健康ニュース
2005.09.12
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壮年性脱毛症(男性型脱毛症)~ティーペック健康ニュース
監修:東京メモリアルクリニック
名誉院長 平山 峻
20~50歳代の男性では、年代を問わず6割以上の人が、頭髪が薄くなることを心配していると言います(※1)。また実際に、うす毛の男性は1200万人を越えると推定する調査結果もあります(※2)。ただ薄毛、禿髪、脱毛というのはなかなか相談しにくく、人知れず悩んでいる方も多いと思います。今回はこの壮年性脱毛症を取り上げ、メカニズムや対処法についてご説明したいと思います。
毛髪の成長について
髪は頭皮の下にある毛根と脂腺直下幹細胞で作られます。特に毛根にある「毛母(もうぼ)細胞」は、「毛乳頭」から血液中の栄養や酸素、そして髪を伸ばす指令を受けとり、分裂をくり返しタンパク質を作り出すことで毛髪を作っていきます。幹細胞もまた同様です。
髪は発毛して抜けるまで、ヘアサイクルと言われる一定の周期で再生を繰り返しています。髪の毛が作られ成長していく「成長期(2~6年)」、成長が止まる「退行期(約3週間)」、毛根が完全に活動を休止する「休止期(約4~6ヶ月)」を経て、再び成長期をくり返します。その際、次に生えてくる髪に押し出されて、古い髪は抜け落ちます。毛髪は約14~15万本あると言われ、そのうちの約10~15%が休止期にあるため、1日80本程度の抜け毛は生理的な範囲と言えましょう。
壮年性脱毛の特徴とメカニズム
思春期以降に、遺伝的要素を持つ一部の男性に起こります。男性ホルモンの影響を大きく受ける前頭部から頭頂部のヘアサイクルが乱され(成長期が短くなる)、髪が十分に育たずうぶ毛状態になるため、頭皮が透けて見えるようになります。最終的には休止期から成長期に移行しない毛根も増え、毛髪量も少なくなっていきます。
ヘアサイクルを乱す原因は、男性ホルモンが毛乳頭の細胞内にある酵素により、DHTという強力な男性ホルモンに変化し、このDHTが毛乳頭細胞に働いて発毛を阻害するためと考えられています。遺伝的な要因を持つ人は、このDHTの影響をより強く受けます。また、脱毛の促進には「脂性(あぶらしょう)」や「フケ性」である事も関わってきます。皮脂やフケ、ほこりなどが毛穴を塞ぎ、細菌感染しやすくなり、炎症が起こると発毛が妨げられてしまうのです。
なお頻度は少ないですが、同様の脱毛は女性にも起こり(女性男性型脱毛)、中年女性の頭頂部を中心に髪が薄くなる特徴があります。女性にも少量ながら、男性ホルモンが分泌されるためと考えられていますが、詳しい原因はわかっていません。
治療
- 育毛剤 大きく分けて次の2つのタイプがあります。
- 発毛を促すタイプ「ミノキシジル」
血行をよくし、また毛乳頭を刺激し発毛を促します。元々は高血圧の治療薬ですので、高血圧や低血圧の人、心臓や腎臓に病気のある人は医師との相談が必要です。 - 頭皮の環境を整えるタイプ
血行促進、脂の除去、殺菌などの作用があります。
いずれも効果を期待するためには、半年くらい使い続ける必要があります。
- 発毛を促すタイプ「ミノキシジル」
- 内服薬「フィナステライド」
処方薬として近いうちに認可される見込みです。これは毛乳頭の細胞内にある酵素の働きを抑え、男性ホルモンからDHTへの変化を防ぎます。使用を続けると約6割の人に、脱毛の進行を抑えて発毛を促す効果が見られ、育毛剤に比べ効果はかなり高いと言われています。ただ約2%未満の人に、「性機能障害や性欲減退」などの副作用があります。なお女性には効果はなく、また妊婦への使用は禁止されています。 - 自家植毛
自分自身の後頭部の毛根を脱毛部に植える方法で、自費で行うことができます。
ケアのポイント
- 頭皮の清潔を保つ
1~2日に1回のシャンプーが基本ですが、フケ症を引き起こす「洗いすぎ」は禁物です。頭皮を指の腹でマッサージしながら、生え際から頭頂部にむかって洗います。シャンプー剤はフケ取り効果や脂を落とす効果の高いもの及び刺激性の少ないものを選び、充分にすすぎましょう。 - バランスのよい食事を心がける
アルコールや油もの、糖分、ナッツ類、コーヒー、香辛料などは皮脂腺からの分泌を高め、フケの悪化につながりますので、とり過ぎは禁物です。また髪はたんぱく質の一種である「ケラチン」で作られていますので、たんぱく質は積極的にとりたい食品です。海草は髪に良いと言われますが科学的根拠はありません。海草だけでなく野菜全般、特にビタミンB類(緑黄色野菜)や魚類をたっぷり摂ることが大事です。健康のためにも1日30品目摂取を目標にしましょう。 - 禁煙する
ニコチン吸収により血管収縮のため、血行を悪くする喫煙は、髪にとってもよくありません。 - ストレスをため込まない
自律神経系を乱し、血行を悪くさせます。
相談窓口
壮年型脱毛症は必ずしも治療が必要な「病気」ではありません。ただし頭皮の痒みや湿疹をともなったり、急激な脱毛などが起こった時は、皮膚科または毛髪専門医の受診が必要です。なお、従来は出来上がった毛根の数は増えないと考えられてきましたが、最近になり出生後でも増えるという報告があります。今後の新しい治療法の開発に期待したいものです。
※1 ライオン株式会社調べ (2003年)
※2 株式会社アデランス調べ(2004年)
<参考文献>
毛と爪のオフィスダーマトロジー 文光堂
毛髪疾患の最新治療/基礎と臨床(植毛) 金原出版株式会社