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ティーペック健康ニュース

第111号 2002/2/10  
監修:ティーペック(株)電話相談指導医
軽部 時子

嗅覚障害

私達は様々なにおいに囲まれて生活しています。食べ物のにおいを感じることで食事をおいしく感じ、嫌なにおいでガス漏れや食べ物が腐っているなどの危険を察知することができます。

この様に、においは生活をしていく上で大切なものですが、風邪などで鼻が詰まっているわけでもないのに、においをまったく感じられない、いつも変なにおいがするという場合は嗅覚障害が考えられます。以前は、命に別状がないという理由で嗅覚は聴覚や視覚に比べてあまり重視されませんでした。最近は生活の質ということがいわれるようになり、嗅覚の異常で耳鼻咽喉科を受診する人も多くなっています。
 においを感じる仕組み
鼻の孔の奥にはにおいを感じる粘膜があり、この粘膜を嗅粘膜と呼んでいます。鼻孔から入ってきたにおいの分子は嗅粘膜に付着します。 その刺激が、嗅神経を通じて大脳のにおいの中枢に送られ、においを感じます。このにおいの経路のどこかに障害があれば、においを感じることが出来なくなります。
 嗅覚障害の種類
嗅覚障害には次の4つの病型があります
@呼吸性嗅覚障害 鼻腔内気流の異常のために、においの分子が嗅粘膜表面に到達することができないことから起るもので、鼻、副鼻腔の急性及び慢性の炎症、鼻中隔奇形・鼻茸・腫瘍などが原因になります。
A末梢神経性嗅覚障害 嗅粘膜にある嗅細胞の障害によるもので、急性上気道炎、鼻・副鼻腔の慢性疾患、有害物の吸入、加齢、ウイルス感染などで起ります。
B混合性嗅覚障害 @、Aの合併した場合。
C中枢性嗅覚障害 嗅神経より中枢側で起こった障害によるもので、頭部外傷、脳腫瘍、脳卒中、開頭手術、発育障害、加齢によるものや、機能的にはヒス テリー、神経衰弱によるものなどが原因になります。
 診察と検査
嗅覚障害の原因を調べるためには、まず問診で「風邪をひいたか」「有害なガスを吸った覚えはないか」「転んで頭を打ったか」などを確認し、原因を考えます。

次に鼻鏡や内視鏡を使って鼻腔内を観察し、鼻粘膜の炎症や腫れの程度などを把握します。X線検査は副鼻腔炎や鼻腔腫瘍による骨破壊、鼻腔内の空気の通る状態などを調べるために行います。

嗅覚障害の程度は嗅覚測定用基準臭検査や静脈注射法などの検査を用いて調べます。嗅覚測定用基準臭検査は花や腐敗臭など5種類のにおいについて、7か8段階に濃度を変えた試薬を嗅ぎ分ける検査です。 静脈注射法はニンニク臭のするビタミンB1剤を静脈注射し、においが発生するまでの時間 (潜伏時間、正常は8〜9秒ですが、嗅覚が減退している人は延長)とにおいの続く時間 (持続時間、正常は1分〜2分ですが、嗅覚が減退している人は短縮)を調べ、障害の有無を判定します。

また、この検査は予後の判定にも用いられ、一般に潜伏時間が短いほど、持続時間が長いほど予後がよいと考えられています。 その他必要に応じてCTやMRIなどの画像検査を行う時もあります。
 治 療
嗅覚障害は、まず原因疾患の治療を行う事が大切です。 慢性副鼻腔炎が原因の場合は抗生物質による薬物療法や手術療法を行い、アレルギー性鼻炎が原因の場合は抗アレルギー剤による薬物療法を行います。

また、末梢神経性嗅覚障害にはステロイド剤の点鼻療法が有効です。 ステロイド剤というと副作用を心配する人が多いのですが、点鼻療法では、ごく少量を局所的に用いるだけなので、副作用の心配は殆どありません。 原因疾患の治療とともに、ステロイド点鼻療法を3〜6ヶ月ほど続けると、嗅覚障害の患者さんのうち60〜70%の人が症状の改善をみるようです。

外傷などで神経が障害された場合は回復が難しいのですが、神経の再生を促す薬や神経の働きを良くするビタミンB12剤などを服用する治療が行われます。

その他、心因性の場合は心療内科や精神科などで治療が行われます。
 嗅覚障害の予防
嗅覚障害を予防する為には風邪をひかないことが大切です。風邪は嗅粘膜に炎症を起こすことがあり、副鼻腔炎の原因にもなります。 鼻詰りや鼻汁などが長引く場合は副鼻腔炎を起こしている可能性があります。

嗅覚障害は治療の開始が早いほど症状が回復しやすいので、例えば風邪が治ったのに3〜4日たってもにおいが感じられない場合は早めに耳鼻咽喉科を受診するようにしましょう。
◇   ◇   ◇
<参考文献>
「標準耳鼻咽喉科・頭頚部外科学」 医学書院
「今日の耳鼻咽喉科・頭頚部外科治療指針」 医学書院
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