ホームティーペック健康ニュース目次『女性を悩ます尿もれ(腹圧性尿失禁)』

ティーペック健康ニュース
第146号 2005/1/12
ティーペック 健康ニュース 女性を悩ます尿もれ(腹圧性尿失禁)

監修:順天堂大学名誉教授
 北 川 龍 一

尿もれとは

尿意がない時に、トイレ以外の場所でいくらかの尿がもれてしまい、生活する上で困
ることが起こったり、衛生上でも問題となったりするものを尿もれ(尿失禁)と言い
ます。命にかかわる病気ではないため、「恥ずかしい」という羞恥心から誰にも言え
ず一人で悩んでいたり、「年のせいだから仕方ない」とあきらめてしまっていたり、
「病気かどうかわからなくて相談できない」と困っている人がとても多いのが特徴で
す。

「尿もれ」は、れっきとした病気です。たくさんの人が抱えている「良くある症状」
ですが、治療をすればよくなる病気です。今回は多くの女性が悩んでいる腹圧性の尿
もれ
に焦点を当てて説明します。

腹圧性尿もれの原因

原因は骨盤底の筋肉がゆるんでしまったことによると考えられています。女性の骨盤
の中には、子宮や膣、卵巣、膀胱、尿道、直腸、肛門などのいろいろな臓器がおさま
っています。これらを下からしっかり支えているのが骨盤底筋です。妊娠出産や更年
期のホルモン低下、又は肥満が原因となり、骨盤底筋が弱くなってたるんでしまうの
です。

尿もれの種類

尿がもれるという現象は同じでも、尿もれの起こる原因やもれ方にはいくつかのタイ
プがあります。
 ・腹圧性尿もれ:咳やくしゃみなど、おなかに力がかかった拍子にもれる
 ・切迫性尿もれ:トイレに行きたいと思ったら我慢できない(膀胱炎などの時)
 ・その他の尿もれ:真性尿もれ、反射性尿もれ、溢流性尿もれ、機能性尿もれ

腹圧性尿もれで悩む人の症状や特徴

腹圧性尿もれではおなかに力が入った時に尿がもれます。
 ・咳やくしゃみをした時、思わず笑った時に、ちょろっと尿がもれる
 ・更年期や閉経を過ぎて尿もれが始まり、ひどくなる

 ・長時間歩いていると尿がもれる

 ・立ち上がろうとした時にもれる

 ・太っている

 ・出産経験がある(特に2回以上)

 ・トイレに行きたいと思っていないのに、ふとしたはずみに尿がもれる

 ・重いものを持ったり、持ち上げたりした時に尿がもれる

何科を受診したらいいの?

専門は泌尿器科です。まず病院に電話して「尿もれの治療を受けたいと思っているの
ですが」とたずねてみてもいいでしょう。

検査

 ・ストレステスト: 膀胱に尿がたまった状態で、咳をしてもらい、尿がもれるか
  どうかを調べます。

 ・パッドテスト: 500ccの水を飲んだ後パッドを当て、60分間運動や腹圧
  のかかる動作をしてもらい、最後にパッドの重さを測定します。

   2g〜5g  :軽度の尿もれ

   5g〜10g :中程度の尿もれ

   10g〜50g:高度の尿もれ

   50g以上  :きわめて高度な尿もれ

 ・鎖尿道膀胱造影検査: 膀胱と尿道の角度(尿道膀胱角)を測る検査です。

  膀胱と尿道の形成する角度は、正常では90度から100度です。けれども骨盤
  底筋がゆるんでいると、角度が100度をこえてしまいます。

骨盤底筋体操(尿失禁体操)

比較的尿もれの軽い人は、骨盤底筋を鍛えることで尿もれを改善することができます。
 ・肛門や膣を10秒くらい、ぎゅーっと締め、その後は力をゆるめて30秒くらい
  リラックスする。これを1セットとして10セット繰り返します。

 ・その後に肛門や膣を素早く締めたりゆるめたりする運動、「キュッ(締める)パ
  ッ(ゆるめる)」を1セットとして「キュッパッ、キュッパッ」と、10セット
  トレーニングします。

 ・尿もれの症状が改善しても、この体操を続ける事が大切です。

 ・腹圧性尿失禁の予防にもなります。

治療

 ・内服治療(女性ホルモンも有効)
  スピロペント(保険適応)
  エフェドリン、トフラニール(保険適応外)
 ・手術

  バーチ法・・膣壁を縫って吊り上げる手術

  ステイミー法・・膀胱の脇を持ち上げ膀胱頸部を吊り上げる手術

  TVT手術・・・体に負担の少ない新しい発想の手術

  コラーゲン注入療法・・簡単で効果も高いが、繰り返し注入が必要

 ・膣内挿入器具を使った治療法

予防

日頃から日本式正座の習慣をつけましょう。正座をして背筋を伸ばすと自然に骨盤底
筋が緊張します。

終わりに

女性は尿もれがあっても口に出さず、誰にも相談することなく心の奥にしまい込んで
います。最近になってようやく新聞、雑誌、テレビなどのマスメディアが取り上げる
ようになり、「尿もれ」という病気が市民権を得てきました。尿もれは解剖学的に女
性なら誰でもがなりうる病気ですが、年だからといってあきらめる必要のない、治療
できる病気なのです。

仕方のないこととあきらめずに、今年は思い切って受診し、相談してみましょう。

<参考文献>
標準泌尿器科学          医学書院
標準産科婦人科学         医学書院
尿もれ治療がわかる本       巴 ひかる著

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