健康ニュース
2003.11.10
健康ニュース
禁煙 ~ティーペック健康ニュース
監修:順天堂大学医学部附属順天堂医院 総合診療科
小林 暁子
今年の5月1日に、受動喫煙(タバコを吸わない人が煙の害を受ける)防止を初めて法律に盛り込んだ『健康増進法』が施行されました。
また、財務省はタバコの包装の注意表示を、現在の「吸いすぎに注意しましょう」から、ガン、脳卒中、心筋梗塞など、喫煙が原因でかかる可能性のある病名を明示する方針に固めたようです。このように、法的にもタバコの害がはっきりしてきました。
【タバコの害】
タバコの煙には、ニコチン、タール、一酸化炭素など4000種類以上の化学物質が含まれていて、そのうち約200種類が有害であることがわかっています。発ガン性物質も30~40種類報告されています。タバコの煙に直接触れる肺や口腔、喉頭、咽頭、食道のガンはもちろんですが、有害成分は肺から吸収されたり、唾液や痰に混ざって飲み込まれたりして全身の様々な臓器に悪影響を及ぼします。ガン全体の2~3割がタバコが原因と推定されています。喉頭ガンは吸わない人の20倍も死亡率が高くなります。
ガン以外にも、慢性気管支炎、肺気腫、喘息などの呼吸器疾患や、虚血性心疾患、脳血管疾患、胃・十二指腸潰瘍、歯周病の原因にもなると言われています。また、妊娠中の女性が喫煙すると、低出生体重児や死産、流産、早産の危険性が高くなることもわかっています。皮膚に供給される酸素が少なくなるので、顔色が悪くなったり、しわができたりと美容にも良くありません。
細胞分裂の活発な子供の頃にタバコを吸うと、有害物質の悪影響を受けやすく、ニコチン依存にもなりやすいため、未成年者の喫煙は特に危険です。
国立保健医療科学院と医療経済研究機構が出した試算では、タバコを吸うことによってかかる余分な医療費は、年間1兆円を超えるそうです。
タバコを吸っていると、手術後に肺合併症を起こしやすいため、最近は『喫煙者の手術はお断り』の病院も出てきました。
有害成分は、喫煙者が吸い込む主流煙より、タバコの火のついた部分から出る副流煙の方が多いことがわかっています。タバコは吸っている本人だけでなく、周囲の人の健康にまで悪影響をあたえているのです。
【禁煙したい】
平成10年の厚生省(現厚生労働省)の調査によると、日本人の喫煙率は男性50.8%、女性10.9%で、喫煙者の64.2%が「タバコをやめたい」「本数を減らしたい」と考えています。
【喫煙者はニコチン依存症】
タバコがなかなかやめられないのは、ニコチンに強い依存性があるからです。ニコチンの依存性はアルコールより強く、ヘロインやコカインに匹敵すると言われています。そのため、喫煙者がタバコを吸わずにいると、イライラなどの離脱症状(禁断症状)が出ます。朝目が覚めてから30分以内にタバコが吸いたくなる人や、1日の喫煙本数の多い人は依存度が高いと言われています。
【本数を減らす・軽いタバコに替える】
本数を減らすと、次のタバコが待ち遠しくなり、タバコにしばられてしまいます。軽いタバコは効果があるように見えても、実際は元と同じ量のニコチンを吸収できるように、無意識に深く吸ったりして調整してしまうため、思うような効果はありません。
【禁煙補助剤】
2001年6月に、それまでは病院で処方されていたニコチンガムが薬局で買えるようになりました。発売1年間で売り上げが90億円を超える大ヒット商品だそうです。ニコチン製剤にはガムの他に皮膚に貼るパッチがあり、こちらは今のところは医師の処方箋が必要です(2005年頃に市販される予定)。どちらもニコチンを補給して離脱症状をやわらげるものです。徐々に使用量を減らし、2~3ヶ月間をめどに完全離脱を目指します。
禁煙の成功率は、ガムが4割、パッチが6~7割。パッチは禁煙外来などで処方されることが多く、医師の指導やカウンセリングを併用するため、効果が高いようです。費用は喫煙本数にもよりますが、2~3万円かかります。病院で処方してもらう場合は、診察料や処方料も必要になります。自由診療のため、健康保険は使えません。
【禁煙中、吸いたくならないように】
- 禁煙することを周囲の人に宣言し、協力してもらいましょう。
- 禁煙仲間を見つけ、励まし合いましょう。
- 灰皿、ライターなど喫煙グッズを処分しましょう。
- アルコールや刺激物は控えましょう。
- 宴会など、喫煙のきっかけになる場を避けましょう。
【吸いたくなったら】
「タバコを吸いたい!」という欲求には波があり、強い欲求は1~3分で去ります。この数分間を乗り切るための自分に合った方法を見つけましょう。
- 深呼吸をしましょう。
- 冷たい水や、熱いお茶を少しずつ飲みましょう。
- 手のひらを圧迫するなど、身体に軽い痛みの刺激を与えましょう。
- 散歩、入浴、おしゃべりなど、体を動かしましょう。
- 口寂しさを紛らわすために、ガム、あめ、昆布、歯磨きなどを利用しましょう。
- 手が寂しいときは、ゲーム、プラモデル、手芸など手を使う作業をしましょう。
【禁煙の効果】
タバコをやめた直後から、健康は回復していきます。
- 禁煙20分後:タバコを1本吸うと、血圧は10~15%、脈拍は40%上昇し、皮膚温は2~3度低下しますが、禁煙して20分後に血圧と脈が元に戻ります。血流が回復し、手足の温度が上昇し始めます。
- 8時間後:血液中の酸素濃度が上昇して呼吸が楽になってきます。
- 24時間後:血液中の一酸化炭素濃度が正常になり、肺は不純物を除き始めます。
- 48時間後:味覚や嗅覚が回復してきます。
- 72時間後:喫煙刺激による気管の狭窄がとれ、呼吸量が増えます。
- 2週間~3ヵ月後:血液の循環が良くなり、歩行が楽になります。
- 3~9ヵ月後:咳の回数が減り、鼻づまりが起きにくくなります。疲れにくくなり、息切れも軽減します。呼吸器感染症にかかりにくくなります。
- 1年後:心筋梗塞の危険が半減します。
- 10年後:肺ガンの危険が半減します。
禁煙中、「離脱症状はいつまで続くのか?」「いつまで我慢しなくてはならないのか?」と考えるのは辛いものです。禁煙の効果を実感し、禁煙が続いていることを喜びましょう。
【禁煙に失敗したら】
禁煙がなかなか成功しないのは依存性が高いからです。あきらめずに何度でも挑戦しましょう。どのようなときに吸いたくなるのかを知り、対策を考えます。禁煙外来、ニコチンガム、インターネットの禁煙マラソンなど、今までと違う方法で挑戦するのもよいでしょう。
【周囲の人の対応】
禁煙中、周囲の人の応援はとても重要です。禁煙をからかったり、「本当にやめられたかどうか、1本吸って試してみたら?」などと誘うのはもってのほかです。「顔色が良くなった」「嫌なにおいがなくなった」など、禁煙の効果を見つけ、ほめてあげましょう。映画館などタバコを吸えない場所に誘ったり、一緒にスポーツを楽しむのも良いでしょう。禁煙中の人はイライラすることが多く、周囲の人に当り散らすこともありますが、禁煙をがんばっていることを認め、優しく接しましょう。
<参考文献>
成功率99.9%の禁煙の本/主婦と生活社
「禁煙科」の医者が書いた7日でやめる本/青春出版社
禁煙セラピー/KKロングセラーズ

