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炭疽菌 ~ティーペック健康ニュース

監修:東京医科歯科大学 教授
藤田 紘一郎

米国で感染者が続出し、連日ニュースにあがっている炭疽菌。この炭疽菌とは一体どういうものなのでしょうか?テロとの関連性も言われていますが、何故この炭疽菌は生物兵器に使われるのでしょう?炭疽菌に感染した場合、どのような治療法があるのでしょう?炭疽菌から身を守る方法はあるのでしょうか?今回はこの炭疽菌についてQ&A形式で簡単にまとめてみました。

炭疽菌って何ですか?

炭疽菌は細長い形をした大型の細菌で、ウシウマ・ヒツジなどの草食動物から人に感染します。芽胞という一種の胞子になってしまうと熱や紫外線・乾燥に強く、何年でも生存可能です。感染した動物に接触したり、動物の排泄物から出る芽胞を吸引したり、感染した動物の肉を食べるとヒトに感染しますが、ヒトからヒトへ感染することはありません。

何故、生物兵器に炭疽菌が使われるのですか?

培養された炭疽菌を乾燥させて胞子状態にすると、白かベージュ色になり、臭いもないので、感染した人は症状が出るまでまったく気が付きません。また、先ほどもお話ししたように胞子は熱にも乾燥にも強く、空気を通じて伝染するため、生物兵器に適しているのです。

感染するとどのような症状が出ますか?

炭疽症には「皮膚炭疽」「肺炭疽」「腸炭疽」の3種類があります。

皮膚炭疽:
感染した場所が虫に刺された様に腫れます。かゆみはありますが痛みはなく、2~3cm程度の潰瘍が出来ます。その中央に黒褐色の痂皮が形成され、リンパ節も腫れてきます。そのまま放置しておくとショックや敗血症を起こし、死に至ることがあります。

肺炭疽:
胞子を吸入することで感染します。最初はせきや熱など風邪に似た症状から始まりますが、重症では呼吸困難を起こして外毒性のショックや敗血症を起こし、死に至ります。致死率は80~90%程度といわれています。

腸炭疽:
体内の塩分不足から、足や腕などの筋肉がけいれんする状態。

治療法はあるのでしょうか?

治療にはペニシリンやテトラサイクリン・エリスロマイシン・シプロフロキサシンなどの抗生剤が有効とされています。炭疽症は感染後1~7日程度の潜伏期間を経て、風邪のような症状で発症します。その後、呼吸障害やけいれんなどの症状を起こしますが、初期の段階で治療を開始すれば治癒する可能性は高い病気です。

もし炭疽菌に触れてしまった場合、どうすればいいでしょうか?

怪しそうな白い粉を発見したら、まずマスクやハンカチなどを口に当て、菌を鼻や口から吸い込まないようにしましょう。万が一、炭疽菌と思われる粉に触ってしまった場合も、傷がなければ感染はしません。落ち着いて、石鹸と流水で手をよく洗いましょう。こぼれてしまった粉には覆いをかけ、できるだけ速やかにその部屋から出ます。誰もその部屋に入れないようにして、警察に通報・医療機関に相談するようにしましょう。衣服が汚染されてしまった場合は、出来る限り早く脱いでビニール袋など密閉できるものに入れ、衣服についた粉の安全性が確認されるまで保管しましょう。そして出来る限り早くシャワーを浴びましょう。

<参考文献>
「東京都感染マニュアル」 東京都新たな感染症対策委員会
「標準感染症学」 医学書院

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