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新しい基準値の高脂血症 ~ティーペック健康ニュース

監修:東京医科歯科大学 医動物学教室
山田 誠一

なぜ高脂血症が心配なのか?

動脈硬化を起こす原因には、高血圧、高血糖、喫煙などありますが、高脂血症も重要な因子の一つです。血液中にコレステロールや中性脂肪が増えていくと血管に蓄積され、動脈硬化は自覚症状が、ほとんどないため例えば心臓の冠動脈が50%ぐらい塞がっても気づかず、75%も塞がってやっと息苦しさや心電図上で狭心症が発見される様なことがあります。

つまり、血管内壁に溜まったコレステロールにより、血管が狭くなったり、厚く硬くなったり、もろくなった血管が破れたり詰まったりして、脳血管疾患や心疾患など死につながる状態を引き起こすことがあるのです。

高脂血症とは

コレステロールは体全体の細胞を作る本来はとても大切な物質です。肝臓で作られたコレステロールは動脈によって全身に運ばれます。これがLDLコレステロールで動脈硬化の原因となるため悪玉コレステロールと呼ばれています。それとは反対に体の各組織から静脈を通って肝臓に回収されるコレステロールがあります。HDLコレステロールと言い余分なコレステロールを回収してくれるので善玉コレステロールとも呼ばれています。血液検査で言われる総コレステロールとは、LDLコレステロール(全体の約60%を強)とHDLコレステロール(約40%)の総量のことで、全体量をおさえる必要はありますし内訳が大切です。

血液中には中性脂肪(トリグリセライド)、リン脂質、遊離脂肪酸といった脂肪も存在します。

高脂血症とはこれら血液中の脂肪の量が異常に多い状態で、特に高コレステロール血症高トリグリセライド血症と言うことがあります。実際には高脂血症という場合はどちらかあるいは両方の状態を言います。高トリグリ血症は中性脂肪の量が増えた状態で肥満やお酒をよく飲む人にしばしばみられ、最近は高血圧などの前触れとしても重視される様になりました。

新しい基準について

1997年日本動脈硬化学会から診断基準値と治療の管理基準が表1や表2のように出されました。これらの基準となる値は従来より厳しくなっており、生活習慣をもう一度見直すきっかけにして下さい。

表.1日本人の高脂血症診断基準値

1.冠動脈疾患の予防・治療の観点からみた日本人のコレステロール値適正域および高コレステロール

総コレステロールLDLコレステロール
コレステロール値適性域200mg/dl未満120mg/dl未満
境界域200~219mg/dl120~139mg/dl
高コレステロール血症220mg/dl以上140mg/dl以上

注1: コレステロールが境界域にあっても、他の動脈硬化危険因子の存在によっては治療が必要な場合がある。

注2:冠動脈疾患発症例は厳重な管理が必要であり、治療開始基準値が血清TC値180mg/dl(HDL-C値100mg/dl)未満に設定されている。
    コレステロール値が適正域にあっても治療を必要とする、場合があることに注意する。

2.高TG血症診断基準値

TG値適正域 150mg/dl未満 (空腹時)
高TG血症 は、150mg/dl以上

3.低HDL-C血症診断基準値

HDL-C 40mg/dl未満

冠動脈疾患の予防、治療の観点からみた日本人の高コレステロール血症患者の管理基準

カテゴリー生活指導、食事療法適用基準薬物療法適用基準治療目標値
冠動脈疾患なし
他の危険因子なし
LDL-C140mg/dl以上
TC220mg/dl以上
LDL-C160mg/dl以上
TC240mg/dl以上
LDL-C140mg/dl未満
TC220mg/dl未満
冠動脈疾患なし
他の危険因子あり
LDL-C120mg/dl以上
TC200mg/dl以上
LDL-C140mg/dl以上
TC220mg/dl以上
LDL-C120mg/dl未満
TC200mg/dl未満
冠動脈疾患ありLDL-C100mg/dl以上
TC180mg/dl以上
LDL-C120mg/dl以上
TC200mg/dl以上
LDL-C100mg/dl未満
TC180mg/dl未満

