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ティーペック健康ニュース

第208号 2010/03/10  
監修:ティーペック(株)臨床心理士
大内 慶子

『アルコール依存症』

“アルコール依存症”という言葉は誰でも一度は耳にしたことがあるのではないでしょうか。そのくらい社会に浸透している言葉ですが、「意志の弱い人が酒に頼らざるを得ないから」とか「だらしがない人がなる」などと思われがちです。しかし、そうではありません。今回はアルコール依存症とその支援についてお話ししたいと思います。
 アルコール依存症とは
アルコール依存症とはひとことで言うと、飲酒のコントロールを失った(loss of control)状態のことを表します。アルコール依存症と診断される人には、次のような特徴があります。
【飲酒のコントロールが効かない】
飲み始めると適量で止めることができず、ついつい泥酔するまで飲んでしまう。
飲んではいけない時間や場所で飲んでしまう。例えば、仕事中に隠れて一杯ひっかけるなど。
飲酒のことが終始念頭にある。
飲酒から生じた健康問題を既に抱えているにもかかわらず、飲酒を続ける。 など
【酒を止めたときに離脱症状が起こる】
アルコールが切れてくると、手や体が震えてくる。
アルコールが切れてくると、イライラ、発汗、不眠などの不快な症状が出てくる。 など
アルコール依存症が進行していくと、酒が生活の中心になってきます。酒が切れると離脱症状が出てくるので、隠れ飲みをしながら、始めのうちはなんとか仕事や家事をこなせますが、やがてそれもできなくなってしまいます。家にこもって、酒を飲んでは寝て、起きてはまた飲むことを繰り返し、しまいには食べ物はおろか水や酒さえも受けつけなくなり、飲むことを止める。こういった状態を連続飲酒と言い、アルコール依存症の末期の状態です。このように大量の酒を飲み続けている状態が続くと、様々な合併症を引き起こします。肝硬変などの内臓疾患、糖尿病、高血圧など、アルコールの影響は体中に及んでいきます。ゆっくりと徐々にではありますが、慢性的に進行し、やがては死に至る恐ろしい病気です(独立行政法人国立病院機構 久里浜アルコール症センターホームページより一部引用)。
 アルコール依存症の支援
専門病院
  アルコール依存症はゆっくり慢性化し、やがては死に至る病気です。そのため、早期発見、早期治療が大切であると言われています。早く治療を受ければ、失うものも少なく、回復も容易ですので、専門病院への受診をお勧めします。
自助グループへの参加
  アルコホリックス・アノニマス(Alcoholics Anonymous;通称A.A)や日本断酒連盟の自助グループなどへ参加することもひとつの方法です。そこで、自分と同じような体験をした人や自分よりもっとひどい体験をした人たちと出会うことによって、実際にアルコール依存症から回復できるということを目の当たりにしたり、何らかの気づきを得るきっかけになったりします。
<支援の際に気を付けたいこと〜イネイブリング〜>
イネイブリングとは「問題の存続を可能ならしめること」という意味です。アルコール依存症者の周囲には、アルコールによって引き起こされる問題の後始末のために、自己犠牲的に尽くしている人、いわゆるイネイブラーの役割を負っている人がいることが多いと言われています。多くの場合、イネイブラーは家族や近しい友人などです。イネイブリングの具体的な例としては、借金や不労などの経済的問題への援助、無断欠勤や職場の事故など職業的トラブルでの謝罪や穴埋め、夫婦・家族・友人などの揉め事の仲介や介入などが挙げられます。このように周囲の献身的な努力や自己犠牲が続くと、一時的に問題が見かけ上おさまってしまうことがあります。すると、「自分の酒の問題はたいしたことがない」「酒の量以外には何も問題がないので、病院に行くまでもない」など、アルコール依存症者に特有の“病気の否認”といった心理状態になってしまいます。アルコール依存症者を治療に繋げるためには、周囲がこれまでの支えを手放す、イネイブラーの役割を降りることが大切です。そうすることで、本人は症状の苦痛を自覚し、トラブルの処理や問題解決の責任などに直面させられることになります。本人の否認が崩れ、治療への動機付けが高まっていくことが期待されるからです(田辺,2002)。
 アルコール症スクリーニングテスト
アルコール依存症スクリーニングテストとしてCAGE(ケージ)というものがあります。これは4項目の質問からなるスクリーニングテストで、質問内容を表す単語の頭文字よりCAGEと呼ばれています。4項目のうち、1項目でもあてはまればアルコール問題の可能性があり、これまでの生涯で2項目以上があてはまればスクリーニング上はアルコール依存症者とされます(独立行政法人国立病院機構久里浜アルコール症センターホームページより引用)。あくまでも、スクリーニング上の結果であって、これだけでアルコール依存症と判定するものではありません。
1. 飲酒量を減らさなければいけないと感じたことはありますか。
2. 他人があなたの飲酒を非難するので気にさわったことはありますか。
3. 自分の飲酒について悪いとか申し訳ないと感じたことはありますか。
4. 神経を落ち着かせたり、二日酔いを治すために、「迎え酒」をしたことがありますか。
 終わりに
このように、アルコール依存症は本人の意志ではどうにもなりません。アルコールから抜け出すには適切な手助けが必要となります。早期発見、早期治療をこころがけましょう。
◇   ◇   ◇
<参考文献>
金剛出版  田辺等,2002「精神保健相談のすすめ方」
創元社   小此木啓吾・深津千賀子・大野裕編,2004「精神医学ハンドブック」
<参考サイト>
独立行政法人国立病院機構 久里浜アルコール症センターホームページ
http://www.kurihama-alcoholism-center.jp/
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