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ティーペック健康ニュース

第173号 2007/4/12  

監修:眼病理教育研究所所長
沖坂 重邦

『コンタクトレンズによる眼障害』

 はじめに
コンタクトレンズの使用人口は、今や1500万人と言われています。コンタクトレンズはソフト・ハードに大別されますが、最近では使い捨てソフトレンズが主流になっており、老視向けの遠近両用や乱視用、ひとみ(虹彩)の部分に色がついているカラーコンタクトレンズなど、種類や用途も増えてきました。ただ、品質の向上によって使用感も非常に良くなった一方で、コンタクトレンズによる眼の障害の年間発症数は推定で約100万件という報告があります。皆さんはコンタクトレンズと正しくお付き合いできているでしょうか。今回はコンタクトレンズによる眼障害についてお話しましょう。
 定期検診では何をするの?
コンタクトレンズの定期検診が保険適応外になり、また、インターネットの普及とともにレンズを検診なしで安価で購入できるところも増えています。保険が利かないのなら、特別気になる症状があるわけではないし、検診は受けなくてもいいかな…とお考えの方もいらっしゃるでしょう。
では、定期検診ではどんなことをしているのでしょう?検診では、角膜のカーブ、屈折度、涙液量、角膜内皮細胞数、目の病気の有無などを調べます。
角膜のカーブは人それぞれ違いがあります。カーブに合わないレンズをつけていると、外れやすかったり、角膜に傷がつきやすかったりします。また、角膜はやわらかく非常に変化しやすいので、レンズをつけている状態でのフィッティングもチェックする必要があります。
屈折度は、視力を左右します。では、眼鏡の度数が分かれば調べなくてもいいのか、というと、そうではありません。コンタクトレンズは角膜に接着していますが、眼鏡と角膜との間には通常12mmの距離がありますので眼鏡とコンタクトレンズの度は同一ではありません。また、レンズを装着した状態での視力の矯正具合も個人差がありますので、毎回測定する必要があります。
涙液量は角膜をうるおしている涙の量の検査です。涙の量が少ないと目が乾く、いわゆるドライアイになりやすいのですが、コンタクトレンズをしていると、更に目は乾きやすくなります。コンタクトレンズは涙の層の上にのせるものなので、外れやすかったり、異物感が強かったり、角膜にびらんを生じたりします。
角膜内皮細胞は、角膜の一番内側にある、角膜を透明に保つ働きをする細胞です。この細胞の数が一定以上ないと正常な働きができなくなり、角膜が白く濁ってしまいます。
角膜・結膜・眼瞼などに病気があると、コンタクトレンズを使用することにより病気を悪化させてしまうため、異常がないかどうかを検査する必要があります。
このように、色々なことを検査しているのですね。では、もし定期検診を受けないとどんなことが起こりやすくなるのでしょう。
 コンタクトレンズによる眼障害とは
コンタクトレンズを装用することで起こる眼の障害のことです。代表的なものを次にあげてみましょう。
点状表層角膜症
  角膜の表面(上皮)に傷がついた状態です。角膜上皮は再生力があるので、レンズを外して時間が経てば良くなることが多いのですが、時には角膜上皮びらん、角膜潰瘍、眼内炎へと進展し重症化することもあります。
角膜潰瘍
  角膜についた傷に、細菌や真菌などが繁殖して起こります。痛みや異物感が強くなり、光に過敏になって涙の量が増え、膿による白い点ができたり、角膜全体に及ぶほどの深い潰瘍になることもあります。治療で治ることもありますが、角膜ににごった瘢痕(傷跡)が残って視力低下をきたすことがあります。また、水道水・井戸水の中に生息する原生動物のアカントアメーバに感染して起こるものもあります。アカントアメーバは角膜を溶かしながら眼球の奥まで浸潤していくので、きちんと治療をしないと失明の危険もある恐ろしい病気です。
巨大乳頭結膜炎
  上まぶたの裏側にぶつぶつができ、装用感の悪化や、目やに、かゆみといった症状が出ます。殆どはコンタクトレンズの装用を中止すると改善します。病気の本体はレンズの汚れと関連のあるアレルギー性結膜炎と言われています。
