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ティーペック健康ニュース

臨時増刊号 2001/10/31  
監修:東京医科歯科大学 教授
藤田 紘一郎

狂牛病

 日本で狂牛病の牛が報告されてから1ヶ月が経とうとしています。その間、色々な情報が氾濫して各方面に影響を与えていますが、狂牛病とは一体どういう病気なのでしょうか?牛肉は食べても安全なのでしょうか?狂牛病について10月30日現在までに判っていること、発表されていることを踏まえて知識の再確認をしてみたいと思います。
 狂牛病とは、どのような病気ですか?
狂牛病(牛海綿状脳症)は1986年に英国で発見されました。狂牛病にかかった牛は脳をおかされ、歩くことも出来なくなり死亡します。狂牛病の原因はプリオンと呼ばれる特殊なたんぱく質が原因といわれています。プリオンは細菌やウイルスなどと違って有効な薬剤がなく、熱処理・紫外線照射なども効果がありません。
 プリオンは牛のどの部位に蓄積されますか?
狂牛病に感染した牛では、脳・脊髄・網膜・小腸・骨髄・脊髄神経節で確認されています。
高度感染性 脳・脊髄・目
中度感染性 回腸・リンパ節・近位結腸・脾臓・扁桃・硬膜・松果体
胎盤・脳脊髄液・下垂体・副腎
低度感染性 遠位結腸・鼻粘膜・末梢神経・骨髄・肝臓・肺・すい臓・胸腺
感染性なし 心臓・腎臓・乳腺・牛乳・卵巣・唾液・唾液腺・精のう
血清・骨格筋・睾丸・甲状腺・子宮・胎児組織・胆汁
骨・軟骨組織・結合組織・毛・皮膚
(EU医薬品審査庁による分類)
 狂牛病はヒトに感染するのでしょうか?
ヒトにも海綿状脳症という病気があり、発見をしたヒトの名前をとってクロイツフェルト・ヤコブ病(以下CJD)と呼ばれています。CJDはその原因となるプリオンによって従来型と変異型に大別されます。従来型のCJDには原因が不明で孤発性と呼ばれるもの、遺伝子の異常による家族性のもの、プリオンに汚染された牛の硬膜の移植などによって感染する医原性のものがあります。孤発性は平均年齢63歳と比較的高齢のヒトに発症し、進行も6ヶ月で死に至るまで急速に進行します。これに対し、変異型の場合は患者の平均年齢が29歳と若く、進行も13ヶ月と比較的ゆっくり進みます。1996年に英国で10例の特異型CJDが発症しましたが、研究の結果、狂牛病がヒトに感染したことがほぼ確実になりました。原因は牛の内臓を食べたことによるものと考えられ、英国で1989年に牛の内臓食用禁止令が出されました。
 変異型CJDの症状はどのようなものですか?
抑うつ行動異常性格の変化などが現れ、発病から数ヶ月で痴呆・妄想・不随意運動などが進行します。その後けいれん不随意運動が出現して、やがて無言無動状態に陥り、全身が衰弱して死に至ります。
 CJDに治療法はありますか?
残念ながら現在では有効な治療法がありません。
 現在とられている対策について教えて下さい。
10月18日から全国117ヶ所の食肉衛生検査所で食肉処理されるすべての国産牛を対象に狂牛病感染の有無を調べる検査が始まりました。これで漏れがなければ狂牛病にかかっている牛は市場に出ないことになります。

加工食品については感染の可能性が高い特定危険部位(脳・眼・脊髄・回腸遠位部位)の使用は禁止され、牛を原料に使うすべてのメーカーが原料や製法を24日までに保健所に届け出ることになりました。

厚生労働省は、牛骨などから抽出・濃縮して作るエキスやコラーゲンなどの加工食品に対しては、検査体制が整い原料の安全性が確認されるまで製造を自粛し、製造を継続する場合には牛以外の原料に切り替えるよう指導することを決めました。

輸入品については欧州連合などの発生国からの加工食品は禁止していますが、それ以外の安全とされる国(米国・豪州・アルゼンチンなど23カ国)から輸入する場合でも、特定危険部位が使われてないかどうかを確認したうえで販売するように指導する方針です。

医薬品化粧品について牛の危険部位を使っていると届け出ているものについてはメーカーが自主回収を行っていますが、かなりの混乱が生じているようです。厚生労働省は自主回収

@直ぐに回収を行う
A予防的観点から速やかに回収を行う
B可能な限り製品の切り替えを進めるという3基準を設定し高リスクのものから優先的に回収するよう指導する方針です。

農水省は狂牛病の感染源とされる飼料の肉骨粉について全面禁止を決めました。狂牛病に感染した牛が肉骨粉の原料として使われていると、食べた牛にも感染する恐れがあり、牛だけでなく豚や鶏、魚などに与えるはずの肉骨粉が誤って牛の飼料に混ざってしまう危険があるからです。
 牛肉を食べたり牛乳を飲んでも安全なのでしょうか?
厚生労働省は特定感染部位以外の場所、肉や牛乳は安全だとしています。また、実際に人が感染の危険にさらされるのは狂牛病に感染した牛が食肉になった場合だけです。検査した安全な牛や安全国といわれる場所から輸入された牛を怖がることはありません。また、感染牛を食べた人皆が病気になる訳でもありません。化粧品についても顔に塗るものについては心配ないとの見解が出されています。過剰な心配は必要ないでしょう。

以上、今までに分かっていることや発表されていることを基にまとめてみました。
◇   ◇   ◇
<参考文献>
東京都感染マニュアル/東京都新たな感染症対策委員会
標準感染症学/医学書院
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