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ティーペック健康ニュース

第162号 2006/5/10  

監修:甲子園大学 栄養学部教授
医学博士 福原 吉典

『メタボリックシンドローム』

 日本人の三大死因はがん、心臓病、脳卒中ですが、心臓病と脳卒中を合わせた循環器病を引き起こす原因は「動脈硬化」です。「動脈硬化」の危険因子といえばコレステロールが有名ですが、最近の研究では、肥満(特に内臓のまわりに付着した脂肪)が様々な生活習慣病を引き起こし、より「動脈硬化」になりやすいことがわかってきました。
 肥満症・高血圧・糖尿病・高脂血症などの生活習慣病は、それぞれが独立した別の病気ではなく、肥満―特に内臓に脂肪が蓄積した肥満(内臓脂肪型肥満といいます)―が原因であることがわかってきました。この様に、内臓脂肪型肥満によって、様々な病気が引き起こされやすくなった状態を『メタボリックシンドローム』といい、治療の対象として考えられるようになってきました。今回はこの『メタボリックシンドローム』についてお話ししましょう。
 メタボリックシンドロームとは
 日本内科学会など8学会の委員で構成されたメタボリックシンドローム診断基準検討委員会は、2005年4月に開催された日本内科学会総会において、日本独自の「メタボリックシンドロームの定義と診断基準」を発表しました。これは、メタボリックシンドロームを構成する因子の中でも、内臓脂肪の蓄積が重要な役割を担っていることを明確にしており、この点が、従来用いられてきた、外国などで用いられている診断基準とまったく異なるところです。
 今回のメタボリックシンドロームの診断基準では、内臓脂肪の蓄積が必須条件と位置づけられ、他の3つの項目のうち、2つ以上を満たしている場合に「メタボリックシンドローム」と診断します。
 メタボリックシンドロームかどうかチェックしてみましょう
<必須条件>
@ 肥満
  メタボリックシンドロームを引き起こす肥満は皮下脂肪ではなく内臓に脂肪がたまるタイプの肥満です。内臓脂肪型の肥満かどうかを調べるには、へその高さの腹囲を測ります。(一番細いところではありませんので注意してください)「男性85cm以上、女性90cm以上」の場合は、内臓脂肪型の肥満と考えられます。この数字は、腹部CT画像(へその高さ)で精密に内臓脂肪を測定した場合、断面積100cm2に相当します。
<選択条件>
A 高脂血症
  「中性脂肪値150mg/dl以上」または「HDL(善玉コレステロール)値40mg/dl未満」を目安とします。
B 高血圧
  一般の基準値よりも低い「収縮期血圧130mmHg以上、または拡張期血圧85mmHg以上」を目安とします。
C 糖尿病
  高血圧と同じく一般の基準値よりも低い「空腹時血糖値110mg/dl以上」が目安となります。正常と糖尿病の中間である「境界型」の人から注意が必要になります。
 すなわち、ウエスト周囲径+2つの選択条件≠満たせば「メタボリックシンドローム」と診断されます。これに該当する候補者は思いの外多く、最近の厚労省の調査では、40歳以上の男性の約50%程度の人が内臓脂肪型肥満のリスクがあると報告されています。また、日本の企業労働者12万人を対象とした調査では、軽症であっても「肥満」「高血圧」「高血糖」「高トリグリセリド(中性脂肪)血症」または「高コレステロール血症」の危険因子を2つ持つ人はまったく持たない人に比べ、心臓病の発症リスクが10倍近くに、3〜4つ併せ持つ人ではなんと31倍にもなることがわかりました。このように、たとえ異常の程度は軽くても複数の危険因子が重複しているケースでは、動脈硬化が起きやすいので注意が必要です。「メタボリックシンドローム」という概念が確立された目的は、動脈硬化による循環器疾患(心筋梗塞、狭心症、脳梗塞、閉塞性動脈硬化症など)をいかに予防するかということです。動脈硬化は、ある程度症状が進まない限り、なかなか症状として出にくい病気です。しかも、動脈硬化による循環器病は働き盛りに突然発症することが多く、生命に関わる重大な病気であり、後遺症も深刻です。メタボリックシンドロームを放置しておくと、やがては動脈硬化を引き起こします。動脈硬化にならないために、メタボリックシンドロームの段階できちんと改善しておきましょう。
 こんな人は要注意
満腹まで食べる。
間食・夜食をとることが多い。
味が濃く、脂っこい食事が多い。
緑黄色野菜が少ない。
甘い飲食物が大好き。
運動が少ない(座り仕事が多い、エレベーターを頻繁に使う、1日に1時間も歩かない)。
飲酒や喫煙が多い。
 生活習慣を見直そう
 メタボリックシンドロームは内臓脂肪型の肥満と複数の軽症の生活習慣病が重なった状態です。内臓脂肪(預金に例えれば普通預金)は皮下脂肪(定期預金)に比べて減らしやすいので、まずは生活習慣の改善をおこなって内臓脂肪を減らすことが、メタボリックシンドロームの治療の基本になります。体重を約5%減らすことをまず目標としてください。
<食事>
1日3食規則正しく取りましょう。
腹八分目でおさえましょう。よく噛んで食べると、食べ過ぎが抑えられます。
糖分・脂肪・塩分を控え、素材の味を味わいましょう。
野菜やきのこ類、海藻類の多い献立にしましょう。
夕食後はすぐに寝ないで3時間くらいは活動するようにしましょう。
<運動>
普段から意識して体を動かしましょう。
  例) テレビを見ながら、ストレッチをする。エレベーターやエスカレーターを使わずに、階段を使う。通勤している方は、自宅や会社の1つ前の駅やバス停から歩く。乗り物を控え、なるべく歩くようにする。時間を決めて、散歩をする。
<生活>
十分に休養・睡眠をとりましょう。
適度な飲酒を心掛け、週に2回は休肝日を設けましょう。日本酒は1日1合、ビールなら中ビン1本程度が適量です。
喫煙は動脈硬化を促進するため、禁煙に努めましょう。
 メタボリックシンドロームの背景には、飽食による食べ過ぎと、交通手段の発達による運動不足があります。生活習慣病は自覚がないまま動脈硬化が進んでいくという危険があります。生活習慣を見直して内臓脂肪を減らし、健康で長生きしましょう。
◇   ◇   ◇
<参考文献>
標準 循環器病学   医学書院
2006 今日の治療指針 医学書院
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