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血圧と上手に付き合う ~ティーペック健康ニュース

監修:順天堂大学医学部付属順天堂医院 総合診療科
小林 暁子

2000年7月、日本高血圧学会では日本人に適応した新しい「高血圧治療ガイドライン2000版」を作成しました。日本では約3400万人、赤ちゃんも含めた人口の約30%(約3人に1人)が高血圧の方といわれています。

特に40代から通院される方が急に増え、65才以上では約7割(3人に2人)、70才以上では約8割と年齢が高くなるに従って、だんだんと高血圧の方は増加して行きます。

高血圧の怖さはこれといった症状もなく、血管に過度の負担がかかることによって動脈硬化が進み、脳卒中心筋梗塞などの重大な疾患を引き起こすことで、日本における死亡原因の第2位の脳血管疾患と第3位の心疾患につながっていることでもよく知られています。

新しい血圧の基準値

新しい血圧の基準(成人の場合)での正常血圧とは、最大血圧が130mmHg未満かつ最低血圧が85mmHg未満です。 また、正常高値血圧とは最大血圧が130~139mmHg未満、または最小血圧が85~89mmHg未満となっています。 治療の対象になるのは、最大血圧が140mmHg以上又は最低血圧が90mmHg以上です。

高齢者の特長と治療指針

さて、今回は日本人のデータを取り入れた「高血圧治療ガイドライン2000年版」の特徴でもある高齢者の目標高血圧や治療上の留意点について説明させていただきます。

高齢者(60才以上の方)の高血圧の特徴は、最大血圧が高く、最小血圧が低い、つまり収縮期と拡張期の差(脈圧)が大きくなることです。 これには動脈硬化が大きく影響し、心疾患の危険性を示す指標にもなっています。

もう一つの特徴は血圧が変動しやすいことです。血圧は本来自律神経によって調節されていますが、加齢によってこのリズムが乱れるため、 昼高くなった血圧が夜になっても下がらない夜間高血圧や、一旦夜間に下がった血圧が早朝から起床にかけて急激に上昇する早朝高血圧などを起こしやすくなります。

高齢者は動脈硬化が進み、脳や心臓・腎臓などあらゆる臓器でもともと血流量が落ちていますので、急に血圧を下げると臓器の血流障害を起こしやすい状態にあります。 従って、高齢者の高血圧治療では「ゆっくり下げる」「下げすぎない」という注意のもとに、2ヶ月ほどかけてゆっくりと下げていくのが原則です。

ではどの位の数値を目標に考えたらよいのでしょう。WHO(世界保健機構)では成人と同じと考えて良いとされていますが、 日本では年齢に応じた次の目標値が受け入れられています。年代別降圧目標値は下記のようなとおりです。

60歳代70歳代80歳代
最大血圧140mmHg以下150~160mmHg以下160~170mmHg以下
最小血圧90mmHg未満90mmHg未満90mmHg未満

ただし最小血圧は変動しづらいので、目標値を最小血圧90mmHgとする場合もあります。

高齢者の治療

高血圧の治療は偏った食事や運動不足など生活習慣の改善が基本ですが、一定期間行っても血圧が下がらない場合には、降圧剤による薬物療法が開始されます。

高齢者は加齢にともない、腎臓・肝臓の機能が低下して代謝・排泄が鈍くなってくるので、薬の濃度が上がりすぎ、副作用を起こしやすくなります。薬物の量は壮年量の半量からはじめ、2ヶ月ぐらいかけてゆっくり目標値まで下げていきます。

高齢者に用いる降圧剤としては、脳の血流量を保つほか、血圧の自動調整能力があるということで、カルシウム拮抗剤がよく使われます。 その他にACE阻害剤、アルジオテンシンⅡ拮抗剤などが用いられます。

日常生活での留意点

お年寄りが高血圧とうまく付き合っていくには、無理をせず、ゆっくり生活習慣を改善していくことが大切です。ここに留意点を上げてみましたので参考にして下さい。

  • 減塩に心がけ、魚肉・豆類や野菜・果物・乳製品等バランスのよい食事をとりましょう。
  • 肥満は高血圧の大きな原因です。太りすぎを解消しましょう。
  • ウオーキングなど軽い運動を1日30分~40分、週3~5日行いましょう。
  • 十分な睡眠と規則正しい生活を心がけましょう。
  • 酒とタバコは慎みましょう。
  • 治療が必要と言われたら、医師の指示どおり薬を飲みましょう。
  • 浴室脱衣所の温度など、特に冬期は気を付けましょう。

<参考文献>
「臨床医マニュアル」 医歯薬出版
「今日の治療方針2001」 医学書院
「きょうの健康2001年11月号」 「NHK出版」

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