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「老人性難聴」

監修:奈良県立医科大学
名誉教授 松永 喬

 誰もが年齢とともに耳の聞こえは悪くなっていきます。人生80年と言われる昨今、聞こえに不自由を感じ、コミュニケーションのトラブルから生活を楽しめなくなっている方もいらっしゃることでしょう。今月は「老人性難聴」を取り上げ、どのようにすれば生活への支障を小さくできるか考えてみたいと思います。

難聴の原因

耳は外側から「外耳」「中耳」「内耳」の3つの部分に分けられます。音は外耳道を通って、外耳と中耳の間にある鼓膜を振動させ、中耳にある耳小骨で増幅されます。それが内耳の感覚細胞で電気信号に変換され、聴覚神経によって脳に伝わり、音として認識されます。難聴は、この音の伝わる経路のいずれかが障害されて起こります。外耳から中耳の障害で生じるのが「伝音難聴」で、耳垢の詰まり、鼓膜の損傷、中耳炎などが原因となります。内耳から聴覚神経の障害で起きるのが「感音難聴」で、メニエール病、突発性難聴、聴神経腫瘍などがあります。また老化や騒音による感覚細胞の変性が原因の老人性難聴や騒音性難聴も含まれます。

老人性難聴

聴覚の老化は30代から始まると言われていますが、50~60歳代で聞こえが悪くなったと感じる方が多いようです。老人性難聴には以下のような特徴があります。

  • 気づかないうちに少しずつ進行し、自覚がないことが多い。
  • 両方の耳に起こる。
  • 髙い音が聞こえにくい。
  • 音としては聞こえるが、何を言っているのか明瞭に聞き取れない。例えば「魚(サカナ)」が「刀(カタナ)」に聞こえるなど、特に「カ行、サ行、ハ行」を含む言葉の聞き違いが多くなる。
  • 早口の人の話がわからない。
  • 周囲がうるさいと話がわからない。

あてはまる項目が多いと老人性難聴が疑われますので、耳鼻科を受診しましょう。

検査と評価

耳鼻科での問診や診察で老人性難聴が疑われる場合は「純音聴力検査」を実施します。125Hzの低い音から8000Hzの高い音まで7つの周波数の音がどの程度聞き取れるかをみるものです。また、言葉の聞き取りがどの程度障害されているか調べる「語音聴力検査」を行う場合もあります。これは「ア」「カ」「サ」などの語音をどの程度聞き取れるかを調べるものです。難聴の程度は、会話音域の聴力低下に応じて、正常、軽度難聴、中等度難聴、高度難聴、聾(ろう)の5段階に評価されます。老人性難聴では、高音域の聴力低下が顕著で、また純音聴力検査でみられる難聴の程度と比べ、語音の聞き取りが悪いという特徴があります。

補聴器

老人性難聴は加齢に伴う生理的なものですので、残念ながら、その進行を抑えたり回復させたりすることは難しいのです。適正な補聴器を使って聴力を補うことが有効な対処法になります。補聴器は聞こえにくさに慣れる前に使い始めたほうが、様々な音になじみやすいと言われています。

  1. 種類と特徴
    音を増幅するシステムの違いによりデジタルとアナログがあります。デジタルは、マイクから入った音をいったんデジタル信号に変換し、雑音やピーピーという異常音(ハウリング)を抑えるなどの加工を行うことができます。アナログではできなかった細かな調整が可能ですが、値段は高価です。最近はデジタルが主流となっていますが、難聴の程度や特徴によってはアナログで快適に聞くこともできます。 また、形状や装着方法で分類すると、箱型、耳かけ型、挿耳型に大別されます。
    • 箱型
      本体をポケットなどに入れて、コードの先端のイヤホンを耳の穴に入れるタイプのものです。本体が大きく操作が簡単で安価ですが、目立つことを気にする方も多いようです。(対象:高度難聴まで)
    • 耳かけ型
      本体部分が耳の後ろにくるようにして耳にかけ、先端のイヤホンをすっぽりと耳の穴に入れるタイプのものです。箱型に比べて目立たず、現在最も使用されています。電源やボリュームなどの操作つまみが小さいため扱いにくい場合があり、箱型より高価です。(対象:高度難聴まで)
    • 挿耳型
      耳の穴にすっぽりと収まる小さなタイプで目立ちません。特に小型のものはCICと呼ばれています。高価なものが多く、小型のため扱いやすさでは劣ります。(対象:CICは高度難聴まで、その他は中等度難聴まで)
  2. 購入時の注意点
    まず、耳鼻科を受診して処方箋を作成してもらい、それをもとに全国補聴器販売店協会に加入している専門店などで購入することをお勧めします。受診された病院で専門店を紹介してもらえる場合もあります。また、補聴器外来のある病院で作ることも可能です。
    補聴器は高価だからよいとは限らず、装着する本人の聴力に合ったものを選ぶことが大切で、自分で操作ができるかということも重要なポイントです。補聴器は眼鏡とは異なり、装着するとすぐに便利に使用できるというわけではありません。
    静かな環境から始め、徐々に雑音のある生活の様々な場面に広げて実際に使用してみて、音質や出力の調整を繰り返すことが必要になります。使いこなすまでには時間がかかりますので、すぐにあきらめず根気強く行いましょう。
  3. 公的な制度
    難聴の程度により身体障害者の適応に該当する場合には、購入費用の補助を受けられる場合もありますので、詳細は最寄の自治体の福祉課(福祉事務所)にお問合せください。

周囲の方が配慮すること

聞き取れた単語で会話全体の内容を推察しなければならないので、会話そのものが集中力や努力を要する行為であることをまず理解しましょう。具体的には以下のような点に配慮して対応されるとよいでしょう。

  • 静かな環境で話をする。
  • 近づいて声をかけ、話し手に注意が向いていることを確認してから本題に入る。
  • 低めのトーンでゆっくりと、言葉のまとまりを区切って話す。
  • 補聴器をつけていない人へは少し大きめの声で、つけている人には普通の声の大きさで話す。
  • 口の形や表情も重要な情報源になるため、明るい場所で正面から話すようにする。
  • 電話での会話は聞き取りにくいことが多いので、音量を上げたりファックスを利用したりする。

3月3日は耳の日です。耳で聞くことは、人と人との関わりの中では非常に重要な要素です。日本ではまだまだ、補聴器の普及率が低いのが現状ですが、年だからとあきらめずコミュニケーションを良好にする一助としていただければと思います。

<引用参考文献>
今日の耳鼻咽喉科頭頸部外科治療指針     医学書院
高齢者の体と病気シリーズ 耳鼻咽喉科の病気 日本医学館
補聴器フィッティングの考え方        診断と治療社
難聴高齢者サポートハンドブック       日本医療企画

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