健康ニュース
2023.03.20
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新たな国民病CKDとは ~ティーペック健康ニュース
日本国内の患者数は1,330万人と推測され、新たな国民病となりつつあるCKDという病気をご存じでしょうか。CKD(Chronic Kidney Disease)は慢性腎臓病のこと。進行すると腎臓の機能が失われ多額の医療費がかかる人工透析が必要となります。CKDの基礎知識と予防に向けた取り組みについて解説します。
腎臓は体内の老廃物を尿にして排せつする大切な臓器
腎臓はソラマメのような形をした臓器で腰の辺りに左右一つずつあり、大きさは握りこぶし程度のサイズです。腎臓の中には毛細血管が集まった「糸球体」と呼ばれる組織が約100万個もあり、そこで血液をろ過して尿を作っています。腎臓には大きく2つの働きがあり、体内で生じた血液中の老廃物や過剰な塩分を尿として排せつする働きと、体内の水分量や血液中の成分を調節し血圧など体の状態を一定に保つ働きがあります。その他に骨の代謝、造血機能の調節などにも関わっています。
腎臓の機能が低下すると、尿の量が異常に増えて夜間に何度もトイレのために目が覚めたり、余分な水分を排出できなくなることで足を中心に体にむくみが生じたりします。また、排出できない老廃物の影響で全身にだるさが生じるほか、高血圧、貧血、骨がもろくなるなど、さまざまな症状が表れます。腎機能の低下がさらに著しく進むと腎不全になることで腎臓の機能が失われ、最終的には人工透析や腎臓移植が必要になります。
腎障害または腎機能の低下が3ヵ月以上続くとCKD
CKDは実は1つの病気の名称ではありません。さまざまな病気の結果として腎臓に障害が起きたり、腎機能が低下した状態が3ヵ月以上継続する病態の総称がCKDです。例えば糖尿病では、高血糖状態が長期間続くことで腎臓の毛細血管が障害を受ける「糖尿病性腎症」になり、腎臓の機能の低下でCKDになります。高血圧では、血圧が高い状態が長期間続くことで動脈硬化が進み、腎臓の毛細血管の流れが悪くなることで血液のろ過ができなくなる「腎硬化症」となり、CKDに進行します。糖尿病や高血圧、脂質異常症などの生活習慣病が重複しているメタボリックシンドロームの場合は、特にCKDのリスクが高く危険です。
CKDを放置すると、腎機能の低下で最終的に腎不全になる危険性があるだけでなく、脳卒中や心筋梗塞などの重大な病気を発症するリスクが高まります。CKDを早期の段階で発見し、それ以上進行させないようにすることができれば、腎臓だけでなく心臓や脳を守ることにもつながります。
健診で腎臓の異常を早期発見
腎機能はかなり低下しないと症状を自覚しにくいといわれています。このため、健診をきちんと受けて異常を早期発見することが重要です。健診には腎臓の機能を調べる検査が含まれていますので、毎年必ず受診しましょう。健診で行われる腎臓の検査としては尿検査と採血による血液検査があります。健診の結果で異常があり、腎臓の障害や腎機能の低下が明らかな状態が3ヵ月以上続くとCKDと判定されます。
尿検査では尿の中に必要以上にたんぱく質が含まれていないかを確認します。尿に含まれるたんぱく質は腎臓で再吸収されて血液中に戻されますが、腎臓に障害があると尿からたんぱく質を再吸収できず、たんぱく質が流れ出してしまいます。激しい運動を行った際に一時的に尿にたんぱく質が出ることはありますが、長期にわたり尿にたんぱく質が流れ出ている場合は重大な腎障害の可能性があるため、超音波検査やCT検査で画像を撮影して異常がないかを確認したり、腎臓の組織を採取して調べる腎生検を行ったりして、腎臓の状態を詳しく調べます。
血液検査では血液中のクレアチニンという物質の量を調べます。クレアチニンは筋肉で作られる老廃物の1つで、腎臓の糸球体のろ過機能によって排せつされます。もしも血液中にクレアチニンが増加していた場合、それは糸球体の機能が低下していることを意味します。糸球体のろ過量(GFR)を正確に調べるには通常の検査では難しいため、一般的には血清クレアチニン値、年齢、性別から推定した数値である推算糸球体ろ過量(eGFR)が用いられます。推算糸球体ろ過量が60ml/分/1.73㎡未満の状態になると腎機能の低下が疑われる状態になり、15ml/分/1.73㎡未満になると人工透析が必要になります。
CKD予防のための生活習慣改善ポイント
近年は生活習慣病の結果としてCKDに至る事例が多くなっていることから、生活習慣病の発症と重症化を予防することがCKDの予防では重要です。食生活の見直しと適度な運動で肥満を解消して、糖尿病や高血圧、脂質異常症などの生活習慣病を悪化させないようにしましょう。タバコを吸う人はぜひ禁煙してください。
食生活では特に減塩が重要です。塩分は高血圧を悪化させて腎臓に負担をかけるため、できるだけ減塩を。1日当たりの食塩の摂取量は6g未満が推奨されています。しょうゆなどの調味料だけでなく、ハムやかまぼこなど練り製品には多くの塩分が含まれていることに注意しましょう。
最後に
毎年3月の第2木曜日は「世界腎臓デー」に定められています。この機会に大切な臓器である腎臓について考えてみてはいかがでしょうか。CKDの場合、症状を自覚できたときには、病気がかなり進行していることが少なくありません。毎年の健診で腎機能の異常をチェックし、異常を指摘されたときには必ず精密検査を受けましょう。