健康ニュース
2014.09.05
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デング熱に要注意! ~ティーペック健康ニュース
今般、熱帯や亜熱帯全域で流行しているデング熱が、海外渡航歴のない人に、国内感染したという症例が確認されています。これまで、海外の流行地で感染し帰国後に国内で発症する例(輸入症例)は、近年は年間約200例報告されていましたが、国内で感染した例は過去60年以上ありませんでした。
デング熱は、日本では感染症法の四類感染症に指定されており、全数報告対象となっています。デングウイルスに感染した患者を媒介蚊(日本ではヒトスジシマカ)が吸血することで、蚊の体内でウイルスが増殖し、さらにその蚊が他者を吸血するとウイルス感染者が増えていくという感染症です。世界中で25億人以上が感染するリスクがあり、毎年約5,000万~1億人の患者が発生しているとされ、日本国内での感染経路としては、輸入症例の患者から蚊を介して感染するものと考えられます。
デング熱とは、どのような病気か?
デング熱とは、ヒトスジシマカなどによって媒介されるデングウイルスの感染症です。フラビウイルス科フラビウイルス属に属し、4種の血清型が存在するこのデングウイルスに感染すると、デング熱という急性熱性感染症にかかり、どの型によっても同様の症状が出ます。
主な症状は発熱、頭痛、筋肉痛、関節痛、発しんなど。潜伏期間は2~15日で、発症すると1週間程度で体内からウイルスは消失し、それに伴い症状も消失します。予後は比較的良好で、感染後に発症しないことも多くみられます。ただし、ごくまれに発熱2~7日後、血しょう漏出に伴うショック症状と出血傾向を主な症状とする致死的病態(デング出血熱)が出現することがあります。
治療薬はあるか?
デング熱に特異的な治療法や有効な抗ウイルス薬はなく、輸血や鎮痛解熱剤の投与などの対症療法が主体となります。また、デングウイルスに対する実用化されたワクチンもないので、予防接種はありません。
そのため、流行地へでかける際は、媒介蚊に刺されないように注意することが重要となります。日中はヤブや木陰などに近づかない、長袖服・長ズボンを着用し、素足でのサンダル履き等は避ける、虫除け剤などを使用することが推奨されます。
ヒトスジシマカ以外からも感染する?
デング熱は蚊媒介性の感染症なので、ヒト(患者)からヒトへ直接感染、または空気感染することはありません。
媒介蚊には、国内では北海道と青森県を除く全国に分布しているヒトスジシマカのほかに、ネッタイシマカというウイルス媒介能が高い蚊がいますが、この分布北限は台湾の台中市周辺とされているため、国内には生息していません。このことから、国内での感染経路はヒトスジシマカのみと考えられます。
感染の疑いがある場合はどうすればいいか?
かかりつけの医療機関などを受診しましょう。また、感染拡大防止のためにも、発熱中はヒトスジシマカに刺されることのないように注意しましょう。
今後、国内でデング熱に感染する可能性は?
ヒトスジシマカは日本のほとんどの地域(青森県以南)に分布していますが、活動期間は5月中旬~10月下旬です。越冬中の卵を通じてデングウイルスが伝播した報告はないため、現在媒介中のウイルスは、冬には消滅すると考えられます。
現在、感染区域(都立代々木公園)の媒介蚊の駆除は終了しているとされていますが、ウイルス血症期の患者を他の区域の媒介蚊が吸血すれば、再び他者へウイルスを伝播する可能性もあるため、媒介蚊の活動期間が終わるまでは輸入症例を含め、患者がこれ以上媒介蚊に刺されることのないように注意することが重要です。
今回、感染が認められている患者はいずれも海外渡航歴がなく、都立代々木公園周辺を訪問していたことが確認されています。東京都は事態を深刻に受け止め、公園内での蚊の駆除や、発生を抑制するため噴水池の水抜きおよび集水マス清掃を実施していましたが、9月4日午後からは同公園を封鎖しています。報道等では隣接する明治神宮にいた蚊から感染した可能性も指摘され、感染の拡大が懸念されていますが、致死率や重症化する割合は高くないと言われていますので、パニックを起こさず正しい知識を身につけ、引き続き感染防止に努めましょう。
<参考資料>
『デング熱とは』(国立感染症研究所HP)
『デング熱に関するQ&A』(厚生労働省HP) ほか