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ティーペック健康ニュース

第191号 2008/10/10  
監修:救急救命東京研修所
教 授  名 倉  節

『しみ(色素沈殿)の治療』

 しみは一度できてしまうとやっかいなものです。肌のしみの多くは、紫外線によって皮膚を保護するために作られるメラニン色素が肌の中に残って沈着したものです。できてしまったしみは、諦めず正しい治療をすれば、薄く目立たなくすることができます。紫外線は3月頃から強くなり始め、5月〜8月にかけてもっとも強くなります。秋は紫外線が少なくなってきますので、治療を始めるのにはよい季節と言われています。今回は、しみの治療についてお話しましょう。
 しみとは
しみは正しくは『色素沈殿』と言います。実際に私たちが一言で「しみ」と言っているもののなかには、様々な色素病変が含まれ、それぞれ治療方法も異なります。一般的な「しみ」とは老人性色素斑を指し、医学的な「しみ」とは肝斑を指します。
 老人性色素斑と肝斑の違い
老人性色素斑は、日焼けによる皮膚の老化現象です。老化および紫外線照射により、表皮細胞のターンオーバーが正常に働かなくなるためにできると考えられています。そのため、日焼けを完全に避ければ予防はできます。若い頃から日焼けをした人ほどできやすく、早い人では10代から現れてきます。老人性色素斑は年齢とともに増加し、特に30代後半から40代以降に多く見られます。
肝斑は女性ホルモンが大きく関係していることもあるため、ホルモンジミと言われることもあります。紫外線はもちろんのこと、妊娠、更年期、婦人科の病気にかかった時、皮膚への過剰摩擦、心理的要因など、複雑な原因が考えられています。また、体調や月経周期によって色の濃淡が変化することも多くあります。肝斑は30代、40代の女性に多く見られ、50代後半で新たに発症する人はほとんど見られません。また、逆に60代からは症状が治まることも多いとも言われています。なお、男性にできることはありません。
 特徴と治療法
しみには様々な種類があります。しみに応じた治療を行わなければしみは改善せず、時にしみ治療によってしみが悪化してしまうこともあります。治療は、臨床経験の豊富な皮膚科専門医の診断を受けることをおすすめします。
1. 老人性色素斑(ろうじんせいしきそはん)
特徴
しみの境目がはっきりしていて、色合いも均一で濃く、大きめの丸い色素斑を作るのが特徴的です。頬や額、手の甲、前腕、上背を中心にできるのが一般的です。
治療法
シミができ始めたごく薄い時は、トレチノイン酸(美白剤)の外用、ケミカルピーリング、ビタミンC誘導体のイオン導入でも効果があります。しかし、くっきりと濃いシミには効果は薄く、「Qスイッチ・ルビー・レーザー」による治療法が非常に有効的です。医療レーザーは正常な皮膚組織にはダメージを与えずに、標的となる異常な色素細胞のみを選択的に破壊できる治療法のため、傷を残さずきれいにシミを消すことができます。医療レーザーはメラニン色素(異常な色素細胞)にのみ吸収され、色素の周囲、シミの部分の表皮と角質層をはがします。レーザー照射後は一時的にかさぶたができて、その後、そこに新しい皮膚が再生していくことにより、シミの色が消えるというしくみです。1回のレーザー治療でかなり薄くなりますが、個人差はあります。しみの状態により数回レーザー治療を行う場合もあります。
Qスイッチ・ルビー・レーザーの注意事項
照射部分は軽いヤケドや擦り傷のような状態になります。そのため、照射部位の皮膚はとてもデリケートになっています。いかにレーザー治療後の皮膚の炎症を早く鎮めるかが決め手となります。レーザー照射後約2週間は、痂皮が付着していようが、脱落しようが、軟膏塗布やガーゼ・絆創膏で皮膚を保護することが必要です。お化粧をされる場合には、軟膏を塗った上に肌色のテープを貼り、その上からファンデーションを塗るようにするとよいでしょう。痂皮が取れた後の肌が赤みを帯びている時は、決して引っ掻いたりこすったりしないよう注意しましょう。かさぶたが取れ、レーザー照射から2週間以上経過したら日焼け止めを必ず塗ってから外出し、日焼けは避けましょう。
2. 肝斑(かんぱん)
特徴
顔、特に頬、鼻の下、額から鼻すじ、まゆ毛の上などに左右対称に発生するのが特徴的です。色は薄い茶色(淡褐色)から濃い茶色で、形や大きさは個人差があります。
治療
体の内側から治療する方法が効果的です。ビタミンC(メラニン色素を作る作用を抑える)とトラネキサム酸(美白剤)という二つの内服薬を併せて飲むという治療法がよく効くと言われています。内服薬は有効成分が血流にのって皮膚のすみずみまで届けられ、表皮の深い所にあるメラノサイトに効果を発揮します。ただし、内服薬は即効性があるわけではなく、約2ヶ月以上飲むと8〜9割の人に効果があると言われています。さらにシステイン製剤(皮膚のターンオーバーを促進する効果)の内服薬を併用することにより、安定した効果が得られます。また、内服薬と合わせてケミカルピーリング、ビタミンC誘導体のイオン導入など、外からの治療を行うとさらに効果的です。ただし、シミの治療に行なわれているレーザー治療は肝斑の場合は適しておらず、逆にしみが濃くなってしまう場合があるので注意が必要です。
ケミカルピーリングの注意事項
ケミカルピーリングとは薬剤(グリコール酸)を使って表皮または真皮を化学的に溶かし、新しい皮膚の再生を促す治療法です。肝斑をはじめ、ニキビやニキビ後の瘢痕、乾燥肌、小ジワ、色素沈着などの治療に使われます。ケミカルピーリングの前は顔剃りや髭剃り、スクラブ洗顔はお肌に負担を与える原因となりますので、治療前は控えたほうがよいでしょう。治療後の肌は紫外線に弱くなっているので、外出の際には必ず日焼け止めクリームを使用されることをお勧めします。副作用はありませんが、治療後、肌が少し赤くほてる感じがある場合もあります。また、治療翌日から2〜3日肌がかさつくこともありますが、ケミカルピーリングの効果で一時的なものなので、心配なさることはありません。施行後約5〜7日間は乾燥しやすいため、化粧水や保湿剤などで十分に保湿を行ってください。なお、お化粧は治療直後から可能です。
 しみの治療費について
しみを消す治療は一般的には保険が利きません。いわゆる自由診療なので、治療費はクリニックにより異なります。法外な治療費を取られないように、治療費は事前に確認しておきましょう。
しみに似た、あざ(太田母斑、異所性蒙古斑、扁平母斑、単純性血管種、いちご状血管種、外傷性色素沈着症、毛細血管拡張症等)の治療は保険適応となります。
 おわりに
しみ治療は一生に一回で終わりというわけではありません。いつも肌にしみがない状態にしておきたいという方は、時々治療が必要になります。治療で消失するのはメラニン色素を含む表皮細胞であって、メラニンを作る細胞(メラノサイト)ではありません。
しみを作らないためには、毎日の紫外線対策が大きなかぎとなります。普段から紫外線を浴びないように心がけましょう。
◇   ◇   ◇
<引用参考文献>
美白戦術 しみ・くすみを消し、美しく白い肌をめざす  南江堂
これだけは知っておきたい皮膚の症状、皮膚の病気    NHK出版
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