健康ニュース
2003.02.10
健康ニュース
アレルギー性鼻炎 ~ティーペック健康ニュース
監修:順天堂大学医学部附属順天堂医院 総合診療科
小林 暁子
季節の花粉や、部屋の埃、ダニなどが原因で、くしゃみや、鼻汁、鼻詰まりなどが起こる「アレルギー性鼻炎」の方が増えています。症状を抑えるために、薬物療法などと共にセルフケアが重要です。
アレルギー性鼻炎が起こる仕組み
人間の体は、体内に異物(アレルゲン・抗原)が入ると、それを排除しようとする働き(免疫反応)があり、この免疫反応が過剰に起こった状態を、アレルギー反応といいます。このアレルゲンが、アレルギー体質の人の鼻に侵入すると、特異的IgE抗体が作られ、鼻粘膜にある肥満細胞の表面にある受容体に付着し、再び同じアレルゲンが侵入すると、この抗体が化学反応を起こし、その刺激によりヒスタミンや、ロイコトリエンなどの化学伝達物質が放出されます。このヒスタミンが鼻粘膜に分布している知覚神経(三叉神経の末端)を刺激すると、くしゃみを起こし、脳へ伝わり、鼻腺を刺激して鼻汁を引き起こします。一方、ロイコトリエンなどは血管を広げたり血管壁の浸透性を高めたりするため、粘膜が腫れたり浮腫(水ぶくれ)が出来て、鼻詰まりとなります。
症状
鼻・・・・・くしゃみ、鼻汁、鼻詰まり、かゆみなど。
目・・・・・かゆみ、涙目など。
その他の症状・・・・・のどのイガイガ感、激しい咳など。
アレルギーの原因となるもの
花粉
「スギ」(2月~4月にかけて)「ヒノキ」(3月末頃~5月頃にかけて)
イネ科「ハルガヤ」「カモガヤ」など(5月~8月頃まで)
キク科「ブタクサ」「ヨモギ」など(8月~10月頃)
ハウスダスト ダニ ペット 食物 カビなど。
アレルギー反応検査
皮膚試験
スクラッチテスト(注射針で腕に引っかき傷を作りアレルゲンのエキスをたらす)、プリックテスト(針で皮膚を軽く刺しアレルゲンのエキスをたらす)、直接アレルゲンのエキスを皮内に注射するなどし、皮膚が赤くなればアレルゲンと推定されます。
特異的IgE抗体検査
血液中アレルゲンに対する特異的抗体が含まれているかを見ます。
誘発試験
推定されたアレルゲンで、実際に症状が起こるかを確かめます。
セルフケア(抗原の除去)
「室内のダニの除去」
- まめに掃除し、ダニの生息しやすい織物のソファ、カーペットなどはできるだけ置かない。
- ダニが1番生息する寝具にはダニよけカバーをかけたり、晴れた日には干す。
- ダニは高温多湿を好むので、部屋の温度は20℃から25℃に保ち、湿度を50%以下に保つようにする。また空気清浄機を用いて空気をきれいに保つ。
「花粉対策」
- テレビや新聞などの花粉情報に注意し、花粉が多い日は外出を控えると共に、窓や、戸を閉め、室内に花粉が入らない様にする。
- 外出が避けられない時は、マスクやメガネを使う(マスクは、安価なものを使い捨てにするほうが良い。メガネをすることで、目に入る花粉の量を3分の1程度に減らせる)。
- 花粉の付着しやすい、表面がけばけばした毛織物などのコートの使用は避ける。
- 花粉を屋内に持ち込まないために帰宅時には衣服や髪をよく払い、洗顔、うがい、鼻をかむ。
- まめに掃除をする。
また、体調が悪いときは症状を悪化させるため、規則正しい生活を心がけ無理はしないようにします。以上のようなセルフケアを心がけても症状が改善されない場合は、医学的治療が必要と考えられます。治療としては、薬物療法、手術療法、減感作療法があります。
薬物療法
<軽症>
くしゃみや、鼻をかむ回数が、1日1~5回程度の場合は「抗ヒスタミン薬」、軽い鼻詰まりでは「抗アレルギー薬」を使用します。
<中等症>
くしゃみや鼻をかむ回数が1日6~10回に増えたり、鼻が詰まって、時々口で呼吸をするときは、「抗アレルギー薬」に加えて「ステロイド点鼻薬」を使います。(ステロイド点鼻薬は、局所的に用いられるため、副作用もほとんどない)。鼻詰まりが特に強い場合には、「血管収縮薬」を使用することもあります。
<重症・最重症>
くしゃみや鼻をかむ回数が、1日11回以上になって、特に鼻汁が多い場合には、中等症の薬に加えて「抗コリン剤」を点鼻薬として使用します(抗コリン薬は、アセチルコリンという鼻汁の分泌に関係している化学伝達物質を抑制し、その作用を遮断する働きがある)。
また、予防的な方法として、花粉症の方の場合、花粉が飛散する前から「抗アレルギー剤」を内服する方法もあり、これによって、発症を遅らせたり、発症をしても軽く済む効果があります。(抗アレルギー剤は最大の効果が出るまで2週間ほどかかる)
手術療法
重症・最重症の方で、下鼻甲介という部分が腫れて、鼻腔が塞がれている場合、下鼻甲介を切除したり、レーザーで焼き切る手術も行われています。また、くしゃみや鼻汁を解消する方法として、鼻の神経を切除する手術もありますが、最近ではあまり行われなくなってきています。
減感作療法(特異的免疫療法)
アレルギーの原因となる抗体の成分を、少量ずつ、定期的に、注射することによって、過剰な免疫反応が起こらないように、体質を改善させる治療法です。このため、治療期間が2,3年かかります。また、ダニがアレルゲンの場合、60~80%の患者さんが治るという報告がありますが、花粉症の場合、急激なショック症状を起こすこともあり、事前に副作用が無いかを調べます。
このようにいくつかの治療法がありますが、耳鼻咽喉科医とよく相談し、症状に合った治療法を行なうと共にアレルゲンから身を守り、体調を整えたりすることで症状の軽減や予防を図っていきましょう。
<参考文献>
「鼻アレルギー診療ガイドライン2002」 ライフサイエンス
「今日の健康」 NHK出版
「JOHNSお母さんへの回答マニュアル 耳鼻咽喉科Q&A」 東京医学社