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ティーペック健康ニュース

第274号 2015/07/10  
発行:ティーペック株式会社

『腸内フローラはバランスに注目』

 「腸内フローラ」が各方面で話題となっています。腸が健康に与える影響が注目される中、腸内フローラの状況がさまざまな病気のリスクだけでなく、太りやすさや精神状態、老化のスピードにまで関与していることが明らかになってきたからです。
 フローラ(花畑)とはなんとも愛らしい名前ですが、以前は「腸内細菌叢(ちょうないさいきんそう)」といい、腸の中に棲みついているさまざまな種類の細菌が美しく群れをなして、まるで花畑のようにびっしりと敷き詰められていることから呼ばれています。
 腸内フローラのバランスを整えることは、便通はもちろん、がんや糖尿病、アレルギー疾患、肥満や認知症、うつ病などの医療分野の予防・改善をはじめ、お肌のコンディションやアンチエイジングなどの美容分野まで、私たちの健康と生活をよりよく保つことにつながります。
 体重の1〜2sは腸内細菌
 私たちの腸内には約3万種類以上、その数1,000兆個以上、重さにして1〜2sにもなる細菌が棲息しており、それらを総称して腸内細菌と呼びます。
 よく知られていることですが、腸内には体によい働きをしてくれる「善玉菌(有用菌)」と、異常繁殖すると悪さをする「悪玉菌(有害菌)」がいます。また、腸内環境がよいときには体によい働きをし、悪化すると悪玉菌に加勢して毒性を強める「日和見菌(中間菌)」というどちらでもない菌もいます。
 これら3種類の細菌群は腸内で勢力争いをしながら、仲間たちでコロニー(細胞塊)をつくっています。そして、健康なときは善玉菌が悪玉菌を抑え込んで、腸内フローラの一定のバランスを維持していますが、何らかの原因で悪玉菌が増えると腸内腐敗が促進されて有害な物質が増えてしまいます。
●腸内細菌の種類
  善玉菌(有用菌) 悪玉菌(有害菌) 日和見菌(中間菌)
代表的な細菌 乳酸桿菌
ビフィズス菌
ウェルシュ菌
ブドウ球菌
大腸菌(毒性株)
バクテロイデス(毒性株)
大腸菌(無毒株)
バクテロイデス(無毒株)
レンサ球菌
影響 感染防御、免疫刺激、消化吸収の促進、便性の改善、健康維持、老化防止 内の腐敗、細菌毒素の発生、発がん物質の発生、ガス発生、健康阻害、病気の引き金、老化促進 善玉菌が優勢になると善玉菌に、悪玉菌が優勢になると悪玉菌に加勢する
 腸内細菌の理想のバランスは2:1:7
 3群の腸内細菌の比率は「善玉菌2:悪玉菌1:日和見菌7」のバランスが理想といわれています。善玉菌が2割存在している腸は、悪玉菌の働きが抑制されます。とはいえ、善玉菌と悪玉菌を合わせても3割ほどで、残りの7割はどちらの味方につこうか常に様子をうかがっている日和見菌です。この日和見菌が悪玉菌に加勢しないように、善玉菌の量を一定に保ち、悪玉菌の勢力を抑える必要があります。
 全身に関与している腸内フローラ
 腸内細菌の働きは腸の中だけにとどまりません。脳の働きにも影響するなど、以下の5つの作用があることが知られています。
@ 病原体が体内に侵入したとき排除する。
A 食物繊維などの消化を助ける。
B ビタミンB2、ビタミンB6、ビタミンB12、葉酸、パントテン酸、ビオチン、ビタミンKなどのビタミン類を合成する。
C 幸せな気分をもたらす物質であるドーパミンやセロトニンを合成し、その前駆体を脳に送る。
D 免疫力のおよそ7割を腸内細菌と腸粘膜細胞との共同作業でつくる。
 腸が原因とされる病気が全身に及ぶとされているのは、このような腸内細菌の働きがあるからです。そのため腸内フローラのバランスを崩すと、万病を引き起こすというわけです。逆に腸内フローラのバランスを整え、腸を健全にすれば病気を予防し、健康になり、寿命を延ばすことができます。
腸の難病治療で期待される「糞便移植」
 腸内フローラに付随して最近注目されているのが「糞便移植」です。腸内フローラのバランスが崩れている腸の病気の患者へ、健康の人の便を生成し注入して腸内細菌を移植する「腸内細菌(便)移植療法」を指します。
 米国ではすでに潰瘍性大腸炎の治療などで通常医療として行われており、日本でも2014年に臨床研究がスタートしました。潰瘍性大腸炎は近年日本で20〜30代の人を中心に急増している難病で、さらに過敏性腸症候群や、やはり難病である腸管ベーチェット病などの糞便移植も研究が進められる予定です。
 「便」と聞いて抵抗感のある人がいるかもしれませんが、国内で実施されている移植療法は、配偶者や2親等以内の健康な人の便を移植することとしています。肥満を引き起こす、俗に「デブ菌」と呼ばれる特定の細菌の存在も明らかになりつつあり、手軽で副作用の少ない便移植は、今後注目すべき治療法の一つとなっています。
 腸内細菌の活動を高める食生活
 腸内フローラを健やかに保つには、腸内細菌活動を高める食生活が大切です。そのためには以下の点に気をつけて腸によいものを食べるようにしましょう。
1. 穀類・野菜類・豆類・果物類をとる
  植物性食品は腸内細菌の餌となって腸内細菌の数と種類を増加させます。
2. 発酵食品を食べる
  漬物やみそ、納豆、ヨーグルト、チーズなどの乳酸菌やビフィズス菌を含む食品を毎日とることで、腸内の善玉菌を補充するのに効果的です。
3. 食物繊維やオリゴ糖をとる
  善玉菌の餌となる食物繊維やオリゴ糖は、野菜類、果物類、豆類に多く含まれています。ごぼう、れんこん、大豆、玉ねぎ、ねぎ、にんにく、バナナ、アスパラガスなどを積極的にとりましょう。
4. 加工食品や食品添加物をなるべくとらない
  インスタント食品やハム、ウインナーなどの加工食品は、腸内細菌の数を減少させることがあるため、食べすぎないようにしましょう。 
 ほかにも、よくかんで食べる、適度な運動を行う、自然と触れ合ってストレスを発散する、なども大切です。
◇   ◇   ◇
 腸内フローラが健康なバランスかどうかを知る最も簡単な方法は、便の回数や状態を観察することです。毎日1回排便があり、黄色か黄色がかった褐色でにおいがあっても臭くなく、柔らかなバナナのような状態が理想です。便秘や下痢、または黒っぽくて悪臭がする便は、腸内フローラのバランスが崩れている状態です。
 また、最近では詳しい腸内細菌の比率などがわかる「腸内フローラ検査」を行っている医療機関もあります。少量の便を採取するだけの検査で、費用は2、3万円からですが、自分の腸内フローラの状態を知りたい人は試してみてもいいかもしれません。
<参考資料>
『さわやか』2015春号(制作/社会保険研究所)
『免疫力をアップする科学』(藤田紘一郎著 サイエンス・アイ新書)
「e-ヘルスネット 腸内細菌と健康」(厚生労働省健康情報サイト)
「潰瘍性大腸炎 腸内細菌移植療法で治療後半年で症状改善例も」(腸内フローラ.com)   ほか
原稿・社会保険研究所©
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