角膜血管新生
  角膜には透明度を保つため血管はありませんが、慢性の酸素不足などによって周辺から中心に向かって血管が入り込んでくることがあります。この血管が増えてくると角膜は透明ではなくなるため視力障害をきたします。初期の場合は治療により消失することもありますが、中等度以上の場合は完全に消失させるのは困難と言われています。
角膜内皮細胞障害
  角膜内皮細胞は、角膜の一番奥にあり、角膜に染み込んだ前房水を汲みだして角膜を透明に保つ働きをします。角膜内皮の細胞は、健康な人でも年齢とともに少しずつ減っていき、再生することがありません。角膜内皮細胞は前房水と共に涙からも酸素を取り込んでいますが、コンタクトレンズを装用していると、裸眼に比べ角膜表面の酸素が不足しますので、角膜内皮細胞の減少に拍車をかけることにもなります。この障害は目の痛みや視力障害などの自覚症状を伴わず進行していきます。角膜内皮細胞数の減少がある限界をこえると水疱性角膜症を起こして視力低下、失明状態となり、角膜移植の他に治療方法がなくなります。
このように怖い眼の障害にならないようにするため、もしなってしまっても酷くならないうちに対処することができるように、定期検診を受けることが必要なのですね。
 カラーコンタクトレンズの危険性について
最近では若い世代の方でおしゃれ目的でのカラーコンタクトレンズ装用が増えています。度の入っていないカラーコンタクトレンズは、医療品ではなく日用雑貨品の扱いになりますので、インターネットなどで気軽に購入される方も多いようです。最近の調査で、おしゃれ目的で装用する、度の入っていないカラーコンタクトレンズの一部の製品から、色素成分に細胞毒性をもつ物質が検出されました。
また、カラーの部分は透明なレンズの部分より酸素透過率が低いものが多く、ただでさえ角膜の酸素不足になりやすい状況に拍車をかける危険性も指摘されています。専門医の診察のないまま購入できてしまう日用雑貨品扱いのカラーコンタクトレンズは、取り扱いもごく簡単な方法で記されているものも多く、知識のない状態での取り扱いが原因の眼の障害が、特に若い世代で増えていると言われています。
また、一部のインターネットオークションで使用済みのカラーコンタクトレンズが売られていたり、友達同士で貸し借りしていた、ということもあったようです。これではアメーバや細菌の貸し借りをしているのと同じで、非常に危険なことです。おしゃれのつもりで気軽にカラーコンタクトレンズを使ったことが原因で、もし失明してしまったら…その後の一生を左右されてしまうことにもなりかねません。安易な使用をしないよう十分気をつけたいものです。
 コンタクトレンズの取り扱いについて
最後に、コンタクトレンズと正しく付き合うための注意点をおさらいしてみましょう。
@ レンズのケアは丁寧に行い、コールド消毒に水道水や井戸水は使わず、必ず専用の洗浄液を使用しましょう。
A レンズの装用時間を必ず守り、眼鏡と併用して使用しましょう。
B 自覚症状のあった場合は、装用をやめてすぐに眼科専門医を受診しましょう。
C 自覚症状がない場合でも、定期検診は必ず受けましょう。
D レンズを購入する際は、眼科専門医のいるところで、診察や検査を受けてから購入しましょう。

 おわりに
コンタクトレンズを装用されている方は、初めて購入された時に眼科の専門医から説明を受けられたことと思いますが、いつの間にか自己流のケアや装用方法になってしまっていませんか。たとえコンタクトレンズの使用に慣れても、使用上の注意事項になんら変わりはないのです。自己流の取り扱いは、知らない間に眼の障害を起こしてしまう危険性をはらんでいることを忘れないようにしたいですね。眼は一生使い続ける大事な臓器です。コンタクトレンズと正しく付き合って快適な生活を送りましょう。
◇   ◇   ◇
<参考文献>
標準眼科学 第9版    医学書院
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