すことが大切です。

睡眠の「質」=睡眠休養感

 睡眠によって心身の休養がとれている感覚を、睡眠休養感といいます。睡眠時間が睡眠の「量」を反映する指標であるとするならば、睡眠休養感は睡眠の「質」を反映する指標です。ガイドでも、良い睡眠には“量”=睡眠時間と、“質”=睡眠休養感の両方を十分に確保することが重要とされています。
 この睡眠休養感は、睡眠時間の不足だけでなく、睡眠環境や生活習慣、日常的に摂取している嗜好しこう品、睡眠障害の有無など、さまざまな要因の影響を受けます。また、睡眠休養感は心の健康にも大きく関わっていて、睡眠休養感が低い人ほど、抑うつの度合いが強いことなどが分かっています。

睡眠・休養の参考情報

 ガイドでは、睡眠環境、運動や食事等の生活習慣、嗜好品などが睡眠に及ぼす影響などを参考情報として触れています。その中から主なものを以下にまとめましたので、質・量ともに十分な睡眠・休養を確保するために一つでも多く取り組みましょう。

■良質な睡眠環境

・光の環境づくり

 起床してすぐに日光を浴びることで体内時計が調節されて、日中に日光を浴びることで就寝時の速やかな入眠につながることが知られています。一方で、就寝前はスマートフォンやタブレット端末等のブルーライトを含む強い光がなるべく目に入らないようにし、寝室もできるだけ照明を暗くすると質の良い睡眠につながります。

・温度の環境づくり

 寝室は、暑過ぎず寒過ぎない適度な温度を維持できれば理想的です。特に夏場はエアコンなどを用いて涼しさを維持することが重要です。一方、冬は就寝前からできるだけ暖かい環境で過ごし、就寝時には十分に寝具を用いて寝床内を暖かく維持するように心掛けることが大切です。また、就寝の約1~2時間ほど前に少しぬるめのお湯にゆっくり漬かって体を温めることで、血行が良くなるとともに寝付きも良く、睡眠も深くなります。

・音や寝衣などの環境づくり

 できる限り静かな睡眠環境を確保しましょう。また、着心地が良くリラックスできる寝衣や布団、自分の体に合った枕などを選ぶことが大切です。

運動や食事等の生活習慣

・適度な運動習慣を身に付ける

 適度な運動習慣によって日中にしっかり体を動かすことで、良質な睡眠の確保につながります。特にウォーキングやジョギングなどの有酸素運動は寝付きを良くし、睡眠の質・量共に向上させて、睡眠休養感も高めることができると報告されています。また、ダンベルなどを用いた筋トレも睡眠の改善に効果があるといわれています。息が弾み汗をかく程度に1日60分ほど体を動かすことができれば理想的ですが、60分未満でも定期的な運動習慣を確立することから始めましょう。

・しっかり朝食を取る

 朝食は、起床後すぐに日光を浴びることと同様に体内時計の調整に役立ちます。反対に朝食を抜いてしまうと、睡眠不足や睡眠休養感の低下につながることが分かっています。また、就寝直前の夜食や間食の過剰摂取は糖尿病や肥満をもたらし、閉塞(へいそく)性睡眠時無呼吸症候群の発症リスクを高めます。朝食はしっかりと取り、夜食は控えるように心掛けましょう。

・就寝前のリラックス

 リラックスして脳の興奮を鎮めることも大切です。就寝前の少なくとも1時間は家事や仕事などに追われずにストレスのない時間を確保できると理想的です。読書や音楽鑑賞、ストレッチ、アロマなど、自分に合ったリラックス方法を見つけて実践しましょう。

・日中と夜間のメリハリ

 頻繁に夜更かしをしていたり、就寝・起床時刻や食事のタイミングが不規則だったりと、生活習慣が乱れていることで睡眠不足や日中の眠気、体内時計の乱れを招き、長期的にはうつ病などの精神疾患のリスクも高めます。規則正しい生活習慣を心掛け、日中は明るい環境でできるだけ活動的に過ごし、夜間はやや暗い環境で静かにゆったりとリラックスして過ごすなど、日中と夜間の過ごし方にメリハリをつけると良質な睡眠につながります。

■睡眠に影響を及ぼす嗜好品

・カフェイン

 覚醒作用のあるカフェインは、コーヒー、紅茶、緑茶、ウーロン茶、コーラタイプの飲料、エナジードリンク、一部の清涼飲料水などに含まれています。摂取し過ぎると寝付きの悪化や眠りの質の低下につながります。摂取量は1日400㎎(コーヒー約4杯分)を超えないようにしましょう。特に夕方以降の摂取は夜間の睡眠により強く影響しやすいため、摂取量にかかわらず控えめにしましょう。また、子供や高齢者はカフェインの摂取量をさらに減らしましょう。

・アルコール

 アルコールは一時的に寝付きを促進させることがありますが、一方で睡眠後半の眠りの質を顕著に悪化させることが分かっています。晩酌は控えめにし、眠るためにお酒を飲むこと(寝酒)はしないようにしましょう。

・ニコチン

 喫煙している方は、一日も早く禁煙に取り組みましょう。タバコは人体に有害ですが、睡眠という観点においてもそれは共通です。タバコに含まれるニコチンには覚醒作用があり、特に夕方や睡眠前の喫煙は寝付きの悪化や中途覚醒の増加、睡眠効率の低下などをもたらすことが分かっています。また、習慣的にニコチンを摂取している方は、非喫煙者と比較して入眠困難、中途覚醒の傾向が強く、睡眠時間が減少し、睡眠自体が浅くなりやすく、日中の眠気も強くなることが報告されています。

最後に

 ガイドでも成人の適正な睡眠時間が約6~8時間とされていることから、1日24時間のうち約1/4~1/3は眠って過ごすことになります。それほどまでに睡眠は健康増進・維持に不可欠な休養活動なのです。これからの毎日を元気に過ごすためにも、良い睡眠を得るために自分自身の睡眠を見つめ直し、できることから一つでも多く取り組みましょう。

原稿・社会保険研究所ⓒ

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