健康ニュース
2018.01.10
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禁煙で職場のメンタルヘルスも改善 ~ティーペック健康ニュース
たばこはよく「万病の元」「百害あって一利なし」ともいわれます。「ストレス解消には役立っているから一利はある」などと言う喫煙者もいますが、近年のさまざまな調査や研究で、喫煙はストレスを解消するどころか逆に増加させ、うつ病や不安障害など、精神疾患にかかるリスクを高めることが分かってきました。たばこは正真正銘「一利なし」であり、体だけでなく、心の健康へも大きな被害をもたらしているのです。
ストレス解消どころかストレッサーとなるたばこ。心身ともに健やかに、仕事で十分に実力を発揮するために、また、自らが職場の人のストレッサーとならないためにも、たばこを吸う人は禁煙の重要性についてさらに認識を深めましょう。
うつ病の人の喫煙率が2~3倍に
喫煙は、さまざまながんや脳卒中、心筋梗塞、糖尿病や高血圧、動脈硬化などの生活習慣病をはじめ、COPD(慢性閉塞性肺疾患)、肺炎、胃潰瘍、骨粗しょう症、歯周病、認知症など、全身の病気のリスクを高めることが分かっています。こうした喫煙による病気の発症は以前から広く知られていましたが、これまでメンタルヘルスとの関係はあまり注目されてきませんでした。
しかし、近年、国内外で発表された複数の調査により、うつ病の人の喫煙率がうつ病のない人に対して2~3倍に上ることが明らかになってきました。たばこの吸い過ぎがうつ病の引き金になるケースや、抑うつ気味の気分をすっきりさせるためにたばこを吸っているといった可能性が考えられます。もし、1日の喫煙の本数が急に増えてきたような場合、抑うつ気味な傾向になっていないか、十分注意する必要があります。
たばこによるストレスを、たばこで解消するという悪循環
たばこを吸う人に禁煙を勧めても、「たばこでストレスを解消しているから禁煙なんて無理」という答えが返ってくることが少なくありません。たばこを吸わない人でも、喫煙はストレスを減らす行為と捉えていることも依然として多いようです。
このように「たばこ=ストレスが解消」と思われてきた背景には、たばこに含まれる有害物質の一つであるニコチンが関係しています。ニコチンの作用で脳からドーパミンが放出され、一時的に快感が得られるためです。たばこを吸った後、一時的にある程度頭がはっきりしたり、倦怠感が取れる気がしたりするのは、ニコチンが脳を刺激した結果です。しかし、脳内に作用する物質には通常、依存症のリスクがあるものです。ニコチンの作用が切れると、集中できない、イライラしやすくなるといった心身の不調が起こってきます。さらに長期的にたばこを吸っていると、たばこで気分が落ち着いているのではなく、たばこがないと気分が落ち着かない体になってしまいます。たばこが原因のストレスをたばこで解消するという、負のスパイラルを止められなくなってしまうのがニコチン依存といわれる状態なのです。
また、「禁煙するとストレスがたまる」と言う喫煙者もいますが、それは禁煙に挫折してたばこを吸い出してしまった人の感想です。喫煙に関する調査によると、実際に禁煙に成功した人たちの多くはメンタルヘルスの面で改善され、うつ病のリスクもたばこを吸わない人と同じレベルまで下がることが明らかになっています。
たばこを吸わない人のストレスを知ろう
近年、受動喫煙による健康被害の大きさがクローズアップされていますが、周囲に喫煙者がいることはたばこを吸わない人にとってメンタルヘルスにも影響します。それは目に見える煙だけではなく、たばこを吸う人の呼気や衣類から発せられる臭いや、勤務中に喫煙のために離席して仕事を滞らせることに対する不満など、言葉にしなくとも毎日の積み重ねの中でストレスが蓄積してしまうからです。
喫煙所を設けて分煙にしている企業に勤務する人では、たばこを吸う人は「ルールを守ってさえいれば大丈夫」と考えてしまいがちです。しかし、たばこを吸わない人のメンタルヘルスまで考えた場合、企業にとって社内の全面禁煙が最も望ましい選択といえるでしょう。同時にたばこを吸う人への支援も不可欠であり、禁煙に向けたサポートプランを充実させていく必要があります。
欧米で流行している加熱式たばこが、日本でも急速に広がっています。加熱式たばこは、乾燥葉や液体を電熱線の発熱によって霧状にして吸うものです。通常のたばこのように煙ではなく蒸気を吸うことから、副流煙がなく周囲に気兼ねなく吸えることが人気の理由のようです。また、タールやニコチン、一酸化炭素が削減されているため、体へのリスクも通常のたばこより少ないとされています。
しかし、加熱式たばこの健康への影響はまだデータに乏しく、きちんとした研究結果が出そろっているとはいえない状況です。ブームに乗って安易に手を出すよりも、ヘビースモーカーの人は医療機関の「禁煙外来」を受診したり、会社や健保組合などが実施している場合はその禁煙プログラムを利用するなど、前向きなアクションとして禁煙に取り組んでみてはいかがでしょうか。