健康ニュース
2004.06.10
健康ニュース
金属アレルギー~ティーペック健康ニュース
監修:順天堂大学医学部附属順天堂医院総合診療科
小林 暁子
私達の生活に、金属は欠かせない物になっています。しかし、生活を豊かにしてくれるはずの金属が、思わぬアレルギーの原因になることがあるのです。汗をかきやすいこれからの季節は、アクセサリーなどによるかぶれを起こしやすくなりますし、最近では歯科の治療に使われた金属により、体の他の部位に症状が出るケースがあることもわかってきました。そこで今回は知らないうちに身近に潜む、金属アレルギーについて取り上げてみました。
1.金属アレルギーのしくみ
金属アレルギーは、金属が汗などの影響でイオン化して溶け出し、体内のたんぱく質と結合・変化しアレルゲン(原因となる物質)となることで生じます。本来体内にないものが存在するようになると、体の免疫細胞はそれを異物(=敵)とみなして排除するための準備をし、次にアレルゲンが侵入すると攻撃を加えるため、皮膚炎などの症状を起こすのです。一度この準備状態ができると、アレルゲンが接触するたびに反応を起こし、それが繰り返されると症状も強く出るようになります。金属アレルギーはアレルゲンが入ってから1日から数日で反応が起きる『遅延型アレルギー』に分類されますが、なかには数十年を経て突然発症するケースもあります。また、繰り返し金属と接触していてもまったく発症しない人もいます。ただし、このような個人差を生じる原因ははっきりとは解明されていません。
2.金属アレルギーのタイプおよび起こり得る症状
- 金属接触アレルギー(いわゆるカブレ)
直接皮膚や粘膜に触れる金属は汗などの影響を受け、溶け出して体内に入り、その後再び金属が触れた部分に、かゆみ、発赤、発疹、水疱、びらんなどを起こします。また慢性化すると皮膚が厚くごわごわし治り難くなります。なお、口腔内では、口内炎や歯肉炎などを起こすことがあります。 - 全身型金属アレルギー
食品に含まれる金属、薬、歯科金属などは、口腔粘膜や腸から吸収され、汗に濃縮されて全身から出ることとなり、その汗と接触した皮膚に症状を起こします。偽アトピー性皮膚炎(本当のアトピーと区別が難しい湿疹)、汗疱状湿疹(手掌や足底の小水疱)、扁平苔癬(四肢の扁平に隆起した発疹)、掌蹠膿疱症(手掌や足底の発赤や膿疱)などを起こすことがあります。
3.アレルギーを起こしやすい金属
アレルギーを起こしやすい主な金属は、ニッケル、コバルト、クロム、水銀です。なかでも、ニッケルはメッキとして、また合金製のアクセサリーなどにも多く使用されており、ピアス、イヤリング、ネックレス、腕時計、眼鏡のフレーム、下着の金具など注意が必要です。特にピアスは、金属が直接、長期間体液と触れる状態になるため体内に取り込まれやすくトラブルを起こしやすいものです。コバルトは、メッキ、セメント、粘土、塗料、顔料などに、クロムは、なめし革や染料などに、そして水銀は消毒剤や防腐剤などにも含まれます。また、ニッケル・コバルト・クロムの金属を共通して含む食品には、チョコレート、紅茶、ココア、香辛料、豆類、ナッツ類があります。歯科の金属では、上記の4つとパラジウムがおもに問題となりますが、合金の形で使用されるため、その組成を100%確認するのは難しい場合もあります。反対にアレルギーを起こしにくい金属としては、金、プラチナ、チタンなどがあげられます。
4.診断・検査
- 詳細な問診および視診
- パッチテスト: 金属試薬をつけたテープを背中や腕に48時間貼付し、48、72時間後、1週間後の皮膚の反応をみて、アレルゲンを特定します。
5.治療
- アレルゲンである金属を含む物との接触を避けることが原則です。食物の摂取制限や、歯科金属の除去(材質の変更)などが必要なケースもありますが、必ず医師と十分相談して下さい。
- 皮膚症状を抑える対症療法として、ステロイドの外用、抗アレルギー剤や抗ヒスタミン剤の内服、また発疹が全身に及ぶ場合には、ステロイドの内服が必要になることもあります。
6.予防
- アクセサリーなどはメッキの物をなるべく使わず、ピアスのようにアレルギーを起こしやすい物は、最初からチタンなどアレルギーの起きにくい材質を選ぶようにします。
- 下着や衣服の金具などが直接皮膚に触れないように工夫します。
- アクセサリーはなるべく長時間はつけず、汗をかいたらこまめにはずし、皮膚をよく洗うようにします。
- 歯科金属の溶出を進めないよう、歯磨きの励行、虫歯予防も大切です。(口腔内は唾液、食物、常在菌が出す酸などの影響や、咬合による磨耗など、金属が溶け出しやすい様々な要因をもつ環境にあります。)
7.おわりに
生活の中には、あらゆるところに金属が存在しています。治りの悪い皮膚炎などがある場合は、金属アレルギーの可能性も考えて、身につけている物や口の中などをチェックしてみてはいかがでしょうか。
<参考文献>
「アレルギーの臨床」2003年12月号 北隆館/ニューサイエンス社
「皮膚科診療プラクティス2:粘膜病変を診る」 文光堂
「きょうの健康」 2004年5月 NHK出版 他

