健康ニュース
2023.07.24
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痛風以外も怖い高尿酸血症 ~ティーペック健康ニュース
尿酸は血液中に含まれる老廃物の一つです。血液中に尿酸が増えると高尿酸血症となり、激しい痛みを伴う痛風の原因になることが知られています。さらに、高尿酸血症は痛風以外に動脈硬化を進行させて致命的な病気を発症するリスクを高めます。
産生と排泄のバランスが崩れると高尿酸血症に
尿酸とは、細胞に含まれるプリン体が分解されて生じる老廃物です。プリン体は細胞の核にあるDNAやRNAを構成しており、動物だけでなく植物であっても、細胞からできているものはすべてプリン体を持っています。プリン体は食事で体内に取り込まれるだけでなく、人間の体の古くなった細胞が新陳代謝で分解されるときや激しい運動でエネルギーを消費する際にも生成されます。体内のプリン体は肝臓に運ばれ、酵素の力で分解されて尿酸が生成されます。
血液中に溶けた尿酸は腎臓に運ばれて尿として排泄されるほか、一部は腸からも排泄され、体内の尿酸が多くなり過ぎないように調整されています。尿酸は老廃物ですが、適量であれば抗酸化物質として“体のさび止め“のような役割を果たすとされています。しかし、産生された量と排泄される量のバランスが崩れると、尿酸が体内にどんどんたまり高尿酸血症となってさまざまな病気の原因になります。
血液に含まれる尿酸が7mg/dl以上になると高尿酸血症と診断されます。7mg/dl以上で腎障害・尿路結石・高血圧・糖尿病などの合併症を伴う場合は、早期に治療が必要です。
高尿酸血症が原因となる代表的な病気
高尿酸血症になると、血液に溶けきれなくなった尿酸が体内で塊になって結晶をつくり出してしまうことで激痛を伴う痛風や尿路結石を発症するほか、腎機能を損ない慢性腎臓病を引き起こします。
●痛風
尿酸が関節にたまって結晶となり、炎症を起こして激痛を招く痛風を発症します。痛風の発作は足の親指の付け根や足首の関節に起こることが多く、赤く腫れ上がり激痛で歩けなくなります。かつては“ぜいたく病”といわれていましたが、痛風の患者数は食生活の欧米化などにより年々増えており、50歳代だった発症年齢のピークが近年は30歳代に移ってきています。
●尿路結石
尿の中で尿酸の結晶ができやすくなり、石のような小さな塊が腎臓から尿管の間にできてしまいます。塊が細い尿の通り道をふさいでしまうことで、背中や脇腹、腰の辺りの激痛に悩まされます。痛みに伴って吐き気を感じることがあるほか、結石が尿路を通ることで尿中に血液が混じる血尿になる場合もあります。さらに腎臓に細菌感染が起こり、発熱して重症化することがあります。
●慢性腎臓病(CKD)
腎臓に尿酸の結晶が沈着したり、尿酸が腎臓の血管にダメージを与えたりすることで腎機能が低下し、慢性腎臓病になりやすくなります。腎機能が低下すると尿がつくれなくなり、体内の水分や老廃物の調整ができなくなるため、さまざまな体の不調が現れます。重症化して腎臓の機能が失われる腎不全になった場合は、人工透析が必要となります。
高尿酸血症は致命的な病気の発症リスクに
高尿酸血症は痛風や尿路結石などの原因になるだけでなく、糖尿病や高血圧、脂質異常症を合併しやすく動脈硬化を促進させて、脳梗塞や脳出血、心筋梗塞や狭心症など致命的な病気を発症するリスクを高めます。たとえ、痛風や尿路結石などを起こしていなくても高尿酸血症は放置せず、生活習慣を改善して尿酸値が低くなるように心掛けましょう。痛風や尿路結石などの治療が終わった後も尿酸値コントロールを継続することが必要です。
生活習慣の改善で尿酸値を下げる
尿酸値は肥満の人ほど高くなることから、尿酸値を下げるために減量に取り組みましょう。プリン体は肉や魚など動物性食品に多く含まれており、特に内臓部分に多く含まれています。プリン体を多く含む食品を控えカロリーの取り過ぎに注意し、バランスの良い食事を心掛けることが大事です。
お酒の中では特にビールにプリン体が比較的多く含まれていますが、どの種類のお酒でも飲み過ぎると尿酸値を上昇させます。お酒のおつまみにはプリン体の含有量の多い食品もあるため、おつまみの食べ過ぎにも注意が必要です。1日の適量である日本酒なら1合、ビールならロング缶500mlで1本程度までにして、休肝日を週に1日以上は設けましょう。
肥満解消のために運動で体を動かすこともお勧めです。ただし、激しい運動(無酸素運動)は尿酸値を上昇させるので、無理のない範囲の適度な運動にとどめてください。また、運動で汗をかいたままだと血液が濃くなって尿酸値が上昇する要因になります。十分な水分補給を忘れずに。
プリン体の含有量が多い食品(100g当たり)
極めて多い(300mg以上) | 鶏レバー、干物(まいわし)、白子(いさき、ふぐ、たら)、あんこう(肝酒蒸し)、たちうお、しらす干し、にぼしなど |
多い(200mg~300mg未満) | 豚レバー、牛レバー、かつお、まいわし、大正えび、おきあみ、干物(まあじ、さんま) など |
中程度(100mg~200mg未満) | 豚肉、牛肉、鶏肉、多くの魚、いか、たこ、貝類(あさり、はまぐり、かきなど)、サラミ、納豆、ほうれんそう(芽)など |
最後に
明治時代より前は日本には痛風患者はいなかったといわれています。しかし、食生活の欧米化で肉類など動物性食品をたくさん食べるようになり、生活習慣の変化で肥満とメタボリックシンドロームが急増したことで、現在は国内に痛風患者が100万人以上いるとされています。
痛風や尿路結石で突然の激痛に悩まされる事態になる前に、高尿酸血症にならないように生活を改善していきましょう。