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ドライアイ対策は十分ですか ~ティーペック健康ニュース

 近ごろは、職場でのパソコン作業や家庭でのビデオ・DVD鑑賞などのほかに、携帯電話やスマートフォン、タブレット端末などの普及によって、通勤途中の電車の中や待ち合わせの短い時間にもディスプレイを凝視しがちで、気がついたら一日中目を酷使していたという人が増えていると考えられます。
 長時間、ディスプレイを凝視していると、まばたきの回数が減って目が乾燥しやすくなるため、ドライアイになる可能性が高くなります。ドライアイは、ほうっておくと角膜が傷つきやすくなり、そこから細菌が入り込んで感染したり、視力を低下させたりするおそれがあるので注意が必要です。

涙は「ムチン層」「水層」「油層」の3層構造

 目を覆っている涙の膜は、厚さがほぼ0.007mmで、3層構造をしています。眼球に直接接しているのは、粘着性のある「ムチン(粘液)層」で、涙が目から流れ落ちないようにとどめる働きをしています。その外側に、酸素や栄養素が多く含まれている「水(涙液)層」が乗っていて、涙全体の98%を占めています。いちばん外側を覆っているのが「油層」で、水層の蒸発を防ぐ働きをしています。
 まばたきをすることで、一瞬にしてこの3層構造の涙の膜が目の表面に絶妙なバランスで形成されます。そして、涙の膜のうち約1割は蒸発し、残りは涙道を通って鼻の奥へ排出されます。
 涙はこのようにして常に新鮮な状態に保たれ、次のような働きをしています。

  • 目の乾燥を防ぎ、潤いを保つ
  • 代謝物や目に入ったごみなどを洗い流す
  • 細菌などの病原菌への感染を防御する
  • 角膜へ酸素や栄養素を運ぶ
  • 凸凹のある目の表面を滑らかにする(表面が滑らかになると、光が正しく屈折して脳に届き、視界がきれいに見える)
ドライアイは病気。悪化すると感染症にも

 ドライアイとは、「涙の分泌量の減少」や「3層構造のバランスが崩れることによる涙の質の低下」などが原因で、目の表面が乾燥し角膜に障害が生じる病気です。涙の量や質を低下させる原因は、加齢、体質、睡眠不足、過度のストレス、降圧剤や精神安定剤などの薬剤の服用、喫煙などが主なものとされていましたが、近年はテレビやパソコンなどのディスプレイを凝視することによるまばたきの回数の減少や目の酷使、エアコンなどによる空気が乾燥した環境、なども挙げられています。
 ドライアイが疑われる症状には、(目が)疲れる、しょぼしょぼする、乾いた感じがする、かゆい、痛い、重い、充血する、ゴロゴロするなどの不快感や、涙が出る、目やにが出る、光を見るとまぶしい、かすんで見える、10秒以上目を開けていることができない、結膜炎などの目の感染症にかかりやすくなった、などがあります。
 ドライアイは悪化すると角膜が傷つきやすくなったり、細菌に感染しやすくなったりします。ドライアイとは別の病気が潜んでいることもありますので、気になる症状がある場合はまず眼科へ行き、専門医の診察を受けるようにしましょう。

意識的なまばたきや、適度な休憩を。ディスプレイの調整も重要

〔意識的なまばたき〕
集中してディスプレイを見続けたり、書類などの小さな文字を追ったり、車の運転を長時間継続したりしていると、ふだんは1分間に20回ぐらい行っているまばたきの回数が4分の1まで減少してしまうといわれています。意識的にまばたきを行うように心がけましょう。
〔適度な休憩〕
涙は副交感神経に支配されているため、リラックスしているときに分泌されやすく、緊張しているときなど交感神経が優位な場合は減少してしまいます。パソコン作業などで目を酷使しているときはこまめに休憩を入れて、目と体の緊張をほぐしましょう。目安としては、「1時間に10~15分程度の休憩」と「連続作業の間に小休止を2回ぐらい」。しっかりと目を閉じて休ませる、温かいタオルを目に当てる(冷たいタオルでもOK。どちらか気持ちよいと感じるほう)、などが効果的です。
〔ディスプレイの高さと明るさ〕
ディスプレイは、視線がやや「下向き」になる位置に設置します。こうすると涙が自然に目の表面を覆い、乾燥を防ぎます。目を開く幅が狭くなるため、涙の蒸発を減らすこともできます。また、明るすぎないほうが、文字のサイズは大きいほうが、目の負担は小さくなります。
〔ディスプレイとの距離〕
「目とディスプレイ」、「目と書類」の距離の差ができるだけ小さくなるように調整しましょう。距離が違う対象を交互に見る動きは、目の筋肉を必要以上に疲労させます。対象との距離を50cm以上離すと目の筋肉を緊張させすぎません。
〔ディスプレイへの映り込み〕
周囲の風景や窓からの光、照明などが映り込むとディスプレイが見にくくなってしまいます。そうなるとディスプレイをより凝視することになり、目と脳を酷使し、集中力の低下やストレスの増大などを招きます。できるだけ映り込みがないようにディスプレイを設置しましょう。反射を抑えるためのOAフィルターを使用したり、窓にブラインドやカーテンを設置したりして、映り込みを最小限に抑えるよう工夫しましょう。
〔湿度の調節〕
室内が乾燥していると目の表面の涙が蒸発しやすくなり、潤いがなくなります。加湿器などを使用して湿度の調節をしましょう。湿度の目安は40~65%です。
〔エアコンの風対策〕
エアコンの送風口から吹き出る風が直接顔に当たると目が乾きやすくなります。風に当たらない場所に移動しましょう。
〔人工涙液の利用〕
目の乾きが気になる場合は、防腐剤の入っていない人工涙液(涙の大部分を占める水層を補う目薬)を利用してもよいでしょう。
〔体調管理〕
十分な睡眠をとる、ストレスをためないなど、日ごろから体調を整えるよう心がけましょう。
〔照明の調整〕
目が疲れにくい明るさは300ルクスといわれています。パソコンを操作するときの手もとがそのくらいの明るさになるよう調整しましょう。細かい作業を行ったり書類を読んだりする際は、これより明るめのほうが目は疲れません。
〔タバコの煙対策〕
目がタバコの煙にさらされると、ドライアイを誘発するような障害が生じることがわかっています。喫煙は目の老化を促し、白内障や黄斑(おうはん)変性症を発症するリスクが高くなります。ドライアイ対策だけでなく目の健康のためにも、喫煙者は禁煙し、非喫煙者はタバコの煙をできるだけ避けるようにしたいものです。
〔コンタクトレンズ対策〕
めがねを併用するなど、コンタクトレンズの使用時間をできるだけ短くします。また、レンズに汚れや傷などがあると涙の量や質が低下しますので、正しい使い方と正しいケアを守りましょう。

 目を開ければ、自然に飛び込んでくる大量の視覚情報。これらをすべてシャットアウトすることは現代社会においては不可能かもしれません。「見る」という行為はふだん無意識に行っているだけに、「目を酷使している」ことを意識するのは意外と難しいのかもしれません。
 「目が疲れているのなら、少々休ませてあげれば十分」と軽く考えがちですが、気になる症状がある場合は早めに眼科に行き、専門医に診てもらうようにしましょう。「ドライアイは病気」ということを忘れないでください。

<参考資料>
『健康オフィスワーク 毎日元気に仕事をするための健康管理法』(監修/了徳寺大学健康科学部教授 医学博士 稲次潤子、制作/社会保険研究所)
『VDT作業における労働衛生管理のためのガイドライン』(厚生労働省) ほか

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