健康ニュース
2016.09.10
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シックデイ(糖尿病)を知っていますか? ~ティーペック健康ニュース
患者数が増加している糖尿病は、予備群も含めると日本人の5人に1人の割合と推定され、とても身近な病気と言えます。最近は中高年だけでなく20代、30代などの若い世代でも糖尿病にかかる人が増えてきました。自分や家族も含め、誰もがいつ発症してもおかしくなく、また、今後は糖尿病の治療をしながら働く人も多くなると思われます。
糖尿病になっても家庭や職場で安心して過ごすためには、患者本人だけでなく周囲の人たちの病気に対する理解が不可欠です。とはいえ、一般的には糖尿病について、血糖値が高くなるくらいの知識はあっても、具体的な症状をあまり知らない人が多いのではないでしょうか。
そこで今回ぜひ知っていただきたいのが、糖尿病の人が日常生活を送る上で十分に注意しなければならない「シックデイ」です。この特別な日を乗り切る方法を知ることで、患者だけでなく周囲の人たちにとっても、共に暮らし、働き、生きていくことに役立ちます。
糖尿病の人にとって、シックデイは非常事態
糖尿病は、血糖値をコントロールするインスリンというホルモンの作用や分泌が低下して、血糖値が異常に高くなってしまう病気です。インスリンの分泌がほとんどない1型と、分泌量が少ない2型があり、約317万人と言われる日本人の糖尿病患者の95%が2型糖尿病です。
一度かかると、一生付き合っていかなければなりませんが、医師と相談しながら、きちんと治療しつつ血糖コントロールを行い、運動療法や食事療法などで日常生活を改善していけば、多くの人がほぼ普段どおりの生活を送ることができます。
しかし、そんな血糖コントロールがきちんとできている人でも、不意の病気にかかると血糖値が乱れやすくなり、急性合併症が起こりやすくなります。そのため、そのような状態を「シックデイ(病気の日)」と呼んで、糖尿病の療養生活上、特別な注意が必要な日と位置付けています。
どんな症状をシックデイと呼ぶの?
シックデイはただ体調が悪いときだけでなく、糖尿病の人が発熱、下痢、おう吐があったり、食事や水分を十分に取れない、また、骨折など大きな外傷があった場合などを言います。
「食事が取れないなら血糖値が下がるのでは」と思う人もいるでしょうが、一般的にシックデイは病気などのストレスが加わるため血糖値は上昇します。さらに発熱、下痢、おう吐や発汗が続くことで、脱水や高血糖も起こりやすくなってしまいます。
一方、薬物療法をしている人ではその反対に、食べる量が少ないにもかかわらずいつもどおりに薬を飲んだり注射をすると、低血糖が起きてしまう場合があります。いずれにしてもシックデイは血糖値が乱高下しやすく、早めに適切な対処をすることが大切です。
シックデイ・ルールを守って早めに対応を
シックデイは糖尿病の人にとっては非常事態ですが、適切な対応=シックデイ・ルールを守ることで短期間でうまく乗り切ることが可能です。
【シックデイ・ルール】
●早めに主治医と連絡を取る
糖尿病の人は他の病気に対応する力がもともと弱いので、ただのかぜでも重症化しやすいため、シックデイの症状がある場合は早めにかかりつけ医などに連絡し相談しましょう。水分や食事がまったく取れない、あるいは血糖コントロールができない場合は入院が必要な場合もあります。
●温かくして安静に過ごす
体力の消耗を防ぎ、回復を早めるために、仕事や家事は休み、温かくして安静を保ちましょう。
●水分補給は多めに
脱水症状を起こしやすくなるので、1日に最低でも1.5~2lを目標に多めに水分を取りましょう。ただし、甘い飲み物はさらに高血糖になるので注意が必要です。脱水かどうかの目安の一つに尿量があります。尿の回数や1回の量が少ないようであれば、脱水の可能性があります。
●食欲がなくても絶食しない
十分に食事が取れないときは、おかゆやうどんなど消化のよいものを少しでも小まめに食べましょう。
●小まめな血糖値の自己測定を
病状を小まめにチェックし、特に血糖値の自己測定は3~4時間ごとに行いましょう。
●インスリン投与量は必ず主治医に確認を
[1型糖尿病の人]継続して注射する。
[2型糖尿病の人]食事が取れないときは、主治医の指示の下でインスリンを減量もしくは中止。普段の半量以上食べられるときは通常量を注射する。
※自己判断で注射をやめず、血糖の測定値や症状を主治医に連絡し、適切な指示をもらいましょう。
以上のルールに加え、シックデイの対応は患者ごとに異なります。事前に主治医に相談し確認したものを、本人だけでなく家族など周囲の人も知っておきましょう。
怖い急性合併症「ケトアシドーシス」と「高浸透圧高血糖症候群」
ケトアシドーシス:インスリンが極度に不足すると、高血糖(300㎎/dl以上)のほか、血液中のケトン体(脂肪が分解されエネルギーになるときに出る物質)が増えて、血液が酸性化します。その状態が続くと、意識障害をきたし、重度の場合は昏睡状態に陥ります。1型糖尿病で起こることが多いですが、2型糖尿病でも清涼飲料水の飲み過ぎなどで急激な高血糖状態に陥り発症する「ペットボトル症候群」になることもあります。
<危険サイン>喉の渇き、多飲・多尿、悪寒、消化器症状(おう吐、腹痛)、体重減少、全身倦怠感
高浸透圧高血糖症候群:著しい高血糖(600㎎/dl以上)と激しい脱水により循環器不全を起こすと、高浸透圧高血糖症候群と呼ばれる危険な状態になることがあります。感染症や手術、薬剤投与などによって高血糖を起こした場合に発症しやすく、特に高齢者に多く昏睡に陥ることがあるため注意が必要です。
<危険サイン>時として倦怠感、喉の渇き、多飲・多尿
いつも元気ではつらつとしている人が、糖尿病だと聞いて驚くことがあります。日ごろから食事制限や運動、血糖値測定など、きちんと自己管理できている人だからこそ、周囲にそんな前向きな印象を与えるのでしょう。
しかし、ちょっとしたかぜなど、一般的には軽い病気でも、糖尿病の人とそうでない人とでは注意の重要性が違ってきます。糖尿病の人が少しでも体調が悪そうにしていたら、ゆっくり休むように声を掛けてあげたいものです。
<参考資料>
「平成26年患者調査の概況」「平成24年国民健康・栄養調査」 (厚生労働省) ほか