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過重労働による健康障害を防ぐために ~ティーペック健康ニュース

監修:日本医師会認定産業医
矢内 俊裕

1.はじめに

 現在、日本の経済・産業構造は大きな転換期を迎えています。経済のグローバル化や情報スピードの加速化、長引く不況での人員削減による過重な労働負荷等で労働者は強い心身のストレスにさらされているといえるでしょう。厚生労働省は労災補償に係わる新しい脳・心臓疾患の労災認定基準の基礎となった医学的検討結果を踏まえ、「過重労働による健康障害を防ぐために」というリーフレットを作成して過重労働による健康障害から身を守るための対策を示しています。その中で、過重労働による健康障害の防止のためには、健康管理の措置を実施し、時間外労働をできるだけ短くすることが重要と謳われています。今回はそのリーフレットの内容に基づき、過重労働から身を守るための対策についてまとめてみました。

2.「脳血管疾患及び虚血性心疾患等の認定基準」について

 1987年に出された労災補償に係わる「脳血管疾患及び虚血性心疾患の認定基準」では業務の過重性を評価する基準が具体的に明示されていませんでした。そこで2001年12月に厚生労働省は新認定基準を定めて通達を出しました。この通達により、疲労の蓄積をもたらす長期間の過重労働も、業務による明らかな過重負荷として新たに考慮されることになりました。これに伴い、業務による脳・心臓疾患の発症を防止するため、疲労回復のための十分な睡眠時間または休息時間が確保できないような過重労働を排除し、疲労が蓄積するおそれのある場合の健康管理対策の強化策が定められました。

3.健康障害予防のための対策

1.労働時間の短縮
過労死としての認定基準の改正では、疲労蓄積の最大要因である時間外労働時間の評価の目安を

①発症前1~6ヶ月間、月45時間以上では長いほどリスクが大きい
②発症前1ヶ月間に月100時間、2~6ヶ月間に80時間以上ではリスクが強い、としています。

そのために、時間外労働は月45時間以下に抑え、それを超える場合には産業医による保健指導や助言指導を受ける必要があると定めています。産業医がいない事業所では、地域産業保健センターで無料の産業保健サービスを受けることができます。また、サービス残業や持ち帰り残業をなくし、事業者は労働者の正確な労働時間を把握することが必要です。

2.年次有給休暇の取得の促進
事業者は年次有給休暇が取得しやすい職場環境作りに努める必要があります。有給休暇を取得し、心身の休養をはかることは健康障害の予防につながると共に、メンタルヘルスの面からみても休養は大切かつ重要なものです。

3.定期健康診断の実施の徹底
事業者は労働者に対し、1年以内に1回の定期検診、深夜業を含む業務に常時従事する労働者に対しては、6ヶ月以内に1回の特定業務従事者健康診断を実施することが義務づけられています。また、健康診断で何らかの所見が認められた人は適切な事後措置を受ける必要があります。健康診断を受けっぱなしでは本来の意味がありません。脳・血管疾患やその他の生活習慣病などの予防及び早期改善をはかるためには、受けた後の適切なフォローアップが大切です。

4.メンタルヘルス対策

 現在の日本では長引く不況による雇用不安や成果主義の人事評価など雇用を取り巻く状況が厳しくなり、強いストレスにさらされる人が増えています。最近は過労死だけでなく、過労自殺ということも問題になってきました。職場のメンタルヘルスの問題に対応するために、厚生労働省は「事業所における労働者の心の健康づくりのための指針」で心の健康保持増進のための施策を打ち出しています。その中では、

①セルフケア(労働者が自ら行うストレスの気づきと対処)
②ラインによるケア(管理監督者が行う職場環境等改善と相談への対応)
③事業場内産業保健スタッフ等によるケア(産業医等による専門的ケア)
④事業場外資源によるケア(事業場外の専門機関によるケア)

という4つのケアが掲げられています。職場の精神状態は本人だけでなく、職場全体の健康状態にも影響を及ぼします。本人が自分の心の不健康状態に気づき、早めに産業医へ相談することも大切ですが、周囲の人も「積極性がなくなる」「声が小さくなる」「遅刻や欠勤が目立つ」「人と目を合わせるのをさける」などの兆候が見られたら、速やかに声をかけ、相談にのることが大切でしょう。また、事業所も産業医やカウンセラーを配置するなどの、相談しやすいシステムや環境を整えることが必要でしょう。

5.おわりに

 日本で過労死が問題化してから20年が経過しています。しかもここ数年は長引く不況や雇用形態の変化、経済のグローバル化などで働く人を取り巻く環境はますます複雑・混迷化しています。そういった状況の中で心身共に健康でいられるためには、労働者と事業所が、積極的に意識改革をしていく必要があるでしょう。職場から過重・過大・無理な仕事をなくすためのチェック機構を整え、働く人自身も健康作りに積極的に取り組むことが求められています。また、過労気味の人がいれば、速やかに相談でき、適切な医療や休養がとれる職場の環境作りをしていくことが大切です。心身の健康は社会全体の大切な財産です。

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