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ティーペック健康ニュース

第270号 2015/03/10  
発行:ティーペック株式会社

『増加する“人食いバクテリア”』

 いわゆる“人食いバクテリア”と恐れられる、「劇症型溶血性レンサ球菌感染症」という病気をご存じですか。この病気は感染後、急激に皮膚や筋肉の壊死や多臓器不全が起こることから、致死率も約30%以上ある恐ろしい病気です。進行するスピードが非常に急激で、みるみるうちに壊死の範囲が広がっていき重篤な症状となります。
 国立感染症研究所によれば、2014年の感染数は1999年の調査開始以降最も多い年間273例に達したとのことです。
 具体的な症状と治療
 劇症型溶血性レンサ球菌感染症の症状は、手足の強い痛みや腫れなどから始まります。痛みが始まる前にのどの痛みや発熱、悪寒など、かぜに似た症状が現れることがあります。症状が進行すると痛みのあった箇所が壊死することで変色し、その範囲が急激に広がっていきます(壊死性筋膜炎)。発症からの症状の進行は非常に急激かつ劇的で、壊死で変色する範囲は1時間に数cmも広がることがあります。やがて敗血症で血圧が低下し体全体に血液がいきわたらないショック状態となり、急性腎不全など多臓器不全を起こして死に至ります。急激な症状の悪化で発症したその日のうちに亡くなることもあります。
 急速に症状が悪化していくため、発症してからは時間との勝負です。できるだけ早く検査で菌を発見し、増殖する前に治療を開始する必要があります。治療は全身の状態を見ながら抗生物質を投与し、細菌の増殖と感染の拡大を防ぎます。体の免疫力を高めるために免疫グロブリン製剤の投与が行われることもあります。また、すでに壊死した組織には大量の菌が存在しているため、すぐに切除する必要があります。壊死した範囲が広ければ手足を切断することもあります。
 原因となる細菌
 原因とされる細菌は「A群溶血性レンサ球菌」です。しかし、決して特別な細菌ではなく、ヒトの皮膚やのどなどに生息している細菌です。ヒトは体内の免疫機能によって発症しない状態で保菌しているとされ、一般的な症状としては、子どもの咽頭炎や扁桃炎、皮膚のおできといった比較的症状の軽いものです。いずれも抗生物質の投与などの適切な治療で完治します。
 そのような細菌がなぜ突然に激しい症状を引き起こすかについては、まだよくわかっていません。糖尿病や肝臓疾患、がんなど持病があり、免疫力の低下している人は発症しやすいといわれていますが、それ以外の人でも発症することがあります。国立感染症研究所は、毒素の産生を調節している遺伝子に変異が起こることによって毒素産生が増加し、“人食いバクテリア”として非常に重篤な症状を引き起こすのではないかと報告しています。
 予防のために
 病原菌となるA群溶血性レンサ球菌は周囲に一般的に存在するありふれた細菌ですから、予防のためにはよく手を洗うなど日常の衛生管理が大切となります。また、不規則な生活や過労、睡眠不足を避け、体を健康に保ち免疫力を高めて発症しないようにすることが重要です。糖尿病などの特病のある人や免疫力が低くなりがちな高齢者は、傷が化膿したらすぐに医療機関を受診しましょう。小さな傷であっても感染を防ぐために清潔に保ち、赤くなったり腫れが見られたり、強い痛みや発熱などの感染の兆候が見られた場合には、医療機関を受診してください。
◇   ◇   ◇
 劇症型溶血性レンサ球菌感染症は症状と急激な進行から恐ろしい感染症ですが、比較的まれな病気です。病原菌がありふれた細菌ですので、予防するには手洗いなどをしっかりと行うしかありません。増加している点が不気味ではありますが、いたずらに怖がらずに基本的な健康管理を続けていきましょう。
<参考資料>
「劇症型溶血性レンサ球菌感染症 2006年(4月)〜2010年(2012年3月23日現在)」(国立感染症研究所ホームページ)
「劇症型溶血性レンサ球菌感染症とは」(国立感染症研究所ホームページ)
「劇症型A群レンサ球菌感染症(いわゆる人食いバクテリア症)」(愛知県衛生研究所ホームページ)
「<人食いバクテリア>昨年患者273人、致死率30〜50%」(毎日新聞 2月25日(水)配信)
原稿・社会保険研究所©
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