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ティーペック健康ニュース

第86号 2000/1/10  
監修:東京医科歯科大学 医動物学教室
山田 誠一

過敏性腸症候群 〜ストレスとお腹の関係

 過敏性腸症候群とは
腸に何も異常がないのに、腹痛を伴った便秘や下痢が続く病気を「過敏性腸症候群」と呼んでいます。神経質な人、生真面目な人など、ストレスを受けやすい性格の人に発症しやすい心身症の一つです。通勤途中で何度もトイレに駆け込む、便秘でしばしばお腹が痛むといった状態であれば、この病気が疑われます。

過敏性腸症候群は、数ある消化器の病気の中でも、もっともよく見られる病気の一つです。日本では便通異常で受診する患者さんの20〜30%は過敏性腸症候群と言われています。年代的には女性では20才代と50才代、男性では30〜40才代に多く見られます。最近では、受験などのストレスの影響か小・中学生にも増えています。
 症状について
過敏性腸症候群の主な症状は、便通異常(便秘型・下痢型・交替型)、腹痛、腹部不快感があげられています。腹痛は必ずしも痛む場所が一定していません。痛みの程度も軽いものから、しぼられるように強く痛むものまで、その程度は様々です。また、排便によって腹痛が軽くなるのが特徴です。

排便回数は一般に多いのですが、夜間の睡眠中はほとんど便意がありません。残便感や腹満感(お腹にガスがたまった感じ)を感じることもあります。

過敏性腸症候群では体重は減りません。腸の症状以外にも吐き気や食欲不振、頭痛、めまい、動悸、疲労感などの全身症状、不眠や不安感などの精神症状が見られることもあります。これらの症状はストレスがなくなると軽くなるのが普通です。例えば、会社がストレスになっている人は、週末には腹痛が止まり、便秘や下痢もよくなったりします。

ではなぜ、これらの症状がストレスと密接な関係にあるのでしょうか。関係はあります。それは内臓と神経が関連しているからです。内臓の働きは自律神経によって支配され、この自律神経は脳の視床下部という部分から出される命令によって働いています。その人にとってストレスとなる情報が外から脳に入ってくると視床下部がそれに反応してしまい、適切な指令が送れなくなって内臓の働きが乱れてしまうのです。この様なストレスが原因で起こる体の変調は、人により心臓や胃、腸など様々な場所に現れます。
 治療法について
過敏性腸症候群とうまく付き合っていくことで、治療の目標は症状を軽減することにあります。「規則正しい生活を送り、正常な便通習慣を取り戻す」「スポーツや趣味などでストレスを発散、コントロールする」ことに心がけることです。薬を服用する場合もあります。鎮痛薬、消化器運動機能改善薬、精神安定剤、漢方薬などが処方されます。過敏性腸症候群は主にストレスが原因で起こる病気なので、薬によって症状が緩和できても、それは一時的なものです。薬にのみ頼らず、規則正しい生活を忘れないようにしましょう。

食事はあまり神経質に考えなくてもよいのですが、三食規則正しく食べるようにしましょう。便秘型の人は、食物繊維を多く含む野菜や果物(ゴボウ、セロリ、ニンジン、リンゴなど)を多くとるようにしましょう。下痢型の人は腸を刺激しやすいもの(コーヒーやスパイス類)は避けた方がよいでしょう。お腹が張りやすい人は炭酸飲料は控えるようにしましょう。

ストレスをコントロールするには、できるだけ趣味に熱中したり、スポーツで心地よい疲労を得て良質の睡眠をとることが大切です。同じような境遇の人と話し合うのもいいですし、専門家によるカウンセリングが必要な場合もあります。
 他の疾患との鑑別
便秘や下痢を繰り返したり、腹痛などの症状の他に「便に血が混じっている、貧血気味である」「熱があって体重が減ってきた」などの症状を伴っている場合には潰瘍性大腸炎クローン病、まれに大腸がんなどの重大な病気が疑われます。腹痛や便通異常が長引く場合は必ず消化器の専門医を受診するようにしましょう。
◇   ◇   ◇
<参考文献>
「よくわかる内科」 金原出版株式会社
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