*冠動脈疾患:心筋梗塞、狭心症、無症候性心筋虚血(虚血性心電図異常など)、冠動脈造影で有意狭窄を認めるもの

** 高コレステロール血症以外の主要な動脈硬化危険因子:加齢(男性:45歳以上、女性:閉経後)、冠動脈疾患の家族歴、喫煙習慣、高血圧(140and/or 90mmHg以上)、肥満(BMI26.4以上)、耐糖能異常(日本糖尿病学会基準、境界型、糖尿病型)、高トリグリセライド血症、低HDL-コレステロール血症

(日本動脈硬化学会高脂血症診療ガイドライン検討委員会:動脈硬化25:1-34 1997より引用)

予防や治療で一番大切なこと

高脂血症は、予防も治療も食事療法と運動療法が基準にあってさらにしばらくしても改善がみられない人は薬物療法の対象になります。薬物療法が開始されても食事や運動に注意していくことが大切です。薬物療法は高脂血症のタイプや重症度によって異なります。特に、最近注目されているのはスタチン系のセリバスタチンなどは従来の10~100分の1の量で効き、高血圧や糖尿病のある人でも服用できます。主治医とよく相談してきちんと治療することが大切です。食事や生活面で重要なポイントとして次のようなことがあります。

食事療法

(1) 摂取エネルギーを抑える。目安として標準体重×(20~30)kcalとします。

(2) 脂肪エネルギーを全体の25%以下にして動物性脂肪は体内コレステロールの合成を促すので控え、魚(特に青魚)はコレステロールを下げる働きがあるので、積極的に摂ります。

(3) コレステロールの摂取を1日300mg以下に抑えます。ここに特に多い食品をあげておきます。

コレステロールが特に多い(1単位(80kcal)中120mg以上)の食品

食品名一単位(g)一単位中の含有量(mg)
魚介いか
たらこ
あわび
うに
すじこ
さざえ
えび
しじみ
100
80
130
60
30
80
80
150
300
272
182
174
153
136
120
120
とり肝臓
豚肝臓
牛肝臓
60
60
60
222
150
144
卵黄
鶏卵
うずら卵
20
50
50
260
235
235

(日本糖尿病学会編:糖尿病食事療法のための食品交換表、第5版、文光堂、1993より抜粋)

(4) 糖質エネルギーは特に砂糖や果物の摂り過ぎは避けます。

(5) タンパク質はなるべく大豆や魚のタンパク質を摂取する事が勧められます。

(6) 食物繊維を1日25g以上摂るようにします。(例えば海草、野菜、豆類、きのこなど)

(7) 抗酸化物を多く含む食品を積極的に摂ります。 (例えばワイン、ココア、お茶などのポリフェノールを含んだもの)

2.運動療法

中程度の運動を1日30~40分、週に4回以上行うことが大切です。ウォーキングやジョギングなどを“きつい”と感じない程度に長く続ける工夫をして行きましょう。運動によって血清トリグリセライドは低下し、HDLコレステロール(善玉コレステロール)は上昇します。また、肥満の人では総コレステロールが低下することもあります。

最後に

近年の食生活の変化は特に全体の摂取カロリーには大差はないものの大きく変化したのは脂肪の摂取量です。摂取エネルギー中の脂肪の割合が25%を越えています。ちなみに20%を越えると心筋硬塞や動脈硬化が増えると言われています。特に若い世代の脂肪摂取率は高く今後、高脂血症から心疾患などの生活習慣病の増加が心配されます。

コレステロールについても、日本人の平均的な値が200を越えていますので、すでに境界域に入っており、アメリカ人とあまり変わらない値になっております。

心疾患の多かったアメリカがコレステロールに対して本格的に取り組みをした結果、年々下がってきているのに対して、日本の場合は年々上昇しています。食事や運動に少し注意しながら、御自分の検査値に注意を払ってみることから始めてみましょう。

<参考文献>
「200今日の治療」 医学書院
「生活習慣病の理解」 文光堂
「病気がわかる体の手引き」 小学館
「人間ドックマニュアル」 医学書院

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