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自分を高めるためのストレス活用テクニック~ティーペック健康ニュース

 「ストレスは絶対に悪いもの、まったくない方がいい」と思っていませんか。適度なストレスは、人間が生きていくために必要なものです。むしろ、ストレスをポジティブに捉え直すことで、成長や成功につなげられると考えられます。ストレスを活用して成長につなげるヒントをお伝えします。

ストレスとネガティブな経験の中には肯定的な意味がある

 ストレスにマイナスな面があるのは事実ですが、それを乗り越え、活用すれば成長がもたらされるというプラス面があることも明らかです。

 親しい人との死別やがんの告知、災害などのネガティブな経験をした人々を対象にした研究があります。その研究によれば、このような強いストレスが生じる経験に遭遇した人々から、

自己認識の変化:より強くなり、自信を感じるようになった など

対人関係の変化:家族関係の深まりや人間関係にうまく対応できるようになった、自己開示をするようになった など

人生観の変化 :感謝の気持ちが生まれるようになった、自分が生きていることを当たり前と思わなくなった、人生をより楽しむようになった など

自分の成長を経験したという、ストレスに対する肯定的な評価を聞くことができるのです。

ストレッサーとストレス
 ストレッサー(ストレス源)とは、ストレスをもたらすものです。
ストレッサーは個人が経験している外的刺激や状況に対し、その個人がネガティブに評価(不快など)するものです。ストレッサーには、物理的(温度、光、音 など)、化学的(公害物質、薬物、酸素欠乏 など)、社会的(経済問題、人間関係や仕事、家庭問題 など)、心理的(不安、緊張、いら立ち など)なものがあります。
 ストレスは、ストレッサーに対する体や心の反応です。
不快な刺激に反応する細胞などからの情報により、大脳辺縁系の篇桃体へんとうたいで感じ取られるといわれ、3つの基本的なタイプ、生理的・社会的・心理的ストレスに分類されます。過度なストレスは病気を引き起こす可能性がありますが、適度なストレスは、意欲をかき立てたり活力をもたらしたりします。
 生理的な反応としては、ストレスによってアドレナリンやドーパミンなどのホルモンの分泌が盛んになり、それらが脳と体を活性化させ、注意力を高めて意識を集中させます。
ストレスをどのように活用して成長につなげるのか

 生理的ストレスは、それを生じさせている目に見える現象や物質である物理的・化学的ストレッサーを避けるという対処法が有効といえますが、目に見えない社会的・心理的ストレッサーによるストレスは、ストレッサーを避けてもストレスが減退するとは限りません。むしろ、避けようとするほど、深刻化するケースもあります。例えば、自ら目標にした入学試験や資格試験という社会的ストレッサーから逃げて勉強を放棄すれば、ストレスはかえって大きくなるかもしれません。仕事上の目標達成にストレスを感じて目標に向き合わないなら、いつまでも達成できないだけでなく、責任感からくる過度のストレスで体調を崩してしまうかもしれません。

 社会的・心理的ストレッサーによるストレスから逃れたいと感じるときは、ストレスに向き合わなければ自分は成長しないかもしれないと思い直し、逆にこのストレスを活用してやろうというくらいの発想の転換が必要なときもあります。

 ストレスに関する数多くの研究の中から、最大公約数的で有効と見られるストレス活用法を抽出するなら、次のようになります。

ストレスに対する見方を変える

 ストレスにはポジティブな要素があると心底から認識することです。例えば、「幸せだと感じている人ほどストレスが多く、不幸だと感じている人ほどストレスが少ない」という、ストレス・パラドックスという考え方があります。人生の重要な目標に突き進んでいるときほど、さまざまなハードルを乗り越えていくために多くのストレスと向き合わざるを得なくなるものです。そのことから、ストレスを感じているときほど、目標に向かっている充実感や幸福感が大きいという見方ができます。逆に、不幸だと感じている人ほどストレスがないというのは、ストレスを避けることに心を奪われていくうちに、自分の目標や目的、役割を見失い、人生の目標を捨てたと同様の結果となり、もともとストレスがなかったとしても不幸な状態にあると見ることもできます。

 ストレス・パラドックスを裏付ける調査報告があります。アメリカで3万人を対象として1998年から8年間、「ストレスに対する認識」と「寿命」の関係を調べた研究です。結論は、「ストレスは健康に悪い」との認識を持つ人々は死亡リスクが高く、「ストレスは健康に悪くない(健康に良い)」との認識を持つ人々の死亡リスクは低く、むしろ「健康的で生き生きとした生活を営んでいた」そうです。

ストレスに名前を付けて認識し、対策する

 ストレスを見える化することでも対策になります。その一つとして、「ストレスに名前を付けるだけで、脳内の反応領域が、自動的・受動的な部位(篇桃体)から、より意識的・意図的な部位(前頭前皮質)に移動する」という報告があります。これは、篇桃体で情緒的にしか感じていなかったストレスが、名前を付けられることによって意識下に置かれて思考の対象になることを意味しています。

 例えば、出社して仕事を始めたのに、なぜかイライラして集中できないとき、イライラの原因に思いを巡らせて名前を付けます。「上司が不機嫌そうな顔をしているのがストレス」「時間までに書類がそろえられないかもしれない不安のストレス」「嫌いな〇〇さんと仕事の話をしないといけないストレス」といった具合です。

 問題を見える化して対策を講じるというのは、ビジネスやプロジェクトマネジメントの手法としてもよく使われます。ストレスへの対処法も同様です。名前を付けることで見える化し、ストレスが発生している事実を受け入れ、原因を考え、克服するための対策を取っていけば良いわけです。ビジネスやプロジェクトマネジメントにおいて、問題や課題の発生が成功への道しるべのようなものとして理解されているように、人生の大小の目標に向かう途中で生じるストレスも大いなる幸福への道しるべのように捉えてみるとよいのかもしれません。

最後に

 すべてのストレスが良いもの、人を成長させるというわけではありません。しかし、人生にはどうしても避けては進めないハードルもあります。ハードルを前にして、越えられないというストレスで途方に暮れることもあるかもしれません。そんなとき、ストレスの肯定的な側面に光を当てて、自分を成長させるストレスとして活用するという視点に立つことができれば、誰でも生き生きと生活していける道が(ひら)けるのではないでしょうか。

原稿・社会保険研究所ⓒ